間奏曲
にぶく光る鉄の扉。ゴシック装飾の樫の扉。突き抜けるような青さで塗られた扉。
扉。
扉。
扉だけが無数に並ぶ場所に彼女は佇んでいた。淡い金髪が空中に溶けている。フリルのワンピースにヘッドドレス、丸いパンプスはすべて深紅で揃えられている。しかし愛らしい見た目に反するように、その碧い眼差しは鋭く扉を睨みつけていた。
この扉のどれかが「本物」だ。それはわかっている。だがどれが「本物」なのか。もううんざりするほど扉を開けてきたのだ。星の数ほどの扉を。
「本物ってなに?定義を示して」
ひとり呟くがこたえはない。こだますら返ってこない。もとより彼女と話せる存在などいないのだ。
「次はおもしろい世界だといいのだけれど」
そう言い残すと、彼女は冷たいノブをガチャリと回した。