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俺の恋は5年振り  作者: ナタデココ入りゼリー
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困惑している様子の千春。

まぁ、当たり前の反応だろう。


普段の俺は自分から抱きついたりしない。

しかも、本来は他人に自分の体を触られるのが嫌いだ。


でも、今は…。


「…離れないで欲しい…んだけど。」


モゴモゴしながら、小さい声でそう言った。


「え。…ぅわ、わ、わっ。まさか、このタイミングでデレ?!…〜〜っ、ヤッバ。」


なんか悶えながら撃沈して行った千春の腕を引っ張り、強引に立つように促す。


「……立って。」


「待って。今、ちょっと勃っちゃいそうだから…。」


「バカじゃないの。…早く。」


アホみたいな事言ってる千春を無理矢理立たせる。…断じて、勃たせてはいない。


てか、コイツ冗談でそう言う事言ってんのか、本気で男もいけるのか、掴み所のない性格の所為でよくわからない。


「はいはい。んじゃ、手ぇつなごうか?」


そう言って、千春の左手は、俺の右手を握った。


「は?なんで?」


なんで高校生にもなった、むさい男達が手をつながなきゃなんないんだ。

…まぁ、千春はむさく無いけど。


「だって、怖いんでしょ?」


「は?!ち、違う!」


「えー、でも俺が離れるの嫌なんでしょ?」


きっと千春は今、いつものようにニヤニヤと笑ってる。

見えなくたってわかる。

…俺の事、バカにしてるんだ。


「……別に嫌じゃない。」


カッコ悪いのが嫌で。同い年なのに年下扱いされるのが嫌で。

…そして、俺は既に捻くれてて。


そう。なんて事ない。

嫌いな暗闇の中に1人取り残されようとも。


して欲しくない事をされた時に蘇る過去。途端に苦しくなる胸。

あの全てを喪失したようなポッカリとした不安。

…それに比べたら、1人なんて。



「藍琉?…ねぇ!藍琉!」


何故か何度も俺の名前を呼びながら、俺の右手を揺する千春。


「……何?」


「ぁ、大丈夫?」


「何が?」


“大丈夫?”

そう聞く彼は、もうあの笑い方をしてないのかな?


「んー、なんていうか。ごめん。」


「意味わかんない。」


「わかってる癖に。そういう所、藍琉って凄く嘘つきだよね。」


千春は、俺の手を引きながら歩き出す。

そこで、まだ手をつないでいる事に気がつき、手を離そうと試みるが千春の力に敵わなかった。


「嘘つき?俺、正直だけど。」


「それも嘘でしょ。」


まるで全部知ってるかのように話す。

…凄くイライラする。


何もわかってない癖に、何も知らない癖に、そうやって皆知ったかぶる。

それが俺は大キライ。



「あーあ、なんでこうなるのかなぁ…。」


どこか辛そうに千春は、そう呟いた。

…俺は何も発さない。


だって、今喋ったらきっと本性が出てしまう。

無理に柔らかい口調で喋っても、内容はきっと皮肉、嫌味、自嘲になってしまうだろう。


無言のまま、手をつないだまま、少し歩く。

そして、俺の手を引いていた千春の足が止まった、と思ったらパチッという音がして、視聴覚室の電気が一斉に点いた。


あまりの眩しさに俺は硬く目を瞑り、更に両手で目を覆った。

…その際、俺はつないでいた千春の手を振り払ったが、その時の千春の左手には少しも力が入っていなかった。




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