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短編

約束

作者: 波止 晴信

 ずっと、一緒だよね……

 これまでも、これからも、いつまでも

 死んでも、一緒だよね……

 だから……、お願い

 私を殺して

 



 地図から消された小さな小さな村。 山奥にひっそりと存在する村。 災いが漂う村。

 この村には古くから村を守るための儀式が行われていた。

 人の血と命を使い名前すら言われることを禁じられた儀式。 この儀式をもって村は災いから守られていた。

 そして今宵、白い月はその身を血に染めて空に浮かぶ。

 

「儀式を執り行う。 二人とも牢から」


 宮司は、本堂から離れた蔵に作られた贄のための牢に軟禁されている双子の巫女の顔を見た。 二人は手を繋ぎ、死んだように座っていた。

 牢の鍵をあけると、ゆったりとした足取りで牢を出て、宮司の後に続く。 外では紙で顔を隠した神職や巫女が蔵の前で松明を持ち、村人全員で儀式が行われる本堂の地下までの道のりを作っていた。

 彼らは時間をかけてその道を進み、本堂の地下に造られた祭儀に足を運び、神職や巫女は壁の松明に火をくべて明かりを灯していく。

 本堂の地下の壁や床は岩肌のままでただ掘られただけの空間であり、真ん中に一つ木製の棺があった。

 宮司は袖から二丁のナイフを取り出し、双子の巫女に授けた。 巫女は刃を袖で隠すよう持ち、棺の中で向かい合い座った。


「今宵、穢れの血に満ちた月を二つの巫女の血によって祓わん」 


 宮司の合図で、双子の巫女は互いに刃を相手の胸の中心に向け——————

 刺した。

 互いに血を浴び、苦痛に満ちた顔で崩れた。 二人の血が混ざり合い棺に沁みこんでいく。

 

「約束……だよ。 ずっと……一緒。 いつまでも」


 宮司によって棺の蓋を閉める前に、巫女の片方が妹か姉か分からない相手にそっと呟いた。

 棺が閉められるとすぐさま火がつけられ、巫女の血が赤黒い煙となりモウモウとたちこめる。 この煙は穢れを知らない無垢な少女の血のなれの果て。 赤い月の穢れを塗りつぶすための血の煙。

 命と血を使った儀式。




 一晩中、月に向かって立ち込めた煙は日が昇るとパタリと姿を消し、代わり巫女の亡骸の下で赤い花が寄りそうに咲いていた。

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