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ぐるりと教室を見渡す。見る限り、男子の方が多い。みんな十七歳以下のはずですが、それでも年はバラついてますね。
…… ……
……静かですねー。
まあ、それはいいとして新入生の為に用意された部屋は一部屋。ここで少し不思議なことが――
試験の時は、身分証明書とかどうしようとか思ったんですけど、受けに来る人の中には山奥というか、かなり田舎からくる人もいるらしく、この試験ではあまり必要なかったのは救いですね。ギルドカードはランクがある程度上がらないと身元は保証してくれませんし。
にしても、試験がむちゃくちゃ早く終わったんですよね。なんか魔法の指輪ですかね。一人ひとつシンプルな銀の指輪をつけさせられてその変化を見ていました。
わたしのは、まず色が変わってきました。銀がどんどん黒くなっていきました。なんか、こう、真っ黒になりました。その次にグニョグニョと指輪の表面が動き出しました。内側も動き出しているようでくすぐたかったです。しばらくするとそれも落ち着いて、宝石を置けるような台座とその周りをツタが這うような飾りが浮かび上がった。
それができると渡すように言われ、渡せばはい、終了。あっさりと終わりました。渡す時ちらっと見えたんですが、指輪の内側にびっしりと文字が彫られていて、くすぐたかった原因がわかりました。
たぶん、試験というか適性検査だったんだと思います。きっと、いろいろわかるんでしょう。
あの指輪結構気に入っちゃたんだけど貰えないのかなー。もう自分のものっていう感じでしたし、綺麗でしたしね!
っと、話がずれてしまいますね。えっと、確か試験の時は私の番号が984番だったことからも分かるように、むちゃくちゃ人がいたはずなんですが……。
今教室にいるのは14人(ちゃんと数えました)。
……すごく少ないです……ね?
これは、何かやっちゃうと目立つフラグでは……
しかも、なんか見覚えがある頭が見えるんですよね。まさかねー、まさかねー……、まさかですよね……。なんか、入って早々いろいろありそうです。うぅ、負けないぃー(誰に?)。
気持ちが落ち着いたところで、さっきから気になっていたんですが、じーと外から見られている気がしてドアの方へ目をやりました。すると、バッチリ目が合いました。隙間から覗くって……。向こうは、気付かれると思ってなかっみたい。目見開いてびっくりしてます。綺麗な青い目ですねー。だけど不審者みたい――
あ、入ってきた。薄い栗色の長髪を後ろの低い位置で紐を使って縛ってます。少し皺がありますね。四十台に届くぐらいですかね。あ、教壇に立った。もしかしなくても?
「えー、はじめまして!ウランカ・リューという。うむ、今回初期授業を受け持つことになった。うむ……。で、あー、何から説明するんだったか……」
なんか、テンプレのような先生ですね。わたしのほかにも、何人かは困惑している様子で、プリントをゴソゴソしている先生を見つめている。
「えーと……(あぁ、焦ってる) そうだ!自己紹介をしよう!授業でも班活動とかたくさんあるからコミュニケーションはきちんと取った方がいい。さっきみたいにダンマリは後々困るぞ」
おお、先生。賛成です。あの無言の時間はよくないですよねー。別に特別友達を作りたいというわけじゃない私でも、ちょっとあの時間はいずらいわー。
先生の言葉に、反応はそれぞれだけど反抗をするような人はいないみたいです。
「そうだね、じゃあマリアンヌ・リュリュチュカさんから」
可愛い名前だなー。特に後半が。
――えっと、もうあと私を含めて三人しかいません。ついにあの見覚えのある頭のやつの順番が
「はじめまして、カルヴァンです――」自己紹介するために振り返ったのは私が憧れた濡れ羽色の髪のイケメンでした。
……やっぱり奴だ。うわー見たくなかった。会いたくなかったー。
そーっと顔をそむけようとする。
・・・・・・
どうかバレませんよ――ハイ、バレマシター。目が合っちゃったー。終わりました。終了ぉー。短い逃避行動だったなぁ。っつかなんで、男のくせにそんなきれいな髪をしてんだかねー。
奴は振り返ってすぐに私と目が合い訝しげに目を細めた後、少し目を見開いて驚いたような顔をした。うわっ、コッチミンナー。
あっ、でも白いシャツと濃紺のブレザーとズボンむっちゃ似合う。……何考えてんの、コンチキショォっ、あのイケメンめ。
頭の中は大混乱、各々が叫びまくり、しずまれぇ私の脳内よ!
パニックになっている間にわたしの番が来てしまい、それでも、内心の思いを隠してニッコリ笑いました。このぐらいのスキルはありますよ――
「はじめまして。フミって言います――
そういえば、あいつカルヴァンって名前だったんだ。初めて知ったー。