#14 小さな過信と大きな代償
僕は職員室の扉を背後に、凍える廊下を進んだ。
6日目の午前2時、僕の脳裏を支配するのは、親友の潔白を証明するただ一つの論理だ。
視聴覚室に潜入し、篤彦のトランクから剛の重い五冊の本を見つけ出したとき、僕の推理が正しかったという確信が、冷たい安堵をもたらした。
だが、同時に、本の中に犯人の証拠を見つけられなかった失望が、胸の奥で重く澱む。
楓夏のトランクも調べたが、そこにあったのは、ただの日常と剛を陥れた犯人とは結びつかない彼女らしさだけだった。
「どこだ、手がかりは…」
僕の焦燥をよそに、職員室で待つ剛は、トランクの発見にすべてを賭けていた。
「俺のトランク」を見つけることで、クラスの憎悪が消え去ると信じていた。その純粋な希望が、僕の心を突き刺す。僕は彼を信じさせることで、この閉鎖的な世界から守らなければならない義務を感じていた。
6日目の日中、剛の「潔白の証明」への焦燥はピークに達していた。
「彰、トランクのすり替えがわかれば、みんな俺を信じてくれる!お願いだ、もう一度、探そう!」
僕の疲弊とは裏腹に、剛の瞳は希望に満ちていた。その必死な願いを拒否することは、僕にはできなかった。僕たちは一日を費やし、校舎の隅々まで捜索を続けた。
そして、6日目の夜中。僕たちはついに体育館倉庫の奥で、剛のぼろいトランクを発見した。
剛は涙ぐみ、そのトランクにしがみついた。
「今すぐ運んで、みんなに見せるんだ!」
僕は剛の衝動的な行動を恐れた。
「理性を保て、百聞は一見に如かず、人は実際に見たものを信用するんだ、そうそう変わらないぞ」
僕は必死に諭した。
僕は、剛のトランクを倉庫に残したまま、職員室へ、剛を連れ戻した。
僕は精神的な疲労に耐えきれず、剛より先に寝た。
親友の横で眠りに落ちる瞬間、「これで大丈夫だ」と、欺瞞と希望が混じった最後の安心を抱いた。
僕の眠りを、夜明け前の静寂を切り裂く広人の悲鳴が打ち砕いた。
心臓が跳ね上がり、呼吸が止まる。僕は飛び起きた。隣には誰もいない。
剛がいないという絶対的な事実が、僕を奈落の底に突き落とした。
職員室は静寂のままだ。
剛は、僕が寝ている間に、僕の言葉を裏切って、一人でトランクを運びに行ったのだ。
僕は広人の叫び声の方向へ、自己嫌悪と恐怖に駆られて走った。
体育館倉庫前に雄吾と迅の死体と同じ状態で、剛の遺体が横たわっていた。
「守れなかった……」
僕の視界は歪み、呼吸は喉で詰まった。
剛は、潔白を証明しようとしたその場所で、剛を陥れた犯人に殺されたのだ。
剛のそばに置かれた偽りの遺書を、僕は震える手で拾い上げた。
「自分が芝崎先生を殺しました、ごめんなさい。それがばれそうになって晴紀もころしました、トランクもすり替えようと思ったけど、もう罪を重ねるのはやめます」
クラス全員は、この偽装された遺書とトランクの事実で、剛がすべての犯人であると信じ込んだ。
僕は職員室に戻り、壁に背を預け、ただ泣いた。親友を二人、失った。
僕の論理も、僕の誓いも、すべてが無力だった。僕は自分の無能さを軽蔑した。
しかし、僕にはまだ、レコーダーの会話とトランクの事実から遺書が嘘であるという揺るぎない確信が残っていた。
「あと一週間。この一週間で、必ず真犯人を見つけ出す」
僕は、親友たちの死を無駄にしないため、自らにそう誓いを立てた。




