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♯2「問題発生!」

卒業式まであと5ヶ月というころ。

吹奏楽部に、体験入学者が来た。

それも1年生3人!

南沢優希と、大原朝香と、村田梨子の3人。

ひかりはかなりうれしいようで、3人をかなり歓迎していた。

それぞれの楽器は、南沢、村田がトロンボーン、大原がパーカスになった。

吹奏楽部には、今までトロンボーンがいなかった。

もともとはいたんだけど、あまりのサボりすぎで部員全員での話し合い(まえに説明っけ?なぜかぼくたけ宣言を録音された、あの話し合いだ)のときに、部活をやめてしまっていたのだ。

それで、やっと、トロンボーンが復活した、というわけ。

そして、その3人も1週間もたてば随分部活の雰囲気になれた様子。

ぼく達に、なーんか、反抗的になってきた。



「ねえ、1年生楽器出して!」

ひかりが、できるだけやさしく、1年生3人に声をかける。

3人は、楽器室、通称「裏側」で、ケータイで音楽を聴いていた。

洋楽で、ぼくにはさっぱり意味が分からない。

多分、「LADY・GAGA」かと思う。

「1年、うざい」

ぼくの隣で、ななみが低い声でつぶやく。

怖いよ、ななみ・・・。

ぼくとななみは、音楽室でそのやりとりを見ていた。

「ななみ。副部長は注意しないのか」

「あのひかりの注意でも聞かないんだぜ?あたしの注意なんか聞くか」

「ななみの毒舌なら聞くんじゃないか?」

ななみは「ふふん」と鼻で笑って、ぼくに言う。

「なんか、ひかりが我慢の限界達してるっぽい。行って見ない?」

「行く行く!」

ぼくとななみは、裏側へ小走りに近づいていく。

「ほら、早く出してー」

ひかりは、必死に優しくしているらしいけど、声はかなり怖くなっている。

「はあ・・・。分かりました」

南沢が、のっそりといかにもめんどくさそうに立ち上がる。

大原と村田ものそのそと立つ。

「あ、優希、今日からチューバだから!」

ひかりが、南沢を指差して言う。

「はあっ!?待ってくださいよひかり先輩っ!なんでわたしが」

「だって、チューバ余ってるし。いいでしょ」

ひかりが、やけに大きい楽器ケースのまえに歩いていき、足をがばっと開いてあぐらをかいて、ケースを引っ張り出す。

「チューバってこれね。簡単だから、大丈夫だよ」

南沢は、あきらめたように肩を落として、

「はあぁぁぁ・・・」

大げさにため息をついた。

なんか、嫌なかんじが隣からするけど・・・。

「な、ななみさん・・・?」

ななみの顔が、かなり強張っている。

これは、これはやばい!!!

ぼくはななみの腕を無理やり引っ張って、裏側を出た。

ななみの顔が強張っているときは、要注意なんだ。

そのままほおって置いたら、ななみの怒りは爆発して、南沢は、ものすごい説教を受けるはめになる。

それも、かなり恐ろしいから、なだめるのが大変なんだ。

1回見たことがあるんだ、ぼく。

「むかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくうざいうざいうざいうざいうざいうざいうざいうざいうざい・・・」

こ・わ・い・・・。

なんか、悪魔召喚の呪文みたいで、恐ろしい・・・。

「ななみ、多分ひかりが言ってくれるから・・・。怖いよななみ・・・」

それからもななみは、うざいうざいとぶつぶつ呟きながら、そして、ぼくは必死にななみの怒りを納めていた・・・。



「おお!すごいっ!優希!チューバの天才来たぜっ!!」

ひかりは、結局チューバになった南沢にチューバを教えていたらしく、天才天才と言いながら南沢の肩をぐらぐらと揺らしている。

「なな!稔!すごいぜ、優希!もう音階完璧」

え、すごいじゃん。

「ふうん。じゃあ、やってみて」

ななみ、まだ機嫌悪いみたいです・・・。

ななみって怒るとめんどくさいタイプなんだよね・・・。

「ああ、いいですよ!ななみ先輩」

南沢は得意げに笑ってから、音階をはじめた。

まだまだだけど、とりあえず、音にはなってる。

「いいんじゃないの」

ななみは、ふふんと鼻で笑ってから、自分の席について、卒業式の曲の練習を始めた。

ぼくも練習やるかー・・・。



     ** **




南沢がチューバに移動してから、結局村田莉子もパーカスに移動した。

これで、トロンボーンが全滅した。

なぜ村田まで移動したのかはわからないけど、どうやらひかりはパーカスがもっとほしいらしい。

「トロンボーンが欲しい」

そして、基礎の途中に、唐突に言った。

なんだよ、じゃあトロンボーン残しとけよ・・・。

「ねえ、誰かトロンボーンしない?」

ひかりはぐるりとぼく達を見回す。

「はいはい!じゃあ、わたしがやります!」

南沢が元気よく手を上げた。

「絶対ダメ!・・・いない?」

絶対って・・・。

でも、このなかからトロンボーンは無理じゃない?

だって、トランペットはぼく一人だけ、ホルンもななみだけ。ユーフォも、ひかりだけ。パーカスは3人いるけど、足りないくらいだ。

いるとしたら、2人いるパート。

「ああぁぁあ!!亜樹!」

あ。

・・・忘れてたよ。いたね、そんな人。

ってちょっとひどいか。

確かに、チューバは南沢と亜樹。二人いる。

チューバに2人は多い。

「亜樹!トロンボーンして!」

「やる!」

めったに声を出さない亜樹が、結構でかい声を出して、即答・・・。

「まじ!やる!?OK!じゃあ今すぐやろう!チューバ卒業ふうー!!」

ひかりと亜樹は、スキップで裏側へ向かった。

ななみも、野次馬でついていく。

ぼくも行こうかな?。

「はあぁぁぁぁ・・・?さいっあく!」

南沢・・・。

南沢は、チューバを乱暴にどすっとおいた。

そのはずみで、チューバのマウスピースがころころとぼくのところに転がってくる。

「乱暴に扱うなよ」

あ、ぼく初めて南沢と喋ったかも・・・。

とってあげるか。

「ダメ!さわんないでくれない!?腐るから!」

え!?

「まじ触んないでよね。キモい!」

え!?


え!?


えぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇ!!!!!!




   ** **




亜樹がチューバからトロンボーンに移動してから、1週間。

南沢、村田、大原の3人は、ぱったりと来なくなった。

「潮音!1年生は?」

「あ、優希が習い事で、莉子と朝香は塾って言ってました」

潮音がにこにこと答える。

潮音は、ほんとにいつもにこにこしてるんだよね。

ななみも潮音を見習ってくれないかなあ・・・。

「はあ!?なにあいつら!塾とか7時からだろ!?習い事とか、まえ6時からって南沢言ってたし!サボりか!?」

ななみが椅子をばんばんたたきながら叫んだ。

ななみ、相当あいつらの態度が気に入らないんだな・・・。

まあ、ぼくもあんなことがあってから、南沢大嫌いだけど!

「稔、おまえはどう思う?あいつらやめさせたほうがいいだろっ」

ななみは相変わらず熱弁。

まあ、ぼくもそれには同感だね。

「うん。ぼくも同感。ぼく、南沢のマウスピースとってあげようとしたら、一応ぼく先輩だろ。でも南沢、触るな、腐る!とか言ってさ。まじむかつく!」

ぼくも一緒になって愚痴る。

まあ、愚痴は愚痴るときに愚痴っといたほうが健康のためなんだよ、うん。

「はあ?」

ななみの顎が、少し上に上がる。

声も少し低くなって、めちゃんこ怖い・・・。

「南沢、調子のんなよ」

「ななみー。南沢本人に言えよ」

「ひかりー。あいつら、やめさせよう!ひかり!部長だろ」

ななみは副部長でしょ。って、部長と副部長は違うかな?

「うーん・・・。まあ、ちょっと様子見てみよう。あと1週間こなければ、強制退部。1週間以内に来たら、もうサボるなって言う。どう?」

「別にいいけど」

そういいながらななみ、めっちゃ嫌そうなんだけど。

まあ、ぼくもそれには賛成。


・・・と、ここまでは良かった。

次の日、潮音から聞いた情報で、事態は急変!!!

なんと、この1週間部活にこなかった理由は、かなり最悪!

1つ目は、卒業式の曲が嫌だ。

2つ目は、卒業式に演奏したくない。

さすがのぼくでも、怒る。

「そんなに嫌なら、辞めればいいのに」

「ひかり!いますぐ!あいつらの入部願い破いてこよう!あたし行ってくる!!」

「なな!ダーメ。これは、あたしがずばっと明日言う。コロス!シバク!」

ひかり!!最後の2個はダメ!さすがにダメ!

「まずは、先生に言おう!なな!」

ひかりとななみは職員室に直行。

ななみなんか、うざいぃぃぃとか言いながらひかりの後をついていく。

怖いよ、ななみ・・・。

とりあえず、あの1年生3人組は辞めることになりそう。

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