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嘘つき魔法具  作者: 金平糖
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 キィィイ――


「ただいまー」


誰もいないのは分かっていし、ここ宿ですが癖で言ってしまいます。


 ベットが一つに机といすが一セット。簡単な水道と借りた簡易コンロがあります。部屋の中は大体このぐらいです。風呂とかトイレは共同ですね。


 窓の外に干してあった洗濯物を取り込む。朝作っておいた野菜スープをコンロに載せ、火をつける。夕飯の準備です。


 この世界の便利な文明を支えるのはどうやら魔法のおかげらしく、水道も魔方陣に触れると水が流れ出すし、火をつけるのも魔方陣に触れ魔力を流せば出来てしまうのです。

 金属の筒からいきなり水が出てきたときは、ギョッとしましたよ。ひねる蛇口もないのにいきなり水が出てきたように感じたんですよ。



 フミはラフなワンピースに着替え、今回のご褒美を買った店の隣の店で買ったかぼちゃのキッシュを取り出し皿に載せる。温めたスープもカップに注ぎ「いただきます」と一言言い食事を始めた。


 もそり、はむはむ、むしゃむしゃ――


 もぐもぐとしていたフミはあっという間にかぼちゃのキッシュを食べ終えた。どうやらフミはキッシュを気に入ったようで、籠から二個目を取り出しおかわりをした。まさに、至福の時――空きっ腹は最高の調味料といったところか。


 しばらくして、フミは食事を終えた。窓の外はすっかりと暗くなっていたが、部屋の中は明るい。これまた魔法か、白い発光体天井付近に浮かんでいる。

食事を終えたフミは机の上に置いてあった手に平サイズの包みをほどいた。中から出てきたのは、親指の先ぐらいの大きさのトンボ玉だった。深い藍色の中に白と黄色の星が浮かんでいた。

 それをひとしきり眺めると、椅子から立ち上がり、ベットの上に置いてあるリュックサックのポケットから、細い赤い紐を取り出した。


今日買ったトンボ玉はもう使い道を決めています。この赤い紐でブレスレットにするつもりです。向こうの世界から持ってきたリュックサックの中に赤い紐が入っていて、見覚えはなかったのですが、調度いいので利用しようと。

デザインはシンプルなのでいこうと思います。トンボ玉を中心に、その両隣に小さめの二重叶結びを配置。これだけです。結構紐の長さいるけど、ギリギリ大丈夫かな?



 ふぅ……

 さぁ、出来上がりです!

 我ながらうまくいきました。やっぱり、藍と赤の相性はいいですね。心配してた長さも足りて万々歳です。

 さぁて、早速着けてみましょう。


 フミはいそいそと出来たばかりのブレスレットを左手につけた。


 フフッ、やっぱり気分がいいですね。うんうん、やっぱり何か作るのって楽しい。

 何度も言いますが、やっぱり何かを作るのって楽しいです。……ということで、実は明日からやることが決まっているんです。


 さっき水道の話をしましたよね。その水道みたいに、魔法手段を使って動作するものを魔法具というのです。その魔法具を作ってみたいなぁとこの世界に来た私は思ったわけです。

 でも、作り方はわかんないし、一般の人が入れる図書館もこの近くにはなく、どうしようと思った日です。ずいぶん考えながら歩いたものですから、夕飯を買い忘れちゃって、しょうがないから少し高いですが、宿の食堂にお世話になることにしたんです。そこでカウンター席に着いたものですから、宿の女将さんに話しかけられたのです。


「あんたもトレシリアの入学試験を受けに来たのかい?」


「トレシリアですか?」


「あれま、違うのかい。というか知らなかったのかい?」


「ええ、ずいぶん遠いところから来ましたので……。なんの学校ですか?」


「あぁ、魔法具の学校だよ。一週間後に試験があるのさ。十七歳以下の子は誰でも受けれてね、特に準備することもないし、試験費もない。面倒な手続きも試験には必要ないってことで、取り敢えず受けてみるって子がたくさんいてね、試験の時は遠くから来る子もいるのよ。やっぱり、魔法具を作る仕事は儲かるからねぇ――」


 そのあとも、おばさんは話し続け、いつの間にやら息子や旦那さんの話までしだして慌てて食べて部屋へと戻った。ごめんね、おばさん。ありがとう、おばさん。


 こうして、トレシリア学園について知った私は入学試験を受けに行き、見事!受かりました!という感じでとんとん拍子で魔法具を作ることへの道が開かれたのです。


 そして、明日の予定はトレシリア学園生活一日目です。入学式というのはなく、明日は学校の説明があるだけです。ま、入学式があっても疲れるだけだし、いいのですが、唐突に始まるってのもなかなか不思議ですね。

 トレシリアに入ると同時に寮にも入れることにもなり、長期の住処も見つかり、良いことだらけです。さっ、明日の準備をして早いところ寝ちゃいますか。



 フミはもともと少ない荷物をシンプルなリュックサックへ詰めると制服を机の上へと置き、お風呂を済ませると早い眠りを迎えた。




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