#7 消された真実と残された傷痕
「じゃあ、芝崎先生とか晴紀を殺されたのも、湊先輩って人が理由??」
篤彦が冗談めかして聞いた。
「不謹慎よ」
由実が声を荒げた。
僕は迅の顔が少し青ざめているのに気づいた。
迅は運動神経がよくて、自信に満ち溢れている、僕からすれば、そんな印象だ。
「てかさー、そんなことしてよく問題にならなかったよな...」
そう呟いたのは、信次だった。
雄吾と最も仲のよかった信次まで知らないらしい。
「こんなやつと仲良くしてたなんて、自分に反吐が出るぜ」
信次はそう言うと、話を戻した。
「で、本当に湊先輩の件は問題にならなかったのか?」
「問題にはなったよ」
楓夏が言った。
「うちの親も学校にだいぶ出資金出してるから、うちの親が教えてくれたんだけど、雄吾の父親は議員、母親は医者でしょ。雄吾の親はそれもあってなのか、学校の出資金の8割くらい、出してるんだって。そのおかげで、うちの学校は、男女別の校内浴場とかシャワー室、冷蔵庫3台に冷凍庫2台が設置できたり、すべての窓ガラスを防弾ガラスに変更できたりしたの。だから、学校としては、雄吾の両親の手前、あんまり公にしたくなかったみたい」
「でも、湊先輩が亡くなったんだろ?それでも学校は問題にしなかったのか?」
信次が言う。
「湊先輩のご両親とはお金で解決したみたい。うちの親から聞いた話だから、確実とは言えないけどね」
楓夏が淡々と言った。
「パン」
聖羅が軽く手を叩いた。
「みんな、昼も抜いてるでしょ。夜ご飯くらいしっかり食べよ。もうこんな時間だし。」
僕は壁に掛かっている時計をみた。21時だった。
「私、零ちゃんと詩歩ちゃんに手伝ってもらって、学校来る前に、近くのコンビニで弁当とか飲み物とかレトルト食品、買い込んだから。2週間は、余裕で持つわ。コンビニ弁当と飲み物は4階の家庭科室の冷蔵庫に入れて、レトルト食品は家庭科室の机に並べたわ。幸い、電気とか水は正常に、今も、使えそうだから、食べられなくなることはないと思うわ」
聖羅はそう言うと、すぐにみんなに次の指示を出した。
ちなみに詩歩ちゃんというのは僕の初恋の女の子だ。ショートヘアで、屈託のない笑顔が実に印象的だ。誰にでも親切なところも初恋の理由の一つだ。けれど、初恋は実らなかった。深くは語りたくないのでここらで詩歩ちゃんについてはおわりにしよう。
「女子のみんなは家庭科室まで行って、全員分のコンビニ弁当を温めて、2Aの教室に用意、男子のみんなはその間に3Aに男子の布団を、3Bに女子の布団を敷いておいて」
「じゃあ、各自、行動開始!」
聖羅の掛け声でみんな、教室を出る。
「雄吾、とりあえず、働くぞっ」
朗らかな口調の篤彦に小さく頷き、雄吾も教室を出る。
「どこ行くんだ?」
広人だった。
「学級委員長様のご命令で布団を敷きにいくとこ~」
咲哉が答えた。
「あっ、そ」
広人は素っ気なく、答えた。
「俺、あいつのこと、嫌いなんだよね、あいつさ、高校の時、俺が怪談話、嫌いなの知ってて、2週間、ずっと怪談話をしやがってよ」と小声で僕に耳打ちする。
僕は、「広人にも苦手なものがあったのか」と思ってくすっと笑う。
「な、笑うなよ」と広人が気恥ずかしそうに抗議する。
「ちなみにさ、先生の動画が映ってた、プロジェクターって、誰が操作したか知ってる?」
僕は些細な疑問を聞いた。
「知ってるよ」
篤彦だった。
突然の乱入に僕と篤彦はギョッと固まる。
そんな僕らを見て、篤彦はニヤけながら、
「ダイジョブ、ダイジョブ。プロジェクターの話しか、聞こえなかったから~」
ウソともホントとも、とれるような、間延びした声で、篤彦は続けた。
「迅だよ。プロジェクター操作したの。迅が『先生からメールもらって、その指示に従っただけ』って言ってた。なんでその指示に従ったのかは謎だけど」
たしかに、迅とはあいさつ程度の仲だったが、それでも迅が素直に従うタイプには見えなかった。
「メールを送ったのも迅?」
僕は続けて、篤彦に尋ねた。
「それは違うと思う。プロジェクターのコードに迅のスマホがつながってるのが、見えたから。スマホがなきゃ、メールは送れないだろ?」
篤彦は自信満々に答えた。




