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かつての戦争においても指揮力、判断力、そして個々の類い稀な戦闘力を発揮し、大きな活躍を見せている。
もっともその時のセット・エトワールの面々は隊長も含めて、大半が天命を全うしたか、引退するなどして首がすげ変わっているが、現在のセット・エトワールもそれに優るとも劣らぬ人材である。
通常時においても彼らは何らかの任務に着いている事が多く、こうして面々が一堂に会するなどということは非常に希少な例だ。
すなわちこれから伝えられるだろう任務がいかに重大かを暗に教えているのである。
「こうして集まってもらったのはもちろん同窓会や懇談会を開くためではない。
早速だが元老院の方々から賜った勅令を皆に伝えたいのだがーー」
アーサーがそう切り出すと、その続きを遮るかのように一人が手を上げた。
紺色の軍服に身を包んだ、星頂人としては珍しい褐色の肌に額が出るまでに短くカットされた黒髪の女性。
切れ長の瞳は強面の男も顔負けするほどの威圧を与える。
「ーーどうした、アートネット准将」
彼女はランディ・アートネット。
ほんの一週間前までは開拓民に紛れてある要注意人物の監視を長期間に渡って行っていた。
その要注意人物が不慮の出来事で死亡したところで、言いようによってはタイミング良く、今回の召集を受けてここへ参じたのである。
アーサーに上げた手を差され、立ち上がる。
その背丈はアーサーに並ぶ長身だ。
「その前に二つほど聞きたいことがあるんだけどねぇ」
「・・・なんだ?」
ランディは仮にも隊長であるアーサーに対し、敬語は使わず彼女本来の口調で話す。
アーサーも特にそれは咎めたりはせずに応じた。
「まず一つ、副隊長殿がここに来てない理由。
二つ目はーーっ」
ランディが一瞬、言葉に詰まった。
一瞬、険しい表情さえも見せる。
「・・・ダインのおっさんが『カラミティ・ジェーン』に殺された、ってのは本当かい?」
それを聞いたアーサーは表情をしかめる。
ランディはデスクを蹴り飛ばしそうな勢いで身体を前面に出し、アーサーの返答を待つ。
やがてデスクに両肘をつき、重ねた手で口元を隠しながらアーサーはその質問に答え始めた。
「二つ目から答えよう。
・・・事実だ。
我らの同志にしてこのセット・エトワールの最古参である、ディーモンド・アークダイン少将はーー。
こちらに向かう道中に、カラミティ・ジェーンと交戦し、そして・・・殉職した」
最後の一言にアーサーはどこかが痛んだかのように目を閉じる。
ランディは衝撃を受けたように一歩後ずさった。