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「ーーご報告致します。
星頂特殊任務実行部隊、『セット・エトワール』。
一部、任務続行中の者を除き、全員が集結致しました」
腰辺りまで伸ばした、限りなく濃いダークブルーの長髪を持つ、二十代後半から三十代といったところの精悍な男性。
彼専用の白い軍服に身を包んだ長身が、頭を深々と下げながらそう告げた。
「・・・アーサー。
お前の誇るセット・エトワール・・・。
この機に及びながら一人欠け落ちたようだな?」
右端に座る元老院の一人、緑のローブと覆面を付けた男が声を響かせる。
全体像が隠れているせいで風貌や年齢は全く分からないが、低く枯れた声から推測するにかなりの高齢であろう。
「・・・既にお耳にお入りでしたか」
「あの忌まわしき『災厄』と交戦し、敗北したと聞いておる」
頭を下げたままのアーサーに、今度は左端の青いローブと覆面に身を包んだ男が、やはり老いた声を響かせた。
「我らが命を受け、集結すべき者がその道中で散るとは嘆かわしいことよ」
「お言葉ですが、彼はあの『災厄』に一人立ち向かったのです。
我々の同胞がいた開拓民の町を守るためにーー」
「貴様に言い訳など求めはせぬ。
問題は我らの命に背き、その貴重な戦力を失ったことだ」
右から二番目の黄色のローブと覆面に身を包んだ男が言い、それに対してアーサーが顔を振り上げ言葉を返そうとするも、
今度は左から二番目、白いローブの男が覆面を震わせると、アーサーは言葉を呑み込んだ。
「・・・げに疎ましきは『災厄』の血よな。
過去の戦争においては我らに恥辱を与え、そして現代に至ってなお、その血を受け継ぐ者が我らの障害となろうとは」
「だがしかし。
その血、無くして我々の計画の遂行はあり得ぬ。
この星の未来を紡ぐため、そして我ら星頂人の未来を磐石足るものにするために」
中央に座る両側の人間、金と銀色のローブと覆面に身を隠した男が続けて貫禄を感じさせる声を発する。
その間アーサーは頭を下げたまま、皮膚一つ震わせない直立不動の構えだった。
「ーーアーサー。
我らが総意を伝える。
お前の手足たるセット・エトワールを上手に操り、早急にその任を全うせよ」
「・・・御意に」
中央に座る赤いローブと覆面に身を包んだ男がそう告げると、アーサーは一言そう答えると、元老院の総意となる勅命が彼に下されたのだった。