#21 友の過ち
同窓会は終わった。僕の心は晴れない。
愛花梨の告白は終わったが、真の黒幕の影が、校舎全体を覆い続けている。
僕は、愛花梨が、使っていた部屋に戻り、その完璧な秩序の中に、一つの論理的な矛盾を探しだした。
それは、窓枠に残された小さな亀裂だった。
僕はそれを、外部からの破壊ではないか、そう思った。
愛花梨が自らの罪を告白した今、黒幕は彼女を殺すよりも、決定的な証拠を回収することを優先するはずだ。
晴紀が恐れていた。愛花梨が殺されるのではないかと。
そして、この小さな亀裂は、侵入しようとしたあとなのではないか。
そこまで考えて、僕はもう一度、傷跡を注視した。
よく見ると、違和感を感じた。
破壊の傷跡ではなく、なにかをはがしたような傷痕だったからだ。
とすると....愛花梨の部屋は、盗聴されていた。
そう考えるのが、自然だろう。
つまり、窓枠の亀裂は、黒幕が、部屋に仕掛けた盗聴器を回収しようとした工作の痕跡だ。
この行動は、愛花梨の復讐のような感情的な動機ではなく、情報と秩序の維持という、極めて冷徹な支配の論理に基づいている。
黒幕は、愛花梨の口封じよりも、情報操作の証拠の回収を優先したのだ。
僕は、この支配の論理と盗聴器の回収という行動が、誰に結びつくかを考えた。
黒幕は、雄吾・迅・晴紀を排除し、情報流出の危険性を極度に恐れている。
そして、湊先輩を裏でいじめていた人物だ。
たしか、あの時、、楓夏が「母子家庭」のことで湊先輩のお母さんは....と話していた。
先生はレコーダーの中で、湊先輩が親の罪を被っていると言っていた。
つまり、湊先輩は母子家庭のことを悪く言った、湊先輩のお母さんのせいで、いじめられていた。
母子家庭のクラスメンバーは誰なのか。
そこまで考えると、ふと疑問が浮かんだ。
あの時、犯人は、僕を殺さなかった。
殺そうと思えば、もっと確実な方法で、殺せたはずなのに。
なぜ殺さなかった?僕が、死ぬと困るからなのか?
由実....
彼女しか考えられなかった。あの時、楓夏がオムライスを持ってきた。由実は来なかった。
由実は料理をしていて、やけどをしたように、料理は普段は、由実がする。
楓夏がもってきた、理由は一つしかない。
由実がいなかったからだ。
僕は、それが最も残酷で、そして確実な現実だと思った。
由実なら、雄吾と迅を殺すことが可能だ。なぜなら、僕は由実と楓夏だけは、ちゃんとあの時、調べなかった。雄吾と迅を発見したのは、聖羅と愛花梨だった。
由実はあの時、なぜか、後ろにいて、そして愛花梨の背をさすっていたが、妙に落ち着いていた。
そして、由実は....母子家庭だ。。
由実は、雄吾と迅の事件の黒幕として、情報が漏れる可能性がある人間を冷酷に排除し、環境を完璧に操作しようとしていた。
由実なら、冷静で頭もきれる。
窓の盗聴器の痕という物理的な証拠が、由実の冷徹な支配の論理と結びついたとき、僕は、これまで全く疑うことのなかった由実が、剛の死を含む全ての悲劇の根源であり、この同窓会を血で染めた真の黒幕であるという、衝撃的な事実を論理的に導き出した。
由実は、愛花梨を道具として利用し、用済みとなれば躊躇なく消そうとした支配者だった。
彼女の目的は、先生の「終わらないの証明」とは正反対の、「支配された永遠」をこの校舎で実現することだった。
次は、この冷酷な黒幕との、僕の親友のはずの黒幕と最後の対決.....
僕は静かに目を閉じた。
「もう、終わらせよう」




