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#13 新たな事実と埋もれた事実

 僕と剛が職員室に囚われて、数時間、窓の外は朝の光に満ちていたが、僕たちの心は暗いままだった。


 職員室の重厚なドアは僕たちを外の憎悪から守ってはいるが、同時に逃げ場のない檻の側面もあった。


 剛は隅に座り込み、壁を凝視している。剛の体の震えが、部屋の緊張感を増幅させていた。


「彰、どうして…由実や楓夏は僕たちについて来てくれなかったんだ?」


 剛の問いは、僕の心を突いた。剛のことを考えれば、由実や楓夏がいてくれたほうがより心強かっただろう。


 僕は冷静に返した。「親友だからこそ、彼らを巻き込めない。それよりも今は、潔白を証明するための手立てを考えよう」


 僕はあてもなく、職員室の棚や引き出しを物色し始めた。


 古びたスチールロッカーの奥から、黒いデジタルレコーダーを僕は、見つけた。

それは丁寧に、教員用の出席簿の下に隠されていた。


 僕はレコーダーの再生ボタンに触れたとき、指先にわずかな違和感を覚えた。

 ボタンの表面が、赤くさびついている。血のようだった。


「誰かが、これの存在を知っていたのか?しかも、万が一のために記録を残していたのか…でも、だとしたら、なんのために.....」と僕は呟いた。


僕は覚悟を決め、再生ボタンを押した。


断片的な会話が、静寂を切り裂いた。それは、芝崎先生と知らない男の人の声だった。


「湊君、私は知っているつもりです。君が何も言わずに、耐えている理由を。でもなぜ、親の報いを君が受ける必要があるんですか?このままでは本当に死んでしまいますよ…」


「…先生。」


「それに『あの子』はきっと君を助けられない。それはきっと心を蝕む。『あの子』は、意志が固いんですよ、湊君が思っているよりもずっとね」


「....じゃあ、もし僕が死んだら、それとなく、間接的に伝え続けてください。『Start from scratch』と。そして、もし、『あの子』が引けないとこまできたら、従うふりをして、止めてください。『あの子』は一度、決めたら、変えませんからね。」


「わかりましたよ、湊君、僕からはもう、君になにもいいません、教師として失格ですが。もし、君が死んだとしても、君との約束は守りますよ」


「先生.....ありがと」


会話はそこで途絶えた。僕の頭の中で、全てのピースが激しく動き出した。


録音が途切れた後、僕はすぐにその声の主が誰であったか理解した。


「今の声は…湊先輩と、芝崎先生だ」


湊先輩は、親の罪を被っていた。 芝崎先生はそれを知っていた。 「あの子」の暴走を止める約束。そして、レコーダーの再生ボタンにある血のような錆。


わからないことは多かったが、僕は証拠となるレコーダーを、すぐに自分の上着のポケットにしまった。


その時、隅にいた剛が、突然、ポツリと口を開いた。


「…彰。視聴覚室の俺のトランクだけどさ、俺がいつも使ってるやつより、少し新しい気がしたんだ。それに、俺のトランクには、すごい重い本を5冊入れてたんだけど、それもトランクと一緒に消えてたんだ...」


「トランクのすり替え!」 


 盲点だった。遺体の移動ではなく、トランクの移動か.....


「とすると、剛の本物のトランクはどこにあるんだ?」


僕はふと、別のことが気になって、剛に聞いた。


「剛、その5冊の本は運ぼうと思ったら、剛のトランクに入れてても、時間かかるのか?」


「うん、すっげえ、重いから、運ぶのも一苦労だと思う」


僕は考えた。

「とすると、犯人は剛の5冊の本と剛のトランクを別にしたはずだ。そして本は重いから、近くに隠すはずだ。」


信次の昨日の話をふと思い出した。


「たしか、篤彦のトランクのそばに、楓夏がいたって言ってたな....」


「よし、篤彦のトランクを夜に調べに行ってみよう。」


僕は、剛に言った。

「剛。今夜、僕は職員室を出る。篤彦のトランクを調べる。トランクの中に、犯人の手がかりがあるかもしれない」


剛は怯えながらも、僕を信じてくれた。僕は、剛に職員室に留まるよう指示した。剛は、僕がいない間、万一誰かが職員室に来ても僕が戻るまで隠れているように言った。


「必ず戻ってくる」

僕はそう、剛に言い聞かせた。


深夜、校舎全体が深い闇に沈む中、職員室の外の廊下は静寂に包まれていた。階段に見張りはいない。


僕は職員室のドアを音を立てずに開け、廊下へ滑り出した。

4階の廊下は冷え切っており、僕の心臓の鼓動だけがやけに大きく響く。


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