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「ーーそれにこの件に関して、今日集まってもらった皆にすぐ動いてもらうつもりはない。
実はもう一つ、特務を元老院の方々から賜っているのだ。
ここにいる皆には、今後はそちらを中心に動いてもらうことになる」
「・・・随分、勿体つけたものだ」
グラウスが鼻を鳴らした。
「確かに前後してしまった。
だがこの特務も言うまでもなく、我々が成すべき最重要課目となる。
皆、心して聞いてもらいたい」
アーサーは再び席に腰を下ろす。
ーーそして語られる『第二の特務』。
それはクリークを除き、冷静沈着揃いの一同を一様に驚愕させる内容だった。
次の瞬間、ランディがデスクに拳を叩きつけながら立ち上がり、そして吠えた。
「ーー冗談じゃないよっ!
あたしたちはそんなことをするために組織された集団じゃないっ!」
「落ち着いてくれ、ランディ」
「理由を話しな、アーサー。
今までだって汚い仕事はあったけどねぇ、それはこの世に生きる全ての同胞のためにやったことさ。
あたしたちにだってプライドがある!
ただの駒じゃないんだよっ!」
「・・・」
ランディが見せる怒りの眼差しを一手に受け止めながら、アーサーはうつむいた。
「ーー隊長、私もランディと同意見だ。
そのような事を我々にさせるからには、納得のいく説明をしてもらおう。
でなければ到底承服できる内容ではない」
更にフラムベルグも厳しい眼差しを向ける。
グラウスやグラッセリカは黙ったままアーサーの様子を伺っているようだった。
「理由はーー昔も、そして今も同じだ。
全ては我らの同胞の命を護るため、生活を護るため、そして彼らが住むこの世界のためだ」
「具体的に話しな、アーサー。
その事がどうして世界のためになるのか、ってことをね!」
「今はーー話せぬ。
時が来れば必ず話す」
「あたしはね・・・今、聞かせろって言ってるんだよ」
遂にランディはアーサーのデスクの前まで詰め寄り、デスクを挟んで自らの顔をアーサーの目の前まで突き出し、そして眼を強く光らせる。
ーー緊迫の状況。
ランディの行為は上官であるアーサーに対して一線を越えるような態度だが、他の者はそれを止めようとはしない。
皆もアーサーの言葉を待っているのだ。
ランディの言葉に対して、アーサーが一体どう答えるのかという事に、皆の意識が集中している。