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エンドNO.33 踊ってない夜を知らない

独特の踊りと共に攻撃を繰り出すカーミエちゃん。その音楽とともに動く剣には、僕もテンポを狂わされる。音楽は耳から入ってくるし、独特のリズムがあるからね。自分なりの戦いのテンポを持っている身としては、どうしても耳からはいてくるリズムとのギャップで乱されてしまうんだよ。


逆に、カーミエちゃんは令嬢としてダンスも仕込まれているのか、音楽に完璧に動きがあっている。いつもとテンポは違うけど、それでも動きに狂いはない。

この状況になれば僕も追い詰められて、


「っ!?何かな、その動きは!?」


追い詰められて、今まで見せてこなかった動きをすることになる。

僕がテンポを狂わされるのは、僕の剣術がある程度固まっていて自分なりのテンポを持ってしまっているから。なら、リズムを持たない動きをすれば音楽の影響は最低限で済むんだよ。

さすがに攻撃を剣で防ぐくらいはするけど、攻撃は剣ではあまり行わず、自分の体を使うことにする。

振るわれた剣を受け流したらその僕が剣を持つ手と反対の手でカーミエちゃんの剣を握っている方の腕をつかみ、


「な、投げ!?いつの間に体術を!?」


投げる。

この動き、まだ練習中なんだけどマズいと思ったから使わせてもらったよ。この技術を使っている格闘家の人から盗んだものなんだけど、意外と強い動きなんだよね。

格闘家の人は武器を持っていなかったから僕よりももっと間合いの管理を正確にやってたけど、そこは僕の場合管理しなくても剣で防いだり受け流したりできるから技術的な穴埋めはできる。


そして若干荒くはあるんだけど、ある意味カーミエちゃんにとってもなれない剣とダンスの融合という部分を突くことで、普段なら厳しかったかもしれない投げというものを成立させる。

正直言って難しいかと思っていたんだけど、意外とうまく言ったね。きれいに地面に転がってくれたよ。


「まさかそんなものを仕込んでいるとはね…………でも、まだまだダンスはこれからさ」


カーミエちゃんは一度投げられただけでは終わってくれないらしい。また立ち上がって僕へと切りかかってくる。

それをまた投げ、転がし、受け続けたら目が回るんじゃないかという状態にまで追い込んでいく。

ただでさえダンスでもくるくる回っているのに、投げられる時も回るんだからカーミエちゃんは今日だけで何回転しただろうね?


そんな風な戦い方を僕はしているわけだけど、幸いなことに、


「なるほど。あれが1番弟子ですか」

「投げられるあの子はまるで踊らされているかのよう。なかなか趣のあることをするのね」

「優雅さだけでなく、剣を使わずとも勝てるというところを見せたわけだな。なかなか傲慢なことだ」


参加者からの反応は悪くない。僕は踊れていないけど、カーミエちゃんが舞ってくれているからそれで許してもらえているっぽいね。そいうことならもっといっぱい舞ってもらわないと(他人任せ)。

なんて思いながらポンポン投げていると、


「素敵なダンスですわね。私も混ぜていただいてよろしくて」


「ハハハッ。もちろん構わないよ?今日は楽しい日だからね。みんなで踊るのも悪くない」


乱入者が現れた。しかも、僕の背後から切りかかる形で。

言葉は丁寧そうだけど、容赦なく背後から襲ってくるあたりがなかなか怖いね。もちろん警戒していないわけではなかったから対処出来たけど、かなりひやひやしたよ。

特に個人的に考えなきゃいけなかったのが、乱入者の格好だね。


乱入者は話し方からだいたい推測できると思うけど、エタノちゃんなんだよ。

カーミエちゃんは割とスポーティな感じだからズボンを履いているんだけど、エタノちゃんはスカート。おかげで、僕はそのことも考えて動かなきゃいけないというわけ。

スカートの中とか見えたら大変だからね。貴族の令嬢に恥と書かせるわけにはいかないし。投げ方にかなり気を遣うから、スカートはやめてほしかったなぁ…………なんて思っていたら、


「とぉ!」


「っ!?」


1番スカートとか履かせて運動させちゃいけない子が追加された。

アエリュちゃんも何故か今回参加していたみたいだね。さすがに予想してなかったから、一瞬反応が遅れちゃったよ。

ただアエリュちゃんが普段はしないような格好をしているからさすがにいつも通りの動きを完璧に出すことはできない。

そのちょっとのずれが僕を救ってくれて、


「おわぁ!?…………すご~い!クルクルってした!楽しい!」


何とか投げることができたね。正直アエリュちゃんに関しては投げるよりも剣で戦った方が良いと思うんだけど、ここまで投げで来たんだからこうなりゃ自棄だよ。最後まで全員投げ飛ばしてやるんだから!


なんていうことをやって、充分に目立った僕。

それはそれは注目されて人が集まりかけたんだけど、


「ふぅ。さすがに適応力があるね。まさかこれでも勝てないとは」

「3人でいって一度も当てられないなど、どうなっておりますの」

「パパ!楽しかった!!」


最後の最後。

アエリュちゃんが放った言葉によって周囲がざわつく。


「え?パパ?」

「子供じゃないのか?」

「1番弟子としか聞いていないから、確かに子供ではない可能性もあるのか?ドワーフとかエルフとか?」

「そ、それは予想外でしたね」


これのお陰で周囲からの注目が若干ではあるけど薄れた。

僕はそれを利用して気配を消し、アエリュちゃんを回収しつつ逃げていく。


「あっ、どさくさに紛れて逃げた!?」

「判断が速すぎませんこと!?もしかして、最初からこれを狙ってまして!?」


今度は仮面も外して位置を特定されないようにした。もちろんアエリュちゃんの仮面もとっておいたよ。

きっと僕だけで逃げてもアエリュちゃんが囲まれただろうから、アエリュちゃんも回収したんだけど判断は間違ってなかったよね?

ここまでして良いものかは分からないけど、アエリュちゃんとパーティー会場とは完全に別の場所でゆっくりさせてもらうとしよう。

昨日とは違って人の注目は集めたんだから、許してほしいところだね。目的は果たせたと思って欲しいかな。


「パパ!見て!夜なのにお外が明るいよ!」


「そうだね。明るすぎて星が見えない。これが都会かぁ」


「ほぇ?明るいとお星さま見えないの?」


僕たちは適当に雑談をしつつパーティーの時間を過ごしていく。

なお、途中でアエリュちゃんがお手洗いに行きたいと言ってきた時には焦ったね。あのドレスの状態でどうすればいいのかとか僕にはさっぱり分からないし。

泣く泣く近くにいたメイドさんに頼んだんだけど、僕たちの情報はその人から漏れることはなかったから安心。きっと僕たちのことは把握していると思うんだけど、なんで他の人に伝えなかったのかは謎だよ。

僕たちとしてはありがたいから構わないんだけどさ。


そうしていると割とすぐにパーティーは終わり始めて、人が帰り出す。

結局今回のメインは僕たちのやった剣での戦いってことだったんだろうね。それが終わってしまったわけだし、帰る人が出始めるのも理解できるよ。


「ばいば~い!」


アエリュちゃんは僕の隣でそうした帰る人たちに手を振っている。目立つからやめてほしいんだけど、アエリュちゃんも完全に善意でやってるから止めようにも止められないよ。多分、タスミさんの教育的にも挨拶はしっかりとみたいなことを身につけさせようとしているわけだし。

ここで僕が変なことを言ってよその子の教育に影響を与えたりとかできないんだよな~。


いや、将来的にはよその子じゃなくなるようにするつもりではあるんだけどね?

タスミさんと僕が結婚すればアエリュちゃんは娘になるわけだし。そう考えれば、今のうちに教育的な部分に影響が出ることをしても問題はない?

なんてふざけたことを考えていると、


「いたぞ!」

「周りこめ!」


おっと。アエリュちゃんのせいかは分からないけど、発見されてしまったよ。僕たちを捕えようとして動いているみたいだし、ここに留まっていると危なそうだね。

そういうことなら、


「じゃあ、少し飛び降りるから僕の事をしっかりと握っててね」


「うん!」


逃げさせてもらう。

丁度ぼくたちは2階にいたから、下に飛び降りれば距離が稼げるんだよね。

ここで相手も本気で追い込むつもりなら下にも人を配置しているんだろうけど、さすがに僕たちが子供だからかそこまではしていない。ということで、せっかく用意してくれた逃げ道だし使わせてもらうよ。


「あばよ、とっつぁん……なんてね」


「きゃぁ~~。フワッてした!!楽しい!!」


アエリュちゃんも楽しんでるし、問題はなさそうだね。

さてさて。これからどこに逃げようかな?

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