#19 友はかく語りき
晴紀は犯人がだれなのか、気づいた、そんな気がする。
僕は、改めて晴紀の行動を推理した。
職員室の回線を切れたのは、晴紀だけだ。晴紀以外は教室にいたからだ。
なぜインターネット回線と電話回線を破壊したのか?
晴紀は、実行犯が真実を知り、それを公にしようとすれば、犯人の身が危なくなるからではないか。
でなければ、晴紀はきっと、真っ先に、公にしただろう。あいつはそういう男だ。
つまり、晴紀は、犯人を公にせず、かばったのだ。
晴紀は、マスターキーをもっていたはずだ。でなければ、いかにも「壊された」感じの、あの校長室のPCはあけられない。きっと、あの中に、事件の最大の証拠が入っていたのだろう。
だが、晴紀はきっと、黒幕に関する手紙を、誰も見つけられない場所に隠したはずだ。
晴紀は、犯人を止めようとして、殺されたはずだ。
「おまえしか、信頼できない」
晴紀はそういった。晴紀は僕を、信じるとは言わない、だからきっと、あれは証拠をどこかに残したということだ。
僕の視線は、職員室の隅にあるコーヒースタンドの下の、床と台のわずかな隙間に釘付けになった。
人がかがまなければ気づかない、しかし、物を差し込むには十分な空間。
震える手でその隙間を探ると、僕の指先に冷たい金属の感触と、紙の束が触れた。僕は息を詰まらせ、それらを引きずり出した。マスターキーと、丁寧に四つ折りにされた晴紀の最後のメッセージだ。
手紙を握りしめ、僕は壁にもたれかかった。僕が追い求めてきた犯人の正体が、今、この紙切れ一枚で明かされる。その事実に、僕の全身の血が逆流するような衝撃が走った。
僕は震える手で手紙を開いた。
「...彰。もしお前がこれを見ているなら、俺はもういないだろう。愛花梨は、芝崎先生を殺した。そして、剛を陥れようとしている。
彼女は、湊先輩の復讐のため、先生の言葉を誤解し、きれい好きで周到な犯行を計画した。だが、彼女は孤独だった... 頼む....どんな状態でもいい。 愛花梨を、彼女を、どうか止めてくれ。
最後に、友よ、楽しかった。とても楽しかった。幾度も僕を助けてくれて、ありがと。いつも、言葉では言えなかった。 ありがとう。 そして、愛花梨に会ったら、伝えてくれ。 ずっと、今も、愛していると。孤独は、僕も背負うと...」
愛花梨。
先生を殺し、剛を陥れたのは、愛花梨しかいなかったのだ。
晴紀の遺言が、教えてくれた。
そして、手紙は、僕が疑念をいただいていた存在に触れた。
「...俺は、愛花梨がこれ以上、誰かの計画に利用されるのを止めなければならなかった。雄吾と迅の死の裏には、湊のいじめを仕組んだ真の黒幕が潜んでいる。俺が回線を破壊したのは、愛花梨がその真実を知って、その黒幕の危険に晒されるのを防ぐためだ。愛花梨は、ただの道具にされてしまう。彰、お前なら、その誰かの正体を暴けるはずだ...」
雄吾と迅の事件、そして湊のいじめの真の加害者を知る黒幕が、今も僕たちのクラスにいるという絶対的な証拠が、この手紙に残された。
僕は、この手紙を何度も読み返した。愛花梨が実行犯であるという確信を得た今、そして真の黒幕がまだ潜んでいるという証拠を得た今、もはや迷う理由はない。
僕はまず、愛花梨と対峙しなければならない。
彼女が犯した罪と、先生のメッセージの真意を伝え、復讐の「永遠」から彼女を解放する。
それが、剛と晴紀の死と、先生の最後の授業に対する僕の「終わらないの証明」の第一歩だ。
そして、その後に待ち受ける、僕がまだ見抜けていない真の黒幕との対決こそが、僕の最後の授業となるだろう。




