エンドNO.18 人数差がひどいもの
新しく消えたエンディングを考えると、新しいことを理解できた気がするね。先生やダキエちゃん、カーミエちゃんは兎も角、本来ライバルになるはずだった子は公爵令嬢。そして、幼馴染も女の子でその母親も美人な未亡人。
剣聖がどうかまでは分からないけど、多分僕の予想では女の人だと思うんだよね。
この世界って、美少女ゲーム要素が入ってるんじゃない?まだ疑惑の段階だけど、将来会う重要なキャラがみんな女の人という可能性を考えなければいけなくなってきたよ。
嫌というわけではないけど、結構精神的に疲れそうだなぁ。たぶん、フラグ管理とか間違えると関係がギスギスしてしまうタイプだと思うし。全然想定してなかったから頭が痛いよ。
ゲームによっては相性の悪い2人がいて、その2人の関係を改善するイベントもあったりするなんてこともあるよね。そういうのは本当にストレスが凄そうだから勘弁してもらいたいという気持ち。もちろん、ゲームのシナリオのためだから嫌だとも言ってはいられないんだけどさ。
なんて思ってたから、
「なるほど!ダキエ!君の盾は素晴らしいね!まさかここまで戦いづらいとは思わなったよ!」
「ありがとうピョン。カーミエも強くてびっくりしたピョン」
とりあえず、新たなに出会ったダキエちゃんとカーミエちゃんの2人は相性は悪くなさそう。こういう付き合いが長くなりそうな面子でギスギスされると本当に頭が痛いから、仲良くしてもらえると助かるね。
ただ、仲良くしてもらえることはとてもいい事。本当に素晴らしい事だと思うんだよ。
だけどね。だからと言って、
「よぉし!3人でエサカを倒すぞぉ!」
「「おぉ!!」」
それで僕と3対1をするのは本当にやめてほしいね。危惧していたことが実現してしまったじゃないか。なんで偶数で丁度割り切れるのに、2対2にしてくれないんだか。
確かに2対1でも勝てることはあるけど、それは連携に問題があるからであって1対1の実力差はそこまで開いているわけではないんだよ?特に、アエリュちゃんなんか毎回勝利はギリギリなんだからさ~。
「勘弁してよ~。さすがに3人まとめて相手するのは手が足りないって。僕の腕が4本くらいあったらどうにかできるかもしれないけどさぁ」
3人から同時に攻撃が来ると、たとえ僕が両手に枝を持って戦ったとしても1個対処できないものが出てくる。特に、相手が固まっている時ならまだしも3人で囲んで攻められると本当にどうしたらいいか分からないよ。
今はまだ包囲を強引に突破する技術を盗んで持っているからどうにかできてるけど、この技術は1回しか見たことがないから粗削りなんだよねぇ。いつまで通用するから分かったものじゃないよ。
なんて思っていたら、
「おお!腕を増やすなら、そういった魔法があったはずだよ!あまり実用的な魔法ではないらしいが、ボクは大道芸の人が使ているところを見たことがあるよ。エサカもその魔法を覚えればいいのではないかな?」
「魔法?魔法って、どうやって習うの?」
「それは小飼の魔法使いに頼めば教えてくれるのではないかな?」
「そんなの僕はいないけど?」
「…………た、確かに!?」
魔法を使うことを提案されたけど、そんなもの教えてくれる人がいないんだよね。しかも、小飼の人間という発想が出てくるあたりがもう貴族だね。平民にはそんな存在がいないことをいま改めて思い出したみたいでカーミエちゃんは驚いているよ。
「魔法か。私も魔法は身体強化系くらいしかわからんな。覚えておいて損はないと思うが、やはりこの村でとなると少し厳しそうだ」
僕たちがは魔法の話をしていると、先生もそれに混ざってくる。ちなみに、以前使っていた状態異常とかはまた魔法とは違う分類の技術なんだってさ。
先生は魔法を教えられないと難しい顔をしているけど、
「身体強化も魔法なら、まずはそれを教えてもらえれば基礎は固まるのでは!?機会があった時に習得が簡単になるかもしれないですし、それを教えてもらえませんか?」
身体強化も、魔法ならば魔法だよ(農林水産大臣構文)。
使えるなら使えるって早く言って欲しかったね。僕がどれだけ魔法を待ち望んだと思っているのかな?(先生が知るはずもない)。
「ふむ。本来ならば体が出来上がってからの方が良いと思うのだが…………本当に基礎の基礎の部分ならば教えてもいいかもしれんな。魔力操作などできれば魔法の習得が速くなるのは間違いないだろうしな」
「本当ですか!」
「あ、ああ…………なんだ?やけにテンションが高いな。さては、魔法が使いたかったのか?」
おっと。思わず僕の欲望が強めに出ちゃったから、先生が剣術より魔法に興味があるのかと考えてしまいそうになっているね。これは危ないあ。
先生に媚びを売るためにも剣の方が好きってことを伝えないとね!
「そういうわけじゃないですけど、いい加減遠距離攻撃手段につながるものが欲しかったんです。斬撃を飛ばすなんて、一体何年後の話かも分からないですし」
「ああ。そういえばそんなことを言っていたな。魔法をもし習得できたのならば確かに遠距離攻撃手段も増えるし、エサカの考える問題は多少解決するのか…………そういう理由であれば納得だな」
よし!何とか先生の疑いをごまかすことができたみたい!正直剣術より魔法を一撃ドカンとやった方がロマンあるよねみたいなことを考えていないわけではないけど、そんなことは言わぬが花だもんね!このまま悟られずに剣術が好きだってことにしておこう。
そうして僕は先生から魔法のために基礎を教わることになったわけだけど、その話を聞いていたカーミエちゃんが興味深そうな反応を見せる。
「なるほど。エサカはそういうことも考えていたのかい。ボクとはかなり考え方が違いそうだね。何となく、エサカの成長の仕方も分かった気がしたよ」
「そう?」
僕の考え方という物を理解し始めたみたい。それで僕の成長の仕方が分かると言われると僕は首をかしげてしまうけど、カーミエちゃんは勝手に納得して満足そうな様子だしそこまで気にする必要もないかな。
一応、その理解で何かが変わることくらいは期待しておこうか。もしかしたらそれで僕への対策を建てられるようになったりするかもしれないしね。個人的には、自分への対策という物を見せてもらえると自分の問題点がわかるからありがたいんだよね。
先生にやられるときは圧倒的な力でねじ伏せられる感じだから、細かい癖とか隙とかの弱点を見つけるのには向かないんだよ。
「じゃあ、カーミエはその成長を超えられるのかな?」
「それは勿論さ。ボクの成長が君のものを超えるところを見せてあげるよ!」
こうしてお互いを高めあい、それでも和やかな雰囲気で練習は進んでいく。
そんな中で驚くことは、
「なるほど?枝はこういうものが良いんだね…………いや、こっちの方が僕の手にはしっくりくるかな?」
「あっ、カーミエも枝を使うんだ」
「それは勿論さ。せっかく教えてもらったんだから、それを身につけるためにも使っておかないとね」
カーミエが自前の剣など、高いだろうものを使わないこと。確実にお金はあるし、最初は質のよさそうな木剣をつかっていたのにもう枝を振っているんだよ。本人は満足してそうだからいいんだけど、ものすごく木剣がもったいなく感じてしまうね。
ただ、武装にお金は使わなくともケチというわけではない。どちらかと言えばかなりお金は使うようで、
「途中の街で言いアクセサリーがあってね。アエリュに合うかと思って買ってきたんだ。よかったら付けてみてくれ」
「わぁ~。ありがとう!かわいい~」
アエリュちゃんやダキエちゃんにお土産を買って来たり、時には村全体に買ってきてくれたり。宿泊料や食事代なども少し余分に払っているらしくて、村にとってはありがたい上客らしいね。しかも、村の方に来る盗賊も護衛に討伐させたりしているから少し治安の改善にも貢献してくれているらしい。
とんでもなくありがたいよね。
シナリオ通りのライバルではないけど、カーミエちゃんが来てくれてよかった。




