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兄、グラウス・バートエッジと妹、グラッセことグラッセリカ・バートエッジで通称『バートエッジ兄妹』。
二人で、一人のセット・エトワールという扱いをされている異例のメンバーである。
その理由として、同じ顔をしていることから分かるように、この兄弟は双子である。
お互いがお互いに深く依存しており、兄妹の禁断愛を噂される、幹部としても異彩放つ存在だ。
もちろんセット・エトワールの一人として数えられる以上は、その実力は折り紙つきであるがーー。
「ーー双子の言う通り、我々が必要以上に恐れを抱くのは部下の士気にも関わる」
「ーーフラムベルグ少将」
「だがあのアークダイン殿が倒されたという事は、やはり『災厄の血』を継ぐ者がただの相手ではないと言う証拠に外ならない。
・・・これ以上、無益な犠牲を出さないためにも、今日こうして集まった我々が手を取り、そして人事を尽くさねばなるまい」
軍服の上からでも鍛え抜かれた身体を十二分に見て取れる、四十代後半から五十代前半といった貫禄のある男。
戦いで負った傷なのだろうか、右目は眼帯を付けており、顔にも夥しい傷跡が残る。
アーサーにフラムベルグと呼ばれたその男がそう語ると、バートエッジ兄妹を除く一同が頷くような姿勢を見せた。
アーサーはそんな彼を実に頼もしげに、満足そうな笑みを見せていた。
「だが隊長。
私にも今一つ腑に落ちない点がある」
「言ってくれたまえ、フラムベルグ」
「そこにいるランディが、あのカラミティ・ジェーンことマーサ・ジェーン・カナリーの相棒と言われたゼニスに張り付いていたのは、彼が要監視人物というよりも、
その者がマーサより『白銀の銃剣』を預かっていたということを突き止めたからだろう?
何故すぐに奪い取らなかったのだ?」
「ふむ・・・」
「『白銀の銃剣』及び『漆黒の銃剣』。
マーサが使っていたというこの二つの武器を手に入れることは、最重要課題だったはず。
ランディならばいつでも容易に奪い取れただろうに・・・何故それをさせずに、敢えて『災厄の血』を継ぐ者に渡させたのだ?」
フラムベルグの質問にランディも頷きながらアーサーを見た。
どうやらランディもその件については気にしていたようだ。