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#17 二重の遺物

同窓会が始まって、八日目。


僕は命を狙われた恐怖を理性で凍らせ、2Bへ足を踏み入れた。


この部屋こそが、剛を陥れた「きれい好きで周到な実行犯」が、最初にその手を下し、証拠を偽装した場所だ。


目視できる痕跡は残っていなかったが、僕の目的は犯人が残した「行動の違和感」を探すことだった。


芝崎先生の遺体が入っていたのは、剛の偽トランクだった。

犯人は、剛のトランクを偽装した。

この事実は、実行犯が、剛という存在を最初から利用しようとしたことの証明だ。


剛にすべての罪を被せるという明確な悪意と、遺体を移動させ、トランクを置き、そしてそれをきれいに拭き取るという周到さ。この冷酷な論理といとも簡単にクラスに溶け込める性質を併せ持つ人物が、盗聴器を仕掛けた容疑者リストの中にいるのだ。


僕は、ポケットの中のレコーダーを握りしめた。

先生の事件の鍵は、遺体ではなく、先生の最後の言葉にある。


レコーダーには、先生が「あの子」の復讐を止めようとしていたこと、そして、湊先輩が先生に「止めてください」と懇願していたことが録音されていた。

先生は約束を守るはずだった。それなのに、先生は「あの子」に殺された。


「なぜ、止めようとしたのに殺された?」


それは、先生の行動が、実行犯の復讐計画にとって邪魔だったからだ。


しかし、僕の心を最も揺さぶるのは、その違和感の先だ。

先生は殺されたにもかかわらず、なぜ「終わらない」と「永遠」の違いについてなんて、哲学的なメッセージをわざわざ残したのか?


先生は、殺意を向けられても、その行動の意味を生徒たちに、あるいは「あの子」に、問いかけようとしたのではないか。

僕にはそう思えて、仕方なかった。


その時、僕は、先生の遺体を一度見せてから消したという行動の裏にある、実行犯の論理と先生の最後の意図が複雑に絡み合った構造を理解した。


犯人は、 剛に罪を被せるため、遺体を見せてから、隠すという大胆さと並行して、剛の殺害用のための証拠の偽装を同時に行った。

つまり、剛に一度、発見させた後、剛を疑わせて、剛の所持物に隠す。こうすることで、先生の陰に、常に剛がいることになる。


剛を陥れるためなら、教師の遺体でさえ、躊躇なく利用する冷酷な論理だ。


だが、先生は、 殺される直前、あるいは殺害された直後に、何らかの形でメッセージを残すことに成功した。そのメッセージに気づかせるため、あえて遺体の存在を最初に目撃させる必要があった。

だから、先生はそのまま、動かなかったんだ。「あの子」を止めることをしなかったんだ。


先生の真意と実行犯の冷酷な悪意。

この二つが交錯した場所こそが、2Bであり、先生の遺体が収められたトランクなのだ。


この周到さと冷酷さこそが、盗聴器を仕掛けた実行犯を特定する最大のヒントだ。

剛は利用されるべく、利用され、先生は殺されることをわかったうえで、僕らに、遺したのだ。


「あの子」を止めるための、最後の希望とメッセージを。


「終わらない」と「永遠」の違いについて。


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