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#12 閉じた空間と開かれた道

四日目の夜、生徒たちが眠る3A教室は重い静寂に包まれていた。

聖羅が指揮する監視体制は厳しく、見張りは3A教室の入り口と廊下にたっていた。


剛は孤立し、僕の布団の横で小さくうずくまっていた。

僕は眠らず、廊下を行き交う監視役たちと、夜中に動く生徒たちの影を観察していた。


深夜、まず、楓夏が「お洗面いく~」と言って、トイレに向かい、その直後に、詩歩が「2Aにハンカチを忘れちゃって、取りに行ってもいい?」と言って、監視役の愛花梨を伴って2階へ降りていった。


楓夏は10分、詩歩と愛花梨は15分ほどで戻ってきた。


そして、そこから1時間はドアをあける音すらしなかった。


そのうち、剛が「トイレ...」と言って、教室を出て、10分ほどで戻ってきた。


咲哉は「視聴覚室のトランクのマンガを取りに行ってくる」と言って、監視役の信次と7分ほどで戻った。


咲哉が帰ってきたちょうどそのあと程に、由実が廊下の監視役を愛花梨と交代した、聖羅に声をかけた。


「聖羅、ごめんね。食料のチェックリストと実在庫が合っているか、もう一度確認したいの。特に4階の家庭科室に置いてある備蓄品が心配だわ。この不安を抱えたままじゃ、クラス全員の士気に関わるから」と由実は、言って、聖羅を伴って、20分ほど、いなくなった。



由実たちが帰ってきた、その少し後、零が「汗をかいたから着替えさせて....」と言って廊下を足早に横切り、15分ほどで、3Bに戻っていった。


僕は疲れてきて、ウトウトしていると、廊下の片隅で、監視役の信次が、隣の篤彦に顔を寄せ、小さな声で囁いていた。


「なあ、篤彦。お前のトランクの周りを、昨日の夜中に楓夏がウロウロしてたぞ。何をコソコソ探してたんだ?」


篤彦は「楓夏が?まさか」と、可笑しそうに、言った。


僕は、耐えられなくなり、深い眠りのいざないに、身を任せた。


夜が明け、五日目の朝日が僕らを、和かに、迎える。


朝食の配給のため、信次と篤彦が家庭科室へ向かった。


数分後、信次ではなく、篤彦の絶叫が再び校舎を震撼させた。


「な、なな、なんなんだよ、これは、くそがあ」


みんなが駆けつけると、そこにはなぜか、剛のトランクがおいてあり、中に芝崎先生が入っていた。


「違う!違うよ!俺じゃない!なんで、なんで俺のトランクの中に!」と剛は言うが、


「芝崎先生の遺体だ。剛のトランクの中から見つかった」


 これがみんなが実際に、目の当たりにした光景であり、剛がなにを言おうと、もはや意味をなさなかった。


 クラスの目は憎悪と狂気に満ちていた。


 僕は、剛とクラスメイトたちの間に立ち、両手を広げた。


「待って」

  僕の声は、僕自身が驚くほど静かで、それは水面にさざ波が立つように、響き渡った。


「剛を疑うのも無理はない。でも僕は剛が犯人ではないと思う」

 僕は冷静に続けた。


「根拠はない。でも剛は、僕の大事な親友だ。僕らは今日から、4階の職員室で生活するよ、そのほうがみんなも安心するだろうし。」


「僕が剛のすべての責任を負う。もし剛が何かをすれば、それは僕がやったということだ」


僕は強く、そして冷静に言った。


剛を隔離するという僕の提案は、クラスに安堵を与えた。


由実と楓夏が、僕に言った。


「彰、剛を疑いたくはないけど、剛が本当に犯人だったら、どうするの?私たちも一緒に行くわ」由実が言う。


「二人だけじゃ危険すぎるよ、彰、うちらも親友でしょ?」と楓夏も同調する。


僕は首を横に振った。


「ありがとう。でも、いらない。みんなから恨まれるのは、僕一人で十分だ。二人とも剛と同じように、僕らの親友だからこそ、ついてこないでくれ」


僕は剛の腕を強く引き、剛を支えながら、僕たちを犯人だと断定したクラスの憎悪と安堵の視線を浴びつつ、職員室のある4階へと続く階段を上っていった。

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