#4 矛盾の檻
連載作品「終わりの始まり」の加筆・修正について
いつも拙作「終わりの始まり」をお読みいただき、誠にありがとうございます。作者の[Noir]です。
この度、以前投稿した一部、文章について、表現の調整や誤字脱字の修正、および若干の加筆を行いました。
物語の大きな流れや結末に変更はございませんが、セリフ回しや小説の展開をより細かに、そして丁寧にすることで、より読みやすくなるよう手直ししております。
すでにお読みいただいた方も、これからの方も、楽しんでいただければ幸いです。
今後とも、応援よろしくお願いいたします。
[Noir]
剛と教室に戻ると、みんなも戻ってきていた。
ざわつきの中で、椅子の軋む音や靴底が床を擦る音が小さく響く。
「どこ行ってたの?」
由実の声が、緊張を少し和らげるように、くすっと笑う。
「晴紀は?」
楓夏は肩をすくめ、口ごもる。「知らなぁい」
その無言の間に、教室の空気がひんやりと重く感じられた。
「みなさん!」
教壇に立った聖羅の声が、静まった教室に鋭く響く。
窓の外から差し込む光が、彼女のスマホ画面に反射して眩しい。
『終わらないのは?』
「愛花梨の質問文、手鏡は4階の美術室にありました!次は私の質問文を手伝ってください!」
聖羅はスマホを見せながら力強く言った。
僕はそっと教室を抜け出す。
廊下のひんやりした空気が肌を刺す。
一人になりたかった。頭の中がぐちゃぐちゃに渦巻いていた。
「矛盾だらけの空間…」
言葉が脳裏に張りつき、耳元で低く響くようだった。
椅子に腰かけ、深呼吸する。
床の冷たさが背中に伝わる。
疑問は山ほどあった。
剛に届いたメール。
先生の死体と動画。
みんなに届いた質問文。
行方不明の晴紀。
一つずつ整理していく。
剛に届いたメールは、なぜ彼だけ選ばれたのか?偶然なのか、必然なのか。
鍵を閉めさせた理由。
台本が教室に置かれていた理由。
外に先生がいたなら、どうして隣の教室に?
動画の先生はいつも通りだったが、それでも、なにか、おかしい気がした。先生だけど、先生じゃない、そんな感覚だ。
みんなに届いた質問文も、どこか異質だ。
雄吾や愛花梨のものは余興っぽい。
僕や晴紀、聖羅に届いたものは、冷たく硬質で、不気味な感触が残る。
そして、消えた先生。
外に出たとしても、矛盾が多すぎる。
最大の矛盾は、僕も剛も晴紀も、そしてみんなも、誰一人外部に連絡しなかったことだ。
普通なら、死体を見たり話を聞けば警察に知らせるはずだ。
でも、誰も動かなかった。余興だと思い込んだせいだろうか…。
胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
嫌な予感が、血管を通って全身に広がる。
スマホを開く。晴紀に電話する。
…繋がらない。
どこにも、全く。
廊下の風が紙をかすかに揺らす。
僕は足早に教室に戻る。
教室に戻ると、みんなの顔がぼやけて見え、頭の中の混乱がさらに濃くなる。
背中に冷たい汗を感じながら、僕は深く息を吐いた。




