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「じゃあ、今日は学校内を案内してからこれからの日程の説明、その後、寮に入るやつは残るように」
はい、私の入る寮は、経済的な問題を抱えている子や、親元を離れている子のための寮があって、希望すれば入ることができるんですよ。
私も、さすがに学園に通いながら今の宿にお世話になり続けるのは難しいですし、部屋を借りるにも家賃がこれまた学園通いながらだと難しいんです。王都ですしね。まぁ、下を見れば安いとことはいっぱいありますが、危険ですから。いや、ほんとに戦闘能力とか皆無。ギルドは、配達とか繁盛期の居酒屋の短期のバイトとかそのぐらいですよ。
もともと、母の席に座るだけですからチートとかそんな特典、文字と言葉の補正がついていただけ儲けもんです。まぁ、チート欲しかったですけど。いや、異世界トリップの主人公のチートって見てる分には飽きるんですが、自分がなるとしたらやっぱチート欲しいですよ。あぁ、今からでもいいのでなんかないですかね。精霊と契約できるとか……
「――それで、ええと校舎自体は一棟、四階まであって、一階に四部屋ぐらい教室があるって感じか。で、実習のための工房が1つ、貸し出し用と自習用のが1つ。実習のは第一工房っていって、貸し出し兼自習用のが第二工房だな」
――着々と見学は進んでいます。私たちは、先生の後ろを各々が自由に歩いています。逆に歩きずらいなー。自由って難しいネー。
……まあ、そんなのは現実逃避ってやつでさっきから奴からの視線が痛いだけなんですよね。そう、カルヴァンは時折私に視線をぶつける。数秒見ては視線を外す。あぁ、落ち着かない。でも、そこは根性。反応した方が負けですからね。
「それで……。うん、まあ、このくらいでいいか。じゃあ、最初の教室に戻るぞー」
よかった、とりあえずこの視線から解放されるんだ。席は私の方が後ろだからなっ。ふははは(お疲れ気味)
カルヴァンがフミをチラチラとみていることはこの場にいる殆どの人が気付いていたが、あえて声をかける必要性を感じるものはなく、また、好奇心のまま突っ走るような考えなしもいなかった。そんな中ウランカは、話しかければいいのにと、やきもきしながら今回の新入生たちを見守った。
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「それで明日から最低でも三か月、それ以降自分が納得するまで、基礎知識について学んでもらう。三か月たつと試験があってそれに合格すれば自分の希望する先生のクラスに入れる。この試験は、配属試験ともいわれるんだが、基本的な部分の確認テストと、適性検査が合って、この適性検査ではちゃんとそいつにあったのを選んでいるかとか、先生が自分好みの生徒を見つけたりする場面だ」
へぇー、やっぱりやり方が自由ですね。実力次第ってことですねー。それにしても三か月って結構短いような…
「あぁ、もちろん三か月っていうのは、次の配属試験が三か月後っていうだけで、普通はそんなすぐには配属試験を受ける人はいないさ」
そりゃそうですよね。そうなると、魔法具の知識ほぼゼロの私っていつ適性検査に入れるんだろう……。
「学校自体は、休日以外はもちろんいつも授業があるから、週初めに張り出される予定表を見てどの授業を受けるか決めていくんだ。まあ、その辺も含めて実際にはよく分からないことが出てくるから、俺が初期授業と言って今週を含めた二週間みんなと一緒に行動するんだ。それで、さっきは自分で授業を選ぶといったけど、この二週間はなるべく毎日来るよう。同じことを二度三度も教えてはあげられないからな」
ふむ、この辺は問題なさそうですね。休日にお金を稼げば二週間くらいなら大丈夫でしょう。
「初期授業が終われば、あとは三か月間、自分が必要だと思う授業を選んで行け。金を稼がないとマズイ奴もいるからな。毎日来ないからと言って、何か不利になるようなことはない。まぁ、もちろん毎日通うやつの方が有利かもしれんが。あぁ、それと一応このクラスも二週間したら解散ということだが、実習の時は高確率でこの教室の人と組むことになるから、この教室内での交流も大事だぞ」
そっか、二週間もしたらクラスがなくなるんだ。そんなもんか、だって技術を学ぶためのところだから、進度を無理に合わすよりいいですよね。あれ、でもそれだと何年も居座る人が出てくるんじゃ――?
「――あっと、そうだ三か月後は配属試験もあるけど、進度確認試験もあるから、そこで不合格なら退学になるぞ。当たり前だが」
ほ、ほほぅ、なるほど。了解しましたウランカ先生!わたし頑張ります!
「――じゃっ、今日はこれぐらいにするか。新寮生は残るように」