♯3「新入部員同期」
ぼく達吹奏楽部に、新しい部員が来た。
名前は、及川拓弥。通称おっさん。
ぼくたちと年は同じなんだけけど、見た目が老けてるせいで、なんかお父さんとかおっさんとかいろいろなあだ名がある。
ちなみに、ぼくの友達でもある。
拓弥はドラムをすることになった。
最初はドラムじゃなくて、ほかの楽器がやりたかったっぽいけど、なんか強制的にドラム。拓弥、頑張れ。
そうそう。拓弥は、めちゃくちゃ頭がいい。席次なんか1位があたりまえで、95点以下は1つもない。
もちろん、成績はオール5。
ぼくも結構成績はいけてるけど(大体5?10番あたりかな)、拓弥にはかなわない。
いつか絶対抜いてやる!!!!!
あ、拓弥のドラムの話からそれたね。
拓弥がドラムをマスターしたのは、それからたったの2日。
ぼくなんて、まともに部活行くようになって3ヶ月たった今だって、へなへなした音しか出せないのに・・・。拓弥、すごい。
そして、拓弥はあっさりと、曲に入ることができた。
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そして、またぼくたちと同じ年の人が入部。
名前は大橋涼太。背がすらりと高くて、かっこいい。
現在彼女もちで、もともとは吹奏楽部だったんだけど、1年生の終わりぐらいに辞めてしまっていた。
そして、担当になったのはチューバ。
南沢たちがやめてから、パーカスもチューバもいなくなってしまって、かなりやばいところに拓弥と涼太が入部してきたんだから、もう神様扱いだ。
拓弥はなんかひかりとななみ(S2人)いじられてるけどね。
そして、涼太はひかり曰く「お花畑」らしい。
たしかに、なんかひらひらしててあははー、という雰囲気をかもし出している。
「お花畑!あはあはしてないでちゃんと練習してるかー」
ひかりが涼太畑に声をかける。
「うん。してるよー」
涼太畑はあははー、と答える。
「あ、りょったー!ちょっと新聞紙とってきて!」
ひかりが涼太に命令(お願い???)する。
「うん。わかったー」
涼太はお返事をすると、るんるんと裏側へ行く。
「りょったー、お花畑だねえ」
ひかりが和むー、と言って、脇を掻く。
やめてよ、ひかり・・・。こっちが和まないから。
「あっ!チューリップ踏んでしまった!」
涼太は足の裏を見て言う。
涼太、勘弁。
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そして、また。
ぼくたちと同期の人が入部。
名前は河野春香。
なんか自然いっぱいの名前が可愛くて、背が高くてモデルさんみたいなんだけど、涼太と同じお花畑。
名前と性格があってるから、すごい。
そして、なぜか急にキレだすとかいう恐ろしい面もある。
春香は、復活部員。
あまりのサボりすぎで、先輩の引退(一応言っておくけど、なぜかぼくだけ宣言を録音されたあの話し合いのときに)と同時にやめてしまっていた。
パートは、もともとやっていたバストロンボーン。
普通のトロンボーンとは、ちょっと音が低くて、重い。
バストロンボーンの重さが嫌でやめたようなものだろう。
これで、吹奏楽部の人数は増えた。
9人!!
6人に比べたら、驚くほどの進歩だ。
曲もだんだん出来上がってきている。
卒業式まであと2ヶ月(ちなみに今は新学期が始まって1月だ)。
そろそろぼくも練習するかー。
「ねえ稔。お腹すいた。なんか買ってきて!」
「は?」
それは唐突に起こった。
っていうとなんか事件みたいだよね。
じゃなくて。
「なんでぼくが!?」
「だっておまえしかいないだろ?」
今は部活前で、みんなだらけている。
で、ぼくは今ひかりにパシリを頼まれている。
まあ、ひかりが言うように、多分パシれるのはぼくしかいないだろう。
ななみはお前が買って来い、と絶対に言うし、春香はめんどくさーいと絶対に言う。
涼太は笑ってごまかす、拓弥、まじめでそんなの無理。
それならひかり自分で買って来いよという話だけど。
「ひかり自分で買ってきてよ」
「はあ。おまえなに。部長に逆らうわけ」
こうなるの分かってたんだよなー。あはははは。
笑い事じゃないよねー・・・。
まあ、こういうわけでひかりは無理。
亜樹は・・・。論外。
まあ、ひかりは逆切れと自分を棚に上げる天才だからね。
行くしかないかな。
ぼくもお腹空いたし!
「じゃあ、言ってくるけど、ばれたらひかりの責任だからね」
「やった!はい、500円。できればチップスがいい」
ぼくはひかりのお金をかばんにつっこんで、かばんをもって出る。
これだと、買い食いに見える(これも悪いことなんだけど)し、学校に戻るときも忘れ物をしました、と先生に言えば簡単にもどれる。
なんだかんだと都合のいい言い訳を考えながら、チャリを飛ばして近くのコンビニに向かう。
でもここは、先生もなぜか黙認しているお店。
店長さんも、うちの学校の生徒と仲良しで、たまに無料で肉まんをくれたりする。
あ、ついた。
お店の自動ドアをくぐると、その店長さんが笑顔で挨拶。
「お、立花くん。なになに、あの気の強そうな美人さんに頼まれごと?」
「うん。なんか、ぼくしかいないんだってー」
「頑張って。はい。ご褒美」
「やったー!ありがと」
ぼくはご褒美の肉まんをほおばりながら、ひかり注文のチップスを買って、ついでにチョコ系のお菓子も何個か買って、お店を出た。
校門のほうで先生にどうしたの?って聞かれたけど、忘れ物しました、といったら簡単に入れてくれた。
「来たー!稔ありがとう」
音楽室に戻ると、ひかりがお出迎え。
こんな美人にお出迎えされるのも悪くないねー。
「ご注文どうりのチップスです。ついでにチョコ系も買ってきたけど、いいでしょ?」
「まじ!気が利くじゃん」
チョコが大好きなななみは満面の笑みで近寄ってくる。
そして、みんなでお菓子パーティ。
でも拓弥と亜樹は不参加。
拓弥はまじめでそんなの無理。亜樹は、熟読中。
「あ、このチョコうまい」
つい言葉で出てしまうほど美味しいチョコをぼくはもぐもぐ。
ちなみに店長からのご褒美はお菓子選んでる間に食べちゃいました!
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それから何度かお菓子パーティを繰り返しながら、とうとう卒業式まで1ヶ月。
ぼくたちもそろそろ3年生なんだよねー。
実感ないや。
メンバーも増えて、曲も出来上がってきている。
ぼくたちは、週末は1日中練習、というのもやりながら、お菓子パーティもやりながら、卒業式に向けて頑張って行った。