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#1 終わらないと永遠の違い

あれから4年、僕は都内の中堅国立大学、明藍大学の3年生になっていた。

明日から夏休みだが、予定はなにも入っていない。

「おい、彰、おまえ、どうすんの?」帰り道で剛が突然言った。

僕が「え?」と言うと

「同窓会」と晴紀(はるき)が言った。

剛と晴紀は幼稚園から大学までずっと一緒、つまり幼なじみというやつだ。

剛は横柄だとよく勘違いされるが心根は優しい。

晴紀は無口だが、いつも冷静でいざという時に頼りになる。父親が警察官だからだろうか。

「よっ!」明るい声と共に由実(ゆみ)楓夏(ふうか)が駆けてくる。

由実と楓夏は中学から一緒で、中高では最もしゃべりやすい女子だった。

由実は朗らかという言葉がよく似合う女子で、しっかりものだ。束ねられていない長い黒髪が今日もゆらゆらと風に揺られている。

楓夏は華奢でスタイルがよい。うるさいことを除けば間違いなく、恋愛対象として意識していただろう。

「あ、髪きったの?いいじゃん~」由実が僕を見てそう言った。

「うちも髪きろっかなー、長くなってきたし」僕を見ながら楓夏が言った。

「で、どうすんだよ?桜瞭中高のクラス同窓会」剛が話を戻した。

「うちの中高は編入もないし、担任・クラスが6年間持ち上がりだから、私はみんなに会いたいし、行きたいなぁ」由実が懐かしそうに言った。

「俺は行くぜ、みんな行くみたいだしな!」剛が言った。

「剛の言う『みんな』というのが何人かわからないが、剛は意外に顔が広いから案外『みんな』なのかもしれない。」

などと思っていると、

楓夏が「剛と由実が行くときは彰も晴紀も行くんでしょ。だからうちも行くよ~」

「そうなのか?俺は行くことになっているのか。」

なにも言ってないのに答えを決めつける楓夏を見て少し不思議な感じがして、僕はくすっと笑った。

「じゃあ、明日、桜瞭中高の2Aの教室に8時集合な!2週間、学校に泊まるから、忘れ物すんなよ!もちろん寝坊もな!」カラッと笑って剛は左の路地に入っていった。

「ピピー....ピピー....ピピー....」

目覚ましの音で目が覚める。

一人暮らしの俺には目覚ましは必須だ。

顔を洗って着替えて昨日の夜の余りをチンして食べる。

「うん、まずい」と呟きながらも「ごちそうさまでした」と箸を置く。

リビングの時計を見る。

7:30。慌ててスマホやら財布やら着替えやら泊まりグッズ一式をリュックに詰め込んで、家を出る。

そのまま自転車を飛ばして、桜瞭中学・高等学校敷地とかかれた看板を横目に正門に到着する。

腕時計は7:50。自転車置き場に自転車を置いて、構内地図を頼りに2Aの教室に向かう。

校舎はまったくと言っていいほど、変わってなくて、なんだか拍子抜けする。

あの枝垂桜は、気持ち良さそうに風に揺られながら昔と変わらず凛と立っている。

「ガラガラ〜」2Aのドアを開けると既にほとんど集まっていた。

由実が僕を見て「こっちこっち」と手招きする。

「ギリギリじゃん~」と楓夏が煽ってくるのを軽く無視して

「剛は?」と聞く。

「司会やるって言って、さっきから隣の教室で台本覚えてる」晴紀が少し笑いながら言った。

晴紀がそう言い終わらないうちに、

突然、「ギャー」とつんざくような声が聞こえた。

「隣の教室からだ!」晴紀がそう言って教室を飛び出した。

ぼくもそれに続いた。

隣の教室に入ると剛がいた。

剛の肩は少し震えているように見えた。

「どうした?」そう聞かれた剛の横顔は強ばっていた。

「彰、、、」剛がいまにも消え入りそうな声でぼくの名前を呼んだ。

剛はそのあとに続けてなにかを言っていたが、僕の耳には届かなかった。

芝崎先生が倒れていた。

ナイフが胸に刺さってコートの左胸部分がほんのり赤く染まっていた。

「もう死んでるね」晴紀は先生の首筋に手を当てながら、淡々と言った。

横たわる先生の前には一枚の紙が置かれていた。

紙にはタイピングしたであろうと思われる文字で

「終わらないと永遠の違いについて」

こうかかれていた。


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