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3=通学路&騒動。その2

 田中 暁。あかつきの「暁」で「さとる」とは、読みが普通な分なかなか面白い。親のセンスが閃光の如く光っている。

「て、そうじゃない……ほ、ほら!人が見ていますからねぇ……?」

 繭美は二人っきりだとベッタリハァハァしてくるが、第三者がいるとまず、危ない事はしてこない。流石に恥ずかしい事は見られたくないだろう。

 それでも腕を組んだり抱きついたり、はたから見ると恥ずかしいスキンシップはするが、二人っきりの時よりは比較的マシ。

「……ほら、家に帰ったら……ね?」

「……」

 そこまで言うと、繭美は渋々と手を離した。手首がズキズキ……いや、ジクジクとして痛い。少し腫れているような……

「あー……ワッツアップ?ミスター梶尾?」

「あ、感謝する。もういいよ」

「オイ!?説明の一つもねぇのか!?ワッツイズハプニング!?」

 田中に言うと学校でネタにされそうだ。口軽そうだし、お調子者だし、女の子に目が無いし、英語の発音下手だし。

「……チッ」

 田中に邪魔された恨みを込めての舌打ちをする繭美。結構この娘、根に持つタイプでもあるから。

 嫌な予感を感じつつ、外されたボタンを止め、制服をキチッと整える。

「ひぃ!?ど、どうしたの梶尾のリトルシスター?」

「……いえ?別に?田中さんが来たせいでおにぃとあんな事やこんな事しようとしたのを邪魔されたとかそんなんじゃウラアァァァ!!」

 嫌な予感は的中した。

 不意打ち同然の右ストレート。真っ直ぐ放たれた渾身の一撃は、田中の肋骨に直撃。この間、三秒。

「ウゲッポォ!?」

 奇声をあげ、崩れ落ちる田中。クリティカルヒットのようだ。と言うか不意打ちが好きなのかな繭美。

 繭美は平均的な女性よりも丈夫。そりゃあ、縄でぎゅうっと縛ったり、僕の追っかけをしていれば自然と体も鍛えられるでしょう。あと、空手部所属。

「バッ……ガハァッ……!ワ、ワッツ?ワッツ!?」

「悔い改めなさい」

「ワッツ!?だからなんで!?」

 あの一撃食らってまだ英語が抜けないのは、流石はプロといった所か?


 ここで彼、「田中 暁」についてもう少し説明しよう。何だか少し哀れみを感じてしまう。

 年齢は同じく十七。サングラスとざんばら頭に近い髪型が特徴的。僕とは違い、ボタンは第二まで開けており、制服も着崩している辺り真面目な印象は見受けられないだろう。

 コイツとは中学からの仲で、付き合いも長い。良く言えば親友。悪く言えば腐れ縁。

 英語についてだが、「アメリカ行けば大抵成功する」って話をどっかの誰かから聞いたのが原因で、ちょくちょく英語を入れてくるようになったと言うしょうもない物だ。

 ただ、英語の点数は上がっていない。


 まぁ、そんな奴だ。

「ヘ、ヘイ、ミスター梶尾?シスターと喧嘩でもしたのか?」

「あー……その、何だ。とりあえずお前は人助けをした。誇れ」

「アイムオナー!……な訳あるか!!」

 とりあえずこれで良し、かな?あぁ、でも繭美が目に見えて不機嫌なんだが……こりゃ家に帰ったら寝かしてくんないかなぁ……覚悟しとこ。


「ハァ……ミス梶尾のパンチはグレートに入ったぜ……未だにペインだ」

 拳をぶつけられた肋骨をさすりながら立ち上がる田中。サングラスの下よりキラリと涙が見える。比較的マジに痛かったんだな。

「全く……人の邪魔はいけないよ?田中さん」

「なぁ?人助けしたとかオブスタクルしたとか言われてんだけど?実の所何で殴られたの俺?」

 少し混乱状態に陥った田中をよそに、繭美はズイッと再び僕に近寄って来た。

「繭美さん?」

「ま、いーや!おにぃー!」

 もう一度腕に抱きついて来る繭美。手首が痛んだが、繭美を暴走させまいと必死にこらえる。 

 しかし妹が抱きついているのを田中がガン見している。恥ずかしいんだけどなぁ……


「……エクスキューズミー?もしかして俺はお二人さんの惚気の犠牲になった訳じゃねぇよなぁ?」

「そ、そんな事無い!田中、良くやった!」

「……何かモヤモヤするなぁ……」

 腑に落ちないと言った顔をする田中を置いておき、繭美に腕を引かれながら通学路を再び進行する。ハッと気付いた田中がバタバタと僕達に駆け寄って来た。

「ストップストップ!一声かけろや!遅刻すんだろうが!」

 まさかコイツが遅刻を気にしていたとは意外だった。そういえば朝礼時は必ず会う。病欠も未だにゼロ。僕と同じだ。

「すまん。今度カラオケ行こう」

「リアリィ!?いやー実は、俺の好きなあのグループの新曲、カラオケ出たんだよねぇ!」

 コイツは単純だから少し話題を振ればさっきの事忘れて乗っかかるんだよね。扱い易い。あぁ、この言い方は物みたいだな。

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