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--とある砂漠の地。
沈みかけた太陽が、
砂に覆われた大地を朱く染め、
まもなく熱砂の地も一日の終わりを告げようとしていた。
植物も全く育たず、
生き物もあえて住もうともしない過酷な砂漠の地、
朱色の光を差す夕日とは真逆の方向に、
三つの影が伸びている。
影を生み出す要因は、
三角形を作り出す頂点にそれぞれ佇む三人。
その一辺の長さはおおよそ2メートルから3メートル。
それがすなわち互いの距離である。
その三人の内二人は大きさ、色合い、年月の劣化こそあれ、
同じような服装に身を包んでいた。
上半身は長袖のシャツの上に厚手の皮ジャンパーを着込み、
両手には布生地の厚い手袋。
下は擦り切れたズボンに、砂漠の砂地に備えた底の厚いすね全体を隠すようなブーツを履いている。
そして最大の特徴は、プリムが上に持ち上がるようにした顔全体を隠すような大きな帽子。
そんなただでさえ見えにくい顔をさらに三角巾で鼻から下を覆い、
もはやその表情を伺うことはできない。
顔を隠す必要があるのかは分からないが、一つの理由として、
定期的にくる砂混じりの風に対する顔への防衛手段なのであろう。
「ここらでいいだろ」
その二人の内の一人が三角巾の布越しに野太い年季を感じさせる男の声を響かせた。
背は三者の中で最も低いが、
代わりに四肢は他に比べて一回り太く、
重量感を感じさせる体つきである。
「そうだな。
あまり町から離れても仕方ねぇしな」
もう一人が三角巾を震わす。
先の男と比べ、
身体つきはかなり細いがその分背は三者の中で最も高い。
また若い男の声質から察するに、
この二人の男の間では、少なくとも十歳以上の年の差があるのだろう。
「んじゃ早速だが、『ブツ』をお互いにお披露目と行こうじゃねえか」
短身の男・デックが続けてそう切り出すと、
腰のベルトに括り付けていた紐で縛った袋を三つ手に取り、
三者の成すトライアングルの中央付近の砂場目掛けて、
投げ捨てるかのように放った。
それが砂場に付くと、
布袋の中でまるでいくつかの小さな金属がぶつかり合うような音が鳴った。
するとそれに頷いた長身の男・バイスが、
同じく腰に括り付けていた布袋を数も等しく三つ、
既に地面に放られた布袋の上に投げ置いた。
やはりその時、同じ金属音が耳に響く。