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エンドNO.22 貴族

スキルなんて言う新しい存在を知り、将来の計画を大幅に変更しなければならなくなった僕。

スキルがあるならそれを取る前提でゲームは作られているんだろうし、とりあえず知っているスキルとかを教えてもらってその分野を鍛えていかないと。さすがに弓術とかは無理でも、今から始めていくつかはまだ間に合うはず!


ただ、幸いなことにと言っていいのかは分からないけど、僕は今までかなり幅広い技を盗んできた。だから、そういう技術の影響でしっかり練習はしていない分野のスキルも獲得できるんじゃないかという期待をしているんだよね。

ただ、精神的にきつい事実もあって、


「錬金術はスキルとしては存在しないな。たまに勘違いする人間がいるものだが、これは間違いないぞ」


「そうですかぁ。錬金術はどれだけ練習しててもスキルとしての効果は発揮してくれないんですね」


錬金術。最近初めていろんなところに応用も効くありがたい物なんだけど、悲しいことにスキルにはなってくれないらしい。だから、スキルになる物と違って努力していれば必ず報われるわけではないんだって。

スキルならレベルアップしていくけど、スキルではないならどれだけ使ったところで経験値は入らないからね。


ただ先生としてはスキルにならないからと言って捨てるべき技術じゃないという考えのようで、


「錬金術はスキルにはならないが、それでもポーションを自分で作ることができるというのは非常に大きなアドバンテージだぞ。もちろん、ポーション以外もそうだ。武器が壊れそうになった時も最低限の手入れができるし、それこそ土地の状態を変えられるのだから戦いづらい地形も多少動きやすくなるかもしれない。鍛えておいて損はないだろう」


「ですよねぇ。僕もそんなに簡単に捨てようとは思えないです」


スキルになる技術を優先したいという気持ちは間違いない。でも、だからってここでサッパリ錬金術という手札を捨てられるかと問われるとそんなことはないんだよ。錬金術は本当にいろんなところで役立つからね。それこそ戦闘にだって応用できるし、本当に万能で捨てがたいんだよ。


これがもし原作知識のある状態だったら、「原作に無い知識を手に入れた僕、規格外の力で無双する」みたいなことやれたのかもしれないけど、そんなことやってられないからね。本当に勘弁してほしいよ。

なんて思っていると、ここで救いの手が差し伸べられる。それは少しでも無駄を減らしたい僕にとっては非常に魅力的な提案で、


「ボクの家に遊びに来るかい?家ならスキルの辞典のようなものがあったはずだから、それを見せてあげることもできるよ。あれはたしか、重要度はそんなに高くない書物だったはずだからね」


「本当!?」


「もちろんさ。ライバルが強くなるのは、ボクとしても燃えるから」


笑ってみせるカーミエちゃんの顔がめちゃくちゃカッコよく見えたね。もともと美形だからかっこいいのも最初からと言えば最初からなんだけど、やっぱりこんなに素敵なことをされるとキュンとしちゃうよ。

…………本当にちょっとだけだけどね?さすがにまだ子供過ぎて、イケメンは片りんを見せているだけなんだよね。もうちょっと成長してくれないと黄色い悲鳴は上げられないかも。


なんて僕は思って喜んでいたんだけど、それを聞いていた先生は苦笑いをしている。

気になってどうしたのかと尋ねてみれば、


「おそらく、なぜかは分からないが偶然その時にパーティーなど開催されるのだろうな?ついでに、カーミエと仲の良い私の1番弟子としてエサカは紹介されるだろう」


「ほぇ?」


僕は首をかしげる。一体どういうことなのかという気持ちで。

急にそんなこと言われても理解が追い付くわけないよね。

ただ、その後のカーミエちゃんの反応から少しずつ僕も理解し初めて、


「ハハッ。もしかしたらそういうことが起きるかもしれませんね。もちろん、ボクの方も予定がブッキングしないように調整に努力するつもりではありますが」


にっこりと笑うカーミエちゃん。その笑顔と発言からは、何らかの下心があることがはっきりと読み取れた。

そして先ほどの先生の言葉と併せればわかるよね?

つまり僕は、何かしらの政治的材料として使われるということなのではないかな?先生の弟子として紹介されるらしいから、先生の弟子を味方に引き込めたって紹介できることはメリットになるってことだよね?先生って思ったよりすごい人なのかな?


気になるところはあるけど、それはそれとして僕が政治的立場をはっきりさせてしまうのはマズいかもしれない。もし将来的にシナリオで協力関係になるはずだった相手と手を組めなくなるなんて言う展開もあり得てしまうし、僕が政治的な道具としてみなされ始めるとこの村とか家族にまで影響が出かねないんだよ。

一気に僕のやる気は失われちゃった。


「うぅ~ん。スキルの事は知りたいけど、結構それはデメリットが大きそうだねぇ。難しい」


「ハハハッ。先生も余計なことを言ってくれたね。もうちょっとでエサカ君と仲良しだってみんなにアピールできたというのに。まったく、エサカ君は恥ずかしがり屋だな~。」


「いや、そういうことじゃないよね?」


僕はあきれた目を向けるけど、カーミエちゃんはそれを受けてもまたニッコリと笑みを浮かべるだけ。ものすごく胡散臭い匂いがプンプンする表情だよ。

今まではハッキリと理解はさせられてこなかったけど、こういう部分はやっぱり貴族って感じがするね。この年でこれなんだから、貴族の当主とかはいったいどんな化け物なのやら。前世で見かけた化け物連中の影がちらついてどんよりしちゃうよ。


そうして僕がどちらかと言えばいかない寄りの思考をしながら迷っていると、さらにカーミエちゃんは交渉上手な貴族らしい一面を見せつけてきて、


「そんなにみんなの前に出るのが恥ずかしいなら、ボクたちがエサカ君を紹介するというのはなしにしてもいいよ。もしかしたらパーティーには参加することになってしまうかもしれないけど、ボクたちの結びつきを示したりみんなの意図的に注目を集める機会を作ったりということはしないってことにしてもかまわないよ」


「なるほど。結構な譲歩だけど…………裏で何を考えているのやら」


「ハハハッ。エサカ君は疑い深いな~。裏なんて何もないとも。ライバルのことを信用してくれたまえ」


今までのことを考えればどう考えたって信用などできないけど、それを分かっているだろうカーミエはそれでも笑っている。さすがに僕に裏で何を考えているのかは読めないと思っているんだろうね。そしてまた、その譲歩はかなりこちらにとって都合がよく、気持ちが行く方向に傾き始めていることも理解しているのかもしれない。

本当に厄介だね、カーミエちゃん。こういう意味でのライバルにしたくはなかったよ。


「ちなみにパーティーでのドレスコードとかどうなるのかな?」


「もちろんこちらでふさわしい物を用意するよ。恥ずかしがり屋みたいだからあまり派手な物にはしないけど、その場にふさわしい物にさせてもらうつもりさ」


「なるほど?じゃあ、カーミエの実家のお屋敷での服装とかはどうすればいいのかな?そこでもやっぱり僕の普段の服は駄目だよね?」


「もちろんそっちも用意するさ。心配しなくて構わないよ。服だけでなく泊まるところだって食事だって用意しておくとも」


イマイチ信用できないけど、条件は良い。

どんな落とし穴があるのかは分かんらいけど、非常に行きたいねぇ。これは迷うな~。

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