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エンドNO.19 錬金

文字数調整をミスしたのでほんの少しいつもより長め(誤差)です

カーミエちゃんの参加からしばらくして、僕たちが先生に剣を教わり始めてから1年がたった。

相変わらず実力差を思い知らされてはいるんだけど、間違いなく僕は強くなっている。最近は先生に教わって対人戦にも慣れてきたはずの冒険者さん達にだって勝率8割くらいを出せているし、少し前には1対1の状態で先生に一撃入れることに成功した。

お陰で1対1の時も先生はデバフなしで動くようになっちゃったわけだけど、動き自体はすでに見慣れたものだからそこまで精神的ダメージは大きくない。


その後アエリュちゃんも同じように先生に勝っているけど、そんなアエリュちゃんにもまだまだ僕は勝てている。ダキエちゃんやカーミエちゃんが参加しての1対2でも勝率7割から8割くらいを保てているし、充分な成長度合いだとは思うよ。

さすがに1対3になると僕も厳しいけど、まだギリギリ勝率は6割程度。正直この人数を相手するのは無理があると思うんだけど、良い訓練にはなっていると思うよ。というか、そう割り切るしかないよね。


「6割勝てているのだから十分だろう?あの3人も十分強いし、連携もそれなりなのだがな」


「何を言っているんですか、先生。俺でも1番弟子なんですからそれなりに威厳を見せなきゃいけないじゃないですか」


「威厳など保ちたいと思うだけで保てるものではないのだがな」


先生からはあきれた目を向けられるけど、正直3人を相手するときに気合による戦意の向上も大きいよ。明らかに緊張感があるからか普段出さないほどの集中力が発揮されている気もするし。


そんな風な僕だけど、別に毎日剣しか振っていなかったわけではない。

当然冒険者ギルドに行って技を盗んだし、タスミさんのお手伝いだって頑張った。

だから、


「はい。いつもありがとね。これが今日の文のお小遣い」


「わぁ!ありがとうございます!」


「良いのよ。エサカ君たちにもしっかり働いてもらってるからねぇ。お小遣い程度しか払えていないことが逆に申し訳ないというか…………お金はこれくらいしか渡せないけど、もしほしいものがあったら貰えるように村長に提案するわよ?何かあるかしら?」


お小遣いがもらえる。この年齢とこの田舎な村という条件がそろっているのにお金を得られるというのはかなり大きいよ。自分で物を買えるというのは意外と大事なことなんだから。


ただ、僕はお金がもらえて喜んでいるけど、お金を渡すレストランの店主さんは少し申し訳なさそう。そういうなら給料アップをしてくれと思うけど、村の方針で子供へ与えすぎるのは多すぎてもいけない、みたいなものがあるっぽいから仕方がないよね。この人のせいではないし、そこは納得している。

だから、好感度稼ぎを狙いつつ首を横に振っておこうか。


「いえ。大丈夫ですよ。僕として、タスミさんや村のみんなのお手伝いが出来たらいいなと思ってやってるだけなので。アエリュちゃんが何かあったらそのぶんに上乗せしてあげてください。それに、僕は欲しい物もないので…………いや、魔法が使いたいとかはありますけど、そういう話ではないですよね」


最後の付けたしは、一応そういうチャンスを狙えるのであれば狙いたいという下心がちょっとでてしまった結果だね。先生に基本的な魔力の操作は教えてもらったから、それを使った魔法を使いたいという欲が出てしまったんだよ。


ちなみに、魔力の操作は覚えたし毎日かなり練習もしているけど、特に何か応用ができているわけではないよ。まだ身体強化なんていうこともできてないね。先生もそこまでは教えてくれなかったし。

早く教わらないと、この期間の練習に意味があるのかだんだん不安になってくるんだよねぇ。

なんて思っていたら、


「魔法ねぇ。確かに難しいかもしれないわね…………でも、そういえば錬金術は魔法に近いことをやるって聞いたことがあるわ。確か村長が若いころにそういう本を買ってすぐに挫折したっていう話を聞いたし、もしかしたらそれは借りられるかもしれない。読んでみる?」


「えっ!?そうなんですか!?読んでみたいです!」


「そう。じゃあ、今度村長に頼んでみるわね。多分誰も使ってないし、貸してくれると思うわよ」


確かに僕が求めていたものとは違うけど、何やら面白そうなものを得られそうな流れになった。

レストランの店主さんが言ったように本は割とすぐ貸し出してもらえて、というか、ほとんど譲渡された形になって、


「もしこの本に書かれている物を何か1つでも作れたのなら自分のものにして構わんよ。ただ読んで楽しむならともかく、使えるのであれば儂が持っているより何倍もいいからのぉ~」


「良いんですか!?じゃあ、絶対に使えるようになってみせますね!後、いつかポーションとか作ってこの村のみんなにくばっちゃいます!」


「ふぉふぉふぉっ。それは楽しみじゃのぉ」


何か作れたらという話だけど、その作るものが完成する期日なんてものは決められていない。だから、ほとんど譲渡されたも同然なわけだよ。

で、僕としては当然そんな物を得たら試してみないわけにはいかない。幸い僕の家には植物図鑑もあるし、周囲は自然がいっぱいで本に乗っている素材は1つくらいあるわけだから、あと必要なものは実験器具。フラスコやシャーレみたいなものとかはさすがにないからね。

でも、幸いなことにこの村は今とてもたくさん商人さんが集まっている場所になっているんだよ。探してみればそういうための道具ではななくても近い形状と機能を持ったものは見つかって、僕のお小遣いが早速役に立った。


「おぉ~、凄い実験っぽい雰囲気出てる。これが、錬金術!」


全然そんなことないと思うけど、庭で本を読みながら色々とやってると、雰囲気だけはものすごくそれっぽくなる。ちゃんと植物図鑑を読んで安全性の確認なんかもしながらだから、興味を示してやってくるお友達たちが来ても安心だね。

さすがに、アエリュちゃんが草を食べようとしたときは止めたけど。いくら何でも雑草だから、綺麗ではないと思うんだよね。

…………よくよく考えてみると、ポーションとかも自然に生えている薬草なんかを使うイメージがあるから、綺麗ではないっていう気もしてきたけど。

ポーションがそうなら、こっちもダイジョブか?(錯乱)


「お~。ポコポコしてる~。おいしそ~」


「沸騰してるだけで美味しそうに見えたらかなり危険な気がするけど…………危ないから触らないようにしてね?」


「は~い」


返事はしてもらえるけど、やっぱり不安はあるよね。やっぱりこういう年代の子は特に、やっちゃダメって言われることに興味を持つはずだから。自制心がある程度芽生える大人だってパンドラの箱は開けたくなるんだから、子供に自制を求めるっていうのが無理な話なんだよ。僕がちゃんと見張っておかないとね。


ちなみに、使う時には大人にも一応見張ってもらうようにはしている。

アエリュちゃんだけでなく、僕もまた子供だからね。勝手に1人でやってたら怒られかねない。

たまに見てくれる大人が先生だったりすると、


「ふむ。色は悪くないな。今日倒す予定のモンスターに飲ませてみよう」


「おぉ!お願いします!」


実際に作ってみたものを使用したりもしてくれる。もちろん先生が飲むわけではなく、モンスターに使う形でね。

一応本物のポーションなんかはモンスターに使うとモンスターも種類によっては回復するらしく(逆にダメージを受けるタイプもいる)、


「エサカ。今日のものはなかなか強烈だったぞ。無理矢理飲ませたらホーンラビットが非常に筋肉を発達させて恐ろしい力を出すようになった」


「えぇ!?入れた材料はどれもそんな効果を持ってなかったはずなんですけどねぇ」


「そうなのか。おもしろいな…………それはそれとして、今日のものをもういくつか貰ってもいいか?ホーンラビットがいい具合に強化されたし、もう少し上のランクのモンスターに使えば訓練ができそうだ」


「先生。失敗作をもとめないでくださいよぉ」


今のところ出ている結果はこんな感じ。全く以て成功とは言えないね。どちらかというと、悪の研究者が作る薬みたいな効果のものしか作れていない気がする。感覚としては、効果が強く出過ぎているって感じかな?


入れる材料などには間違いがないはずだから、問題があるとすれば作る工程の部分か、


「僕の魔力、だよねぇ。やっぱりそこは課題かな」


本の通りに、魔力を使うように努力はしていると言えど、やっぱり錬金術で使う場合もただ魔力を操作すればいいというだけではない。魔力を使ってコーティングをしたり素材に魔力をしみこませたりと細かい作業も多く、そこで失敗しているという可能性は十分あると思うんだよね。だって、コーティングもしみこませるも正解が分かっているわけではないんだから。

幾らそれっぽいようにやっても、結局はそれっぽいだけなんだよ。だから、本当に求めている効果に近づきはしてもそのものにはなってくれない。


「うわぁ~。変色しちゃった。もう色だけで失敗ってわかるのが辛いね。これはどうやって処理しようかな」


まだまだ始めたばかりだし、試行錯誤の段階。それの中で面白い薬品だって作れてはいるんだから、決して錬金術を始めてみたことは悪い事ではないはず。


それに、今のところまだポーションなんかを目指しているけど、ゆくゆくは錬金術という名前の通り金だって作れるようになるはず。そうなれば間違いなく、ガッポガッポだよね?

貿易王のエンディングが消えた分を、ここで取り返して見せるんだ!


錬金王に、僕はなる!


「ねぇパパ。これ食べて良い?」


「絶対ダメ!その変色したやつは明らかにダメなやつだから!」


「えぇ~。おいしそうな匂いがするのに」


頬を膨らませるアエリュちゃん。

その後先生にその薬品を処理してもらうと何故かその薬品は僕の目指していたポーションと全く同じ効果を出したということで僕は頭を抱えたよ。あと、食べてよかったじゃんってことでアエリュちゃんに僕は怒られた。

なんで変色して明らかに失敗だと思うようなものが本物なんだよ~。本に書いてある通りの本物ができてよ~(泣

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