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神様のバンド

 ここまでのサブタイトルを見てみると、「天使」、「女神」、「神様」……。何の話だか分からなくなってきますね(笑)。

 ちなみに、神田と同じく私もアイスキャンディーが好きです。

「今のところは順調みたいだね。」

 僕と神田は、おそらく日本で一番有名な遊園地にいた。休みだったからか、広い園内は人で溢れかえっていた。兄貴は、ここに来るためのお金をいつ貯めていたのだろうか?そして、今回の僕らの遠征費とこの間の5人分の食事代は自腹なのだろうか?

「さあね。女神の鑑賞料でチャラにされるかもね。」

 神田に尋ねると、神田はポップコーンの箱を首からぶら下げ、せわしなくポップコーンを口に運びながらそう答えた。

 この時期、この遊園地には、神田が好物だと言っていたアイスキャンディーが売ってある。なぜ、神田はアイスキャンディーを食べないのか。そう思ってみたりする。

「だったらせめて、自分の昼食代は払ってくれ、神田。」

 そう言うと、神田は首にかけているヘッドホンを耳につけた。僕は、それを外した。

「前から思っていたけど、このヘッドホンから―」

 音楽は聞こえてくるのか?そう言いかけたとき、聞きなれた音楽が聞こえてきた。僕が、小学生の頃から何度も聞いていた音楽。

「当たり前だ。失礼なこと言わないでくれ。まるで僕が、君の話を聞かないためにヘッドホンをしているみたいな言い方じゃないか。」

 いや、実際はそうなのだろう。しかし、そんなことはもはやどうでもよくなった。

「これはまさか―。」

「そう、神様のバンド。」

 本当にファンだったのか。一気に神田との距離が縮んだ気がする。

「ちょっと古いな。」

「悪かったな。」

 いや、悪くはない。むしろ、懐かしさが込み上げてくる分、より一層よい。僕は目を閉じる。すると、音楽が一瞬、大きくなったと思った途端、急にボリュームダウンした。

 それと同時に、僕の瞼の裏にある光景が映った。そこは、白い病室だった。僕はヘッドホンを耳にかけ、窓の外を見ている。太陽の光が見えない、夜のような昼だった。しばらく眺めていると、黒い羽が一枚、上から静かに空気の抵抗を受けながらゆっくり落ちてきた。

「あれ?統君どこ行った?」

 僕は我に返り、神田が指さすほうに視線を向けた。さっきまで座っていた兄貴とアイちゃんはおらず、かわりに若い夫婦と小さな子供二人が座っていた。

「まずい、見失ったか。」

 一方、神田は冷静だった。というより無関心な様子だった。両腕を上にあげ、大きく伸びをする。

「じゃあ、帰る?」

 神田は空いている机に歩み寄り座った。僕もつられて同じ机に座る。何を言い出す。兄貴たちがアトラクションから出てくるのを待っていただけで、まだ何もしていないぞ。

「もう充分楽しんだし、僕たち居なくても同じだし、見失ったし。」

 確かにそうだ。サポートすると言ったって別段何をするわけでもなく、ただ後をつけているだけだ。というより、デートのサポートって、何をするものなんだ?

 しかし、このまま帰るのは惜しい。ここは、遊園地だ。一日フリーパスも買ってしまった。

「じゃあ、せめて―」

「せめて、もう少し遊んで行くのか?」

 不意に、後ろから無愛想な声が聞こえた。誰だよ。そう思い、後ろを振り返る。そこに立っていたのは兄貴とアイちゃんだった。

「久しぶりだね、一君。」

 女神はいつもの微笑を見せた。それと対照的に兄貴は今にも噴火しそうだった。あれ?なんで?

「そこは俺たちの席だ。」

 嘘だ。だってそうだろ、と神田に目で合図を送ろうとしたが、神田はヘッドホンをして、目を閉じていた。過失か?それとも、騙したのか?


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