#3 真実と余興の狭間で
連載作品「終わりの始まり」の加筆・修正について
いつも拙作「終わりの始まり」をお読みいただき、誠にありがとうございます。作者の[Noir]です。
この度、以前投稿した一部、文章について、表現の調整や誤字脱字の修正、および若干の加筆を行いました。
物語の大きな流れや結末に変更はございませんが、セリフ回しや小説の展開をより細かに、そして丁寧にすることで、より読みやすくなるよう手直ししております。
すでにお読みいただいた方も、これからの方も、楽しんでいただければ幸いです。
今後とも、応援よろしくお願いいたします。
[Noir]
僕は晴紀を置いて教室に戻った。
教室には両手ほどの人数しか残っていない。
「愛花梨にきた質問文が『手鏡を探せ』だってさ。いよいよ余興っぽくなってきたよな」と広人が軽口をたたく。
「質問文のせいで、ほとんど出払ったのか」と思いながら教室の隅を見ると、剛がぽつんと座っていた。
「ダイジョブか?先生の余興にビビるなんて剛らしくないぞ〜」
と茶化してみたが、剛は黙ったままだった。
「やっぱ、柄にもないことはするもんじゃないな…」
そう思っていると、剛の肩が小刻みに震え、声を絞り出すように言った。
「俺、知ってんだよ…」
思わず剛の肩に手を置いた。体が微かに震えている。
「なにを?」
剛は顔を背け、震える声で続ける。
「俺、ホントは隣の部屋で台本の練習してたわけじゃないんだ…」
肩がさらに揺れる。息が乱れて、汗が額をつたうのが見える。
「俺が先生を…殺したんだ」
言葉が床に落ちるように響いた。意味が分からず、「へ…?」と変な声が出る。
剛は小さな声で言葉をつなぐ。
「昨日、家に帰ったら、こんなメールが来ててさ」
そう言いながら剛はスマホを見せる。
『明日は7時に来てください 芝崎 誠』
「先生から…」と僕は独り言のように呟く。
剛はうなずき、肩が大きく揺れる。
「それで、俺、7時に教室に着いたら、まだ誰もいなくて…黒板に一枚の紙が貼ってあったんだ。下駄箱のドア以外の、外に通じるドアの鍵を全部閉めろって」
「いや、でも隣の部屋で台本持ってたじゃん」と言うと、剛は肩をすくめて言った。
「全部閉め終わったあと、鍵は1階の体育館倉庫にある黒い箱に入れろって。それで体育館倉庫に行ったら、箱があって…そこに入れたんだ。それから教室に戻ったら台本が置いてあって、だから『覚えりゃいいのか』って思って覚えに行ったんだ」
「ちょっと待てよ…じゃあ、先生には会ってないんだな?だとしたら…」
と言う僕を遮り、剛は言葉を詰まらせたまま、震える声で続ける。
「入って最初は気づかなくて…でも教室の床に仰向けになってて…それで…」
声は止まり、剛は静かにむせび泣いた。
僕は背をさすりながら、嫌な予感を振り払おうとした。
「でも剛が先生を殺したわけじゃないんだろ?」
剛はスマホを見せてくる。
『先生が死んだのはあなたのせいです。 芝崎 誠』
「余興だよ…きっと先生は生きてるよ」
気休めに言ったものの、さっきの映像が頭に浮かび、心臓がぎゅっと締め付けられる。
「そうだ、もっかい隣の教室行こう!きっと先生は生きてる、だからこっそり聞いてみよう!」
明るく言いながら、剛の手を引く。
上の階から、かすかに笑い声が聞こえる。
晴紀の姿は廊下にない。
2Bの教室に入る。
ドアを開ける手が、思わず震える。
「ガラガラ〜」
まだ夏なのに、冷たい空気が肌を刺す。
「なんで?」
剛の声も、少し震えている。
教室の隅々を探すが、先生の気配はどこにもない。
かすかな風も音もないはずの教室で、背筋がぞくっとした。
「バレないように先生はどこかから見てるんだ、きっと」
そう言いながらも、底知れぬ不安が胸に押し寄せてくるのを感じていた。




