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俺の恋は5年振り  作者: ナタデココ入りゼリー
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6



千春が泣いてる所なんて見たことがなかった。

ちっちゃいくせにカッコつけで、体育の授業中に起きた不慮の事故で、骨折した時も泣かなかった。


だから、ダサいとか、カッコ悪いとか、そういうのの前に、ただひたすらにビックリした。

驚きのあまり、イラついていた事とか、さっきまでカッコ悪い所見せてた事とか、今授業をサボっている事とか、どうでも良くなった。


「なんで、泣いてんの?」


それは、本当に素朴な疑問で。

責めるつもりとか、嘲るつもりとか、無くて。


…心配だし、不安だから、俺は千春の顔を見るため、回り込もうとした……


…んだけど、千春は、


「ごめん。見ないで。」


って言って、またクルリと向きを変えてしまった。



「なんで?ねぇ、なんで?」


俺はしつこく聞く。


だってさ、話してくれないなんてオカシイじゃん。

たぶん、俺と千春は友達だから、ちゃんと話してくれたっていいじゃん。


……俺は、千春に何も話してないけど。


そう気がついて、俺は黙った。

俺が話してないのに、千春が話してくれるわけが無かったから。


自分の事信用してくれてない人の事なんて、信用出来なくてアタリマエ。



急に黙った俺を不審に思ったのか、千春が、


「…藍琉?」


と、呼んできた。



「…………ナニ…?」


少し遅れて、返事する。


「…どうしたの?」


こっちに背を向けて、手で顔を覆ったまま、千春は聞いてくる。


今、泣いてるのは千春であって俺じゃない。

自分が心配されるべきなのに、なんで俺に“どうしたの?”なんて聞くんだろ。



「千春こそ。…どうしたの?」


俺は千春の制服の裾を、ギュッと右手で握った。

…違う。正しくは、気がついたら握っていた。


「…言わなきゃ、駄目?」


また、鼻をズズッと啜りながら千春はそう言った。



「…言わなくていい。」


俺には、千春に話して欲しい、なんて思う権利はない。



「…ゔ。…ゃ、やっぱ、聞いて欲しぃ、です…。」


「…ぇ?」


「聞いで、ぐだざい!」


千春は、酷い鼻声で無駄に濁点をつけながら叫んだ。


「…ぇ、うん。」


ビックリして、そう言う事しか出来なかった。



「でもさぁ、その前に藍琉に、聞きたい事が、あるんだけど。」


千春は、そう言ってきた。


千春が俺に聞きたい事。

今、この場で聞かれそうな事なんて…何だろう。


「…わかった。その変わり、俺も千春に言いたい事あるんだけど、いい?」


「えっ。ぅ、うん。」


何を予想してるのか知らないけど、千春の肩は怯えるようにビクリと跳ねた。

きっと、俺が言おうとしている事とは、全く違う事を想像したんだろう。

だって俺が言いたいのは、そんな怯えるような事じゃなくて、純粋にただ…


「こっち向いて。」


欲しいだけ。




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