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エンドNO.28 気づけない幸せ

「カーミエ嬢。あなたに、勝負を仕掛けますわ!明日、今度こそ勝ってみせますの」


「またかい?かまわないけど、今客人がいることを忘れないでいてくれると助かるな」


エタノちゃんは僕との特訓を行なった後、カーミエちゃんの元まで言ってたたきのための予約を取った。僕たちがいるためその対応もしなければならないから面倒そうにはしているけど、それでも受けはするみたい。貴族のプライドとかの問題で断ることはできないのかな?もしそうなら、やっぱり貴族って面倒くさいね。


反応から考えると、カーミエちゃんがエタノちゃんから戦いを挑まれることは初めてではないっぽい?もしかしたら、若干迷惑にすら感じているのかもしれないね。カーミエちゃんは割と判断基準が明確で、自分が強いと思う相手には優しいし戦うことがない人間にも比較的寛容だけど、自分より弱い相手にはドライなのかもね。

ほとんどの人の場合今の年齢のカーミエちゃんに勝てないってことは才能がないのと同義だからそれはそれでいいのかもしれないけど、同い年くらいの子にまでそれを押し付けるのはちょっとどうかと思うんだよね。


「ただ、その性格のお陰で間違いなく油断してくれるはず。これは良い物が視れるかもしれないね」


勝率は1割あれば良い方だけど、それはまたカーミエちゃんの本気度合いによっても変わってくる。もしどうでもいいことを考えたりすることで油断しまくれば、勝率を3割くらいまで上げることは可能かもしれない。

あえて下手な演技をすることでさらなる油断を誘い、隙を見て必殺の一撃を入れるとかいう技を仕込んでも面白かったかもしれないね。


「またエタノ嬢か。あの子も懲りないな」

「公爵様も困っていらっしゃるだろうな。せめて剣術ではなく他の分野に手を出していれば違ったのだろうが」

「どうしてあの人に弟子入りしているカーミエ嬢に相手にしてもらえると考えているのやら。不思議でなりませんな」


聴いてみる限り、貴族たちも呆れている様子。周りからエタノちゃんが馬鹿にされていることは間違いなさそうだね。さっきの練習相手になっている間は、意外と悪くないと思ったんだけど。

さすがにカーミエちゃんに勝てるとは思わないけど、基礎はある程度シッカリしていたし、それと共に独自の剣術をエタノちゃんはエタノちゃんなりに習得していた。恐らくエタノちゃんの実家の騎士か何かに習ったものだと思うんだけど、僕たちが先生から教えてもらっているものよりもかなり防御に特化していそうな剣術だったんだよね。

最近はアエリュちゃんやカーミエちゃんの攻撃もどんどん防ぎづらく避けづらくなってきていたから、個人的にはかなり参考になる部分も多かったよ。


だから、個人的には明日の戦いはかなり楽しみにしている。カーミエちゃんの驚くところを見ることができるのはもちろん、それにカーミエちゃんがどう対処していくのかも見極めたいよね。咄嗟に出す行動というのもまた、参考にできる部分は多いだろうから。それが良い物でも悪い物でも、ね。


「ふむ。カーミエも自分の幸せに気づいていないな」


「ん?どういうことですか、先生」


「っ!!!?????」


エタノちゃんがいなくなって話し相手もいなくなたつぃ隠れている先生の元まで行ってみるかと思ったら、独り言が聞こえてきた。だからそれに応えてみたんだけど、僕の存在に気づいていなかったのか非常に驚かれたね。

今は大丈夫だけど、これで少しでも僕の方に攻撃の意思があるとすぐに気づくんだよねぇ。先生の勘の鋭さも一長一短があるんだよね~。


「あんまり集中を乱すと、周囲に溶け込めませんよ?」


「エサカ~。言ってくれるじゃないか。ずいぶんと生意気になったものだ…………それで、私の言葉の意味だったか?それなら、簡単なことだ。私のようにある程度まで実力が突出し始めると、本気で挑もうという相手はなかなかいなくなってしまうのだ。特に、その1回1回で全力の私に勝とうとする相手はこの数年間会っていない。だからこそ、強くなる間に自分に挑み続けてくれる相手がいるというのは心の支えにもなるだろう」


「へぇ~。じゃあ、あんまりカーミエもエタノ様を適当に扱っていると痛い目を見かねないということですか?」


「うむ。そうだな。失って初めてその大切さに気付くことになるだろう。それこそ、居なくなってから時間が経つごとに後悔が大きくなっていくだろうな」


「ふぅ~ん…………でも、そういうことなら大丈夫なのではないでしょうか。心配はいらないと思いますよ」


「ほぅ?なぜだ?」


先生の話は何となく分かる。あまりにも絶対的過ぎたり他と差がありすぎたりする力を持つと、皆勝てないと思っちゃって本気で勝とうとすることはなくなっちゃうんだよね。僕だって、次に戦ったときに本気の先生に勝てるというイメージが一切わかないから、そうなってしまう周囲の気持ちも分かる。

だからこそ、そうして諦めない相手がいてくれることの重要性もね。鬱陶しく感じるかもしれないけど、それに負けていられないという気持ちもまた頑張るモチベーションの1つにはなると思うんだよね。


だからこそ先生は今のカーミエちゃんの態度はあまりよくないと考えているようだけど、僕はそれにニヤリと笑ってみせる。

それだけで先生は何かを察したようで、


「ふむ。面白そうだ。私も明日の試合、見せてもらうこととしよう」


その後しばらくするとパーティーは終わりを迎え、少しずつ人が減り始める。僕はその間ずっとその人達の事を見守る護衛の人達の観察をしながらジッと潜んでいたんだけど、


「あっ!あれは!」

「あの方がいるというのは、正しい情報だったのか」

「この距離で見ることができたのは初めてですね」


「ふふふっ。油断しましたね、先生。最後の最後ではありますが見つけましたよ」

「くぅ。私としたことが。ぬかったか」


先生は発見されてしまった。どうやら油断して人と軽くぶつかってしまったらしく、それでバレてしまったらしい。

それに合わせて貴族の人たちが少しざわめき出すとともにどこからか聞いたらしい弟子の僕のことも探し始めたけど、僕は油断せずに隠れ続けて何とかしのいだよ。結構ドキドキしたけど、隠密能力向上のいい特訓になったかもね。


さてさて。それじゃあ明日の試合を楽しみに今日はもう寝るとしようかな。さすがに馬車の旅に疲れちゃったんだよね~。公爵家だしベッドもお風呂もいいものがそろっているだろうから、しっかり休みを取れるでしょう。楽しみだな~、











「エタノよ。お前はパーティー中一体何をしていたのだ?」


「申し訳ありませんお父様。剣の修行をしておりました」


「お前はもう少し貴族として、」

「あの方の弟子と名乗る者にカーミエ嬢対策を教わっていましたの。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんわ」


「…………ん?」


「そこで聞いたことを利用して明日こそは勝利をと思っていたのですが…………いくら何でも平民の言うことを信じるのは駄目ですわよね。私がおろかでしたわ」


「い、いや。かまわないとも、それは明日確かめればいいだろう。お前の好きにしなさい」


「っ!?ほ、本当ですの!?寛大なお言葉に感謝いたしますわ!お父様!」


「う、うむ(その平民、あの人の1番弟子なのでは?パーティーにいないと思ったら我が娘と???)」

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