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東京竜会議 その0

艦これで大サトーな呟きをしたら、ふと文神が降りてきたので投下。

 東京竜会議。

 本来ならば異世界からやってきた竜達の内輪の集まり。

 それが20世紀の国際秩序の中核となる『東京体制』と呼ばれるようになったかは、彼女たちとのファースト・コンタクトが不幸にも会話で始まらなかったことにある。

 欧州大戦真っ只中、太平洋でも戦雲漂っていたあの時に現れた二匹の竜が太平洋の両端の国家に現れた事で、その時歴史は歪んだ。

 運良く迎撃に成功した大日本帝国は竜を庇護下に入れて、大陸で疲弊した国を立て直そうとし、迎撃に失敗したアメリカ合衆国は竜によってハワイを追い出され、サンフランシスコの金門橋を焼かれるという屈辱を味わったからだ。

 竜達は欧州大戦にも影響を与えていた。

 アイスランドに巣くった竜は大寒波を引き起こして独ソ戦そのものを冬季休戦状態にし、北大西洋航路そのものが封鎖された事でUボートによる被害が頻発した英国は悲鳴を上げた。

 最も理性的に振る舞ったシチリアの竜は地中海を我が物顔に飛びながら、欧州列強の外交官と工作員をけむに巻き続けたが、竜の力を知った欧州列強は大戦中という事もあって彼女の軍事利用を目論見、その駆け引きとして地中海とアフリカ戦線の自然休戦状態を創りだしたのである。

 強大な竜達による国際秩序への間接的介入によって、泣きを見たのがソ連と大陸の中華民国だった。

 ソ連は独ソ戦によって首都モスクワが陥落。

 ゴーリキー市に政府は移転したが、書記長が交代する政変が勃発。

 モスクワ奪還作戦の失敗の後、クリミア半島を巡る戦いで反撃をして一矢を報いたが、その混乱はまだ収まっていない。

 竜によって最も甚大な被害を受けたのは中華民国だった。

 大日本帝国が竜を使っての大陸戦線の足抜けを画策。

 その強大な力によって作られた三峡ダムをはじめとした様々な力を見て、その足抜けを黙認するしか無かったのである。

 その後、中国共産党との内戦に突入するが、腐敗しきった国民党政権は既に民衆から見捨てられ、満州国を除く河北を失落。

 軍事顧問団を派遣して支えようとする米国・英国の力を持ってしても、淮河を戦線に押し留めるが精一杯になっていた。


 一方、この状況に真っ先に動いたのが英国だった。

 米国がハワイの竜にかかりきりになる事と、日本が竜によって戦争をするタイミングを逃した事を察した彼らはアジアに展開している戦力を引き抜いてクレタ島へ侵攻。

 駐留していた独軍を撃退して占領に持ち込むと、そこから独軍の血液たるルーマニアの油田を戦略爆撃しだしたのである。

 更に、日本の暴発回避とあわよくば連合国側への寝返りを企む英国は、マリアナに遊弋している竜を材料に日本と米国相手に外交を展開。

 太平洋における竜の取り決めである『太平洋宣言』は、この東京竜会議に繋がる源流となった。


 太平洋宣言

 日本・米国・英連邦諸国(英国・オーストラリア・ニュージーランド)・竜による六者協議


1. 日本委任統治領南洋群島にマリアナの竜を君主とする独立国家を設立し、その領海内を相互不可侵とする。

2. その竜国家(仮称)について五カ国はその独立を承認し主権を尊重する。

3. マリアナ以外の竜について各国がどういう扱いをしても異議を唱えない。 

4. ただし、宣言参加国が他の竜と結んだ協定・条約については各国とも尊重する。 

5. 太平洋上で起こる竜に関するトラブルを出来うる限りこの参加国の協議によって解決する努力をする。


 なお、この宣言をもって日米間外交ルートが公式に復活しハル・ノートの事実上の有名無実化したと、後に語られるようになる。



 その一方、竜による経済的側面も世界中に知られるようになっていった。

 その最たるものが、竜達が元いた世界と往来できる異次元召喚門の存在である。

 東京竜会議当時、この門の存在は日本にある事しか知られておらず、既に日本は異世界に竜州という名前の植民地を建設しだしていたのである。

 この報告に欧米列強は揺れた。

 戦争をやっている最中に、日本一国だけが異世界という新たなるフロンティアを独り占めにしようとしている。

 その声はフロンティアの民でありちょうど中間選挙が始まろうとしている米国で政治話題となり、欧州で戦争をしている英独ソとて無視できるものではなかったのである。


 欧州大戦と国共内戦という大戦争のさなか、ハワイの竜相手にその有り余る生産力を働かせ始めたが中間選挙を前に何だかの成果が欲しい米国。

 ジリ貧の中、なんとか状況を逆転しようと藻掻く英国。

 フロンティア独り占めを夢想し、国際状況を綺麗に忘れていた日本。

 だからこそ、その一言で世界というちゃぶ台がひっくり返る。



「この星に来ている全ての竜をこの地に呼び寄せて、ハワイの竜について竜達で話し合いをする。

 また、その会場提供と外交関連の色々は大日本帝国が補佐してくれるという。

 今回、米国・英国・独逸の大使に来ていただいたのはその開催を通告するように大日本帝国から助言を受けたからじゃ。

 詳細については大日本帝国に聞いておいて欲しい。

 以上じゃ」



 この言葉を日本の保護竜の口から発せられた時、東京駐在の米国・英国・独逸大使は石化の呪文を食らったかのように大使は動かなかったという。

 とりあえず、『何言ってんだ?この馬鹿竜??』という言葉が頭を回っているのだが、有能な外交官である三人は直感的に分かる範囲でやばいと否応にも悟らざるを得ない。

 ハワイ問題が解決するという事は、米国が英国支援を本格化させるという事だ。

 シチリアの竜が居なくなるという事は、地中海に展開している英国海軍戦力が大西洋に戻る事と、アフリカやイタリアが危険に晒されるという事だ。

 そして、日本がここまで対英支援に踏み込んだという事は、枢軸側参戦はしないと宣言しているに等しい。

 なお、当の日本と馬鹿竜はまったくそんな事を考えていなかった事が、後の機密解除文書にて判明している。



「会議が踊るのは当たり前だ。

 問題は、いつまで誰と踊っているかだ」


--当時の大日本帝国竜担当大使の嘆きより--

なお、続きは独逸占領下のパナマに日本軍が侵攻したら書く予定。

つまり、絶対に期待してはいけない。

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