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エンドNO.26 こんなパーティー抜け出して

「さて。それでは皆グラスを持ってくれ…………乾杯」


「「「「乾杯」」」」


まさかの貴族様のパーティーで最初にやることが簡保間とは思わなかったけど、こうしてパーティーはついに始まった。個室に移動してからそこまで時間が経たないうちに声をかけられて会場に戻ってみたら、もうかなりの人数集まっていたんだよね。

だから、開始まではあんまり時間がかからなかったね。

乾杯の音頭を取った公爵さんも話は特に長くなかったし、すんなり聞けたよ。やっぱり、雑談は別として基本的に話は簡潔にするに限るよね。


こうしてパーティーは始まったけど、今のところ僕たちに何かしようという動きはない。誰も僕や先生に接近しようとはしていないね。まだ何もしていないのか、それとも今の僕たちの警戒心を緩和させるためにあえて何もしないのか。

ただ、どうなるとしても油断するつもりはないよ。最初から計画通り、全力で行かせてもらう。


「あそこなら全員の視線を切れそう」


周囲も乾杯をして少しずつ動き出したから、まずは人が多く集まっていて紛れやすそうな場所に行く。

そして中に入っていくときに役立つのが。来る途中に観たスリの人達とかの技術だね。あの人たちは物を取った後に人込みに紛れ込み、追って来れないように素早くそこから離れていたから。

さすがに良くも悪くもプロではあるあの人たちと同じ様なレベルの結果は出せないけど、それでも充分周囲に監視している人がいたとしてもその人達の目は潜り抜けられたんじゃないかな?


なんとなく数人が僕の消えたタイミングで動きを変えたからその様子を人ごみに紛れながら観察しつつ、ちょっと待機させてもらう。近くの人達の真似をしてデザートなんかを取って、食べながら周囲が落ち着くのを待とうかな。


あと、そうして待っていると周囲の話なんかも聞こえてくる。

まだ中身を完璧に理解できたわけではないけど、


「見かけましたか」

「いえ。見かけておりませんね。あなたがたはどうですか?」

「うぅん。最初にそれらしき2人はいたのですが、その後は追いきれませんでしたな。一度奥に引き返されてしまいましたので」

「あら。そうなんですか」


もしかして僕たちの事かな?という程度の事を話している。もうちょっと情報を落としてくれないと完璧な把握はできないけど、ここで声をかけるのも不自然だから自分から情報を取りに行くのは難しいね。

礼儀作法とかを学んでいたらこういう時に不審がられず話かけられる方法を会得できていたかもしれないけど、さすがにそこまで手を出している余裕はなかったからな~。とりあえず、観察してどういうマナーがあるのかなんとなく把握だけはしておくことにしよう。


とか、そういうことを色々とやっているとだんだんと人の動きが活発になるタイミングが増えてきて、


「ここならいけそう」


丁度近くの人達が動き出すのを見かけたため、僕も一緒に行動を開始する。

ある程度監視の目は逃れられているはずだからあとは再発見されないようにできるだけ気配を消していく。こういう時に、今まで学習した技術が光るんだよね。

実は先生もいくつか僕からパクった技術があって、その中に気配を消すものもあったんだよね。先生も僕と同じように気配を消して行動しているんじゃないかな?


ただ、僕の気配を消す能力は先生のものと比べても練度が違う。こっちだって伊達に人から技術を盗んでいないんだよ。先生に尋ねられて基本的な部分を教えはしたけど、細かいテクニックの知識量も練習量も段違いなんだから。

…………とはえい、実際に人から隠れる目的で使うのなんてほとんどこれが初めてだったりするんだけどね?


「ふぅ。夜風が気持ち良い」


気配を消した僕は、そのまま部屋とつながっているっぽい中庭へと抜け出した。パーティーがあるとは言われたけどどこまでがパーティー会場かなんて教えられてないし、行けるように会ってたからそこもパーティー会場だと思ってしまっても仕方がないよね。うん。

このまま1人中庭を散策させてもらって、パーティーが終わりそうになるまで時間をつぶしましょうか。


なんて思っていたんだけど、僕の耳にはどこからかヒュンヒュンという風を切る良い音が聞こえてくる。どうやら、先客がいたっぽいかな?

なんとなく聴き覚えがあるような気もするその音に惹かれて近づいてみると、


「…………やっぱり、剣を振ってる」


「っ!?誰ですの!?」


剣を振る人、というか、子供がいた。そしてその周囲には、護衛らしき人った値が。

別に気配を消しながら近づいたわけではないから護衛の人達は気づいていたようだけど、剣を振っていた子はそっちに集中していて人の気配なんて感じられなかったみたい。


とりあえずものすごく警戒されてるっぽいから落ち着かせないと。


「あっ、すみません。剣を振る音のようなものが聞こえたので気になって見に来たんです。特に邪魔はしませんのでお気になさらず」


「ふぅん?あなたも私をバカにしに来たんですのね」


おやぁ~?なんか、変な誤解をされてる気がする。もしかしてこれ、闇深い感じのやつかな?言葉だけで考えると、この子は無能だと言われているか何かで馬鹿にされている子、みたいな?

こういうタイプは失敗するとロクに話も聞いてもらえずに僕も敵だと判定しかねないから、気をつけないといけないよね。

何が地雷か分からないし、結構大変そうだなぁ。


「いえ。特にそういうことはないです。私平民なのでお貴族様の事とかよく分からないですし。申し訳ないのですが、あなた様の事も存じておりませんし」


「はぁ?私の事を知らない?それでどうしてこのパーティーに来れまして?ふざけたことをおっしゃいますわね。早く、あなたもカーミエ上の足元にすら及ばない私のことを笑いに来たと言えばいいのに」


うわぁ。ダメだったっぽい。確かに貴族ばっかり集まっているパーティーみたいだし、その中に事情がよく分からない平民が混ざってるなんて考えないよね。

これは、パーティーで僕を紹介するということを拒否した僕側の問題。目立たないようにと考えた結果、こんなところで問題が出てくるとは。何が起きるか分からないものだね。


ただ、幸いなことにまだチャンスありそう。

この子が言っている中で僕でもわかることはあるし、


「カーミエ様、ですか?その口ぶりから考えますと、あなた様もカーミエ様の剣術の腕に危機感を抱いているということでしょうか?」


「危機感?そんなものでは…………お待ちなさいまし。あなた今、「あなたも」といいまして?」


「ええ。私はカーミエ様と剣術を同じ師の下で学ばせていただいている、所謂同門のものなので。日々カーミエ様の強さには頭を抱えているのです」


「ふぅ~ん?」


おっ!これは良い反応かもしれない!

どうやらこの子、カーミエちゃんに剣術で勝てないことから劣等感を感じているっぽいね。それで周囲からもバカにされているのかな?だからこそ警戒心が強く、さらにこのパーティーの最中にこんな誰もいないところで剣を振っているのにも納得がいくね。

…………いや、本当に完全な納得をしたかと問われると自信を持ってそうだとは言えないけど。


「そういうことでしたら、私に協力させていただけませんか?私は同門なのでカーミエ様の剣術はよく近くで見ていますし、いくつか癖などを見つけているんです」


「あら。興味深いですわね。良いですわ。話を聞いて差し上げましょう…………ただ、嘘だったら承知しませんわよ?」


「もちろんです。嘘なんてつきませんよ。私だってカーミエ様に勝ちたいのですから。少しでも勝つための要素は欲しいのです」

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