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「その二人の武器がお互いを引き合うという特性・・・。
まず本当にそんなものがあるのかという疑問が一つ。
そして仮にそれがあったとして、二人が邂逅する瞬間に合わせて我々が踏み込むーーそのタイミングを如何にして知るのか?」
フラムベルグがその疑問を口にした。
そしてそれはランディの疑問の内容とほぼ一致した。
例え最高権力者が与えた特殊任務の内容をそうと鵜呑みにはせず、全ての辻褄を合わせるまで質問を重ねる。
ランディとフラムベルグはセット・エトワールの中でも特に慎重だった。
「一つ目に関してだが、私もそうなのだろうとしか言えない部分がある。
なにぶん、これは元老院の方々がおっしゃった事だからだ」
「ふぅん・・・」
元老院が言ったことは全て真実なり。
最高権力者である者の言葉ゆえ、所謂そういう風潮が確かに存在するが、ランディは納得していない表情。
フラムベルグは表情には出さないが、恐らく気持ちはランディと一緒なのだろう。
「だがランディ、君の報告にもあったが、
少なくともアリス・ジェーン・カナリーはもう一人を追っているのだろう?」
「・・・ああ。
別れ際に確か、そんなことを言ってたよ」
「非科学的に聞こえるだろうが、我々があてもなく探すより、
引き合う武器を持ち、そして同じ血を持つ者の方が探し出すのが早いのではないか、と私も思う。
元老院の方々も恐らく深い考えあっての指示だろうと私は思っている」
アーサーの答え。
ランディとフラムベルグが納得出来たかと聞かれれば、恐らくノーに近いだろう。
だが全く納得出来ないとも言えない部分もあるらしく、二人は考え込むようにそのまま押し黙ってしまった。
「そして二つ目、タイミングについてだがーーそれは恐らく、問題はなかろう」
少し間を置いてのアーサーのその声に、ランディとフラムベルグは考えを打ち切って彼を見る。
「今日ここに来ていないもう一人のセット・エトワール。
そのタイミングを見出だすため、動いてくれているはずだ」
アーサーの言葉に、集まったセット・エトワールの面々は空席の一つを見た。
そう、辿り着けずに殉職したアークダイン、そして副隊長。
今、空いている席は二つだからその二人分かと思えばそうではない。
確かに一つは亡きアークダインのものだが、セット・エトワールの一人でもある副隊長は、いつもアーサーの隣に佇むよう立つため、二つの空席の一つは副隊長のために用意されたものではない。
今日、未だ姿を見せていない最後の一人。
『七つの星』を表す『七人目』が既に行動に移っているだろうというのだ。