外へ。
ユーリ(五才)視点
毎日毎日退屈。
執事のみんなと鬼ごっこや隠れんぼをするのはもう飽きてしまった。
「退屈で死にそうだよ~」
いつも一緒にいてくれる執事のメリーに愚痴る。
(何か良い案を出してくれるかも!!)
「そうですね、図書室にでも行かれてはいかがでしょう?ユーリ様の好きそうな本が沢山あると思いますよ。」
(図書室か・・・。
あまり行ったこと無いな・・・。)
「うん!!じゃあ図書室に行く!!」
「ではご案内致しますね。」
メリーについて歩くこと10分。
頑丈そうな分厚い大きな扉が見えてきた。
(大きい扉だな~)
扉を開くとそこには辺り一面に本がぎっしりと整頓されていた。
(すごい数・・・。)
あたりを見回しているとメリーが言いづらそうにこちらに寄って来た。
「どうしたの?」
あまりにも言いづらそうだったのでこちらから話しかけてみた。
「その・・・実は、わたくし今から晩御飯の買い出しに出なくてはいけなくて、ここを少し離れなくてはならないのです。しかしそしたらユーリ様が一人になってしまうのでどうしようかと思いまして・・・。」
(にゃーんだそーんなことか)
「大丈夫!!あたしメリーが戻ってくるまでここで待ってるから!」
「し、しかし・・・。」
メリーはまだ悩んでいるようだったが他の執事はかたすぎて苦手だし、こんなにも沢山の本を見せられたら読みたいに決まっている。
「大丈夫だって!!だから早く買い出し行っておいで!!」
「ユーリ様がそう言うなら・・・。」
渋々といった感じでメリーは図書室を後にした。
「さーて、なにをよっもうかなー!」
ユーリはまず最初に物語の本を数冊取り出した。なるべく挿絵が多そうなものを・・・。
シンデレラ、三匹のこぶた、白雪姫に眠れる森の美女・・・。
「うわ、この挿絵素敵だな///」
最後に残ったのは
人魚姫
だった。
それは美しく悲しい愛の物語。
大好きだった王子様。
でも何も伝わらない。
声が届かない。
辛かった、悲しかった。
それでも傍に居たかった。
けれど、時間がなくなってしまった。
自分の命より王子様の命の方が大切だから、
自ら死ぬことを選んだ人魚姫。
泡になってしまった悲しいお姫様。
ユーリは人魚姫をとても気に入った。
「後でみんなにも教えてあげよ!!」
そしてユーリはまた本を選び始めた。
次に読んだのは自分の父が納めているこの国、そして自分がまだ目にしたことのない外のことに関しての本だった。
そこには活気溢れる街並み、楽しそうなお祭りの写真が載っていた。
「ほ~、素晴らしい・・・。見てみたい・・・。行きたい・・・。」
衝撃的だった。
(なんと楽しそうな街なんだ。
出店に行きたい。
買い物とやらをしてみたい。
外へ・・・行きたい!!!!!)
ユーリはその夜父と母にダメ元で頼み込んだ。
「お願いします。父上母上。どうか外へ行かして下さい。変装もします。絶対にばれない様にします。一日だけで良いのです。どうか、どうか・・・。」
ユーリは一生懸命頼んだが父と母は許可を出してくれなかった。
ぼすっ。
自室のベットへ倒れこむ。
(なんで?なんで、外へ出させてくれないの・・・)
涙で顔がぐちょぐちょだ。
「う・・・っふ・・・っつ」
メリーはそんなユーリを見ていてとても辛かった。
(自分のせいだ。可哀想なことをしてしまった。自分が傍で見ていたらこんなことになるのを防げたかもしれないのに。)
メリーは執事以前にユーリとは姉妹のような関係だ。
故にこんなにも傷ついているユーリを見るのはとても辛かった。
「ユーリ様、私に良い考えがあります。」
メリーの考えとはこうだ。
メリーには姉弟が一人いる。
ユーリよりも3つ年上の8歳の弟が・・・。
その子と一緒になら外へ行かしてあげる、ということだ。
なんでもその子はとても大人びていてその子となら信用して外へ出してあげれるのだと・・・。
しかし条件があって絶対に4時には帰ること、絶対に弟から離れるな、だ。
外出中はかくれんぼをして遊んでいるということにするらしい。
「わかりましたか?絶対に約束守れます??」
「ありがとう、メリー。絶対に守るわ。」
「わかりました。では明日10時に裏口からお行き下さい。弟を外で待たしておきますから。」
「本当にありがとう、メリー。感謝してもしきれない。」
「いえ、それでは明日疲れるでしょうし、もうお休みになって下さい。」
「うん、お休み、メリー。」
「はい、お休みなさい、ユーリ様。」