エンドNO.13 指一本触らせない
昨日は少々忙しく投稿できませんでした
うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!
タスミさんは渡さないぞぉぉぉ!!!
「いらっしゃいませ~。何名様でしょうか?……3名様ですね。お席の方ご案内いたします」
「小さいのにしっかりしてるわねぇ」
「言葉遣いが丁寧だねぇ。まるで高級店に来てしまったようだよ」
タスミさんを狙っているのは、どこのどいつだぁぁぁ!!!!
「ご注文を繰り返させていただきます。Aセットが3つ、コーヒーが2つ。オレンジジュースが1つ。以上でお間違えないでしょうか?」
「はい。大丈夫ですよ」
「注文を覚えられて偉いねぇ~」
ふんぬうううぅぅぅぅ!!!!!
タスミさんには指一本触れさせんぞぉぉぉおぉぉ!!!!!
「こちら、Bセットになります。以上でご注文の品はすべてお揃いでしょうか?」
「はい。大丈夫です」
「しっかりしててすごいわねぇ。お手伝いできて偉いわぁ」
さて、心の中で叫びながら何をしているのかと疑問に思ったかもしれない。
周囲の人からかけられる言葉でなんとなく察しがついた人もいるのかもしれないけど、
「ありがとう。お手伝いしてくれて嬉しいな」
「タスミさんのためならこれくらいやるよ~。アエリュちゃんも楽しそうだしね!」
「そっか。ありがとね」
タスミさんのお手伝いとして、飲食店で働かせてもらってます。
昔は何をやってたのかわからないけど、タスミさんは現在レストランみたいなところで働いているんだよね。そこで、タスミさんを見かけた人から言い寄られたりとかしていたみたいだというわけ。
だからこそ僕がこうして働いてタスミさんを多くのお客さんと接触させないことでガードするという作戦なのさ!
絶対にタスミさんはあげないもんね!
幸いなことに今まで言い寄ってきていた人たちの話はすべて断っていたらしく、僕の動き出しは遅くはなかった。ウエイターとして働いていればお客さんの相手はほとんど僕ができるというわけさ!
正確には僕だけはなく、
「お待たせしました!えぇと…………なんだろう?これ」
「お嬢ちゃん。それはたぶんBセットじゃないかな?あそこの人に渡してあげたらいいと思うよ」
「は~い!おじさんありがとう!」
アエリュちゃんも結構働いてくれてる。
僕と違ってそこまで接客とかに慣れているわけでもなければこういう仕事の風景も見慣れていないだろうから動きは悪いんだけど、それはかわいさでカバーされてるね。逆にそこが良い、みたいな空気になっているよ。
このお店の看板娘って感じになってるかな。
こうしてアエリュちゃんも一緒に働くことでさらにタスミさんが表に出てくる機会は減らせるわけだし、さらに、
「パパ~!このお水どこに持ってくの~?」
「それはあそこのお客さんだね。あと、お水だけ持って行ってもコップがないとだめかな?」
「ママ~!Aセットがブラックでコーヒーが3つで3つだって?」
「…………たぶん、Aセットとブラックのこーひが3つってことかな?コーヒーがホットかアイスか確認してもらえる?」
「は~い!」
僕とタスミさんの事を「パパ」と「ママ」で呼ぶから、お客さん達もタスミさんに声を更にかけづらくなる。
タスミさんが、ショタコンとかいろんなことを言われる羽目になっている気がしなくもないけど、たぶん問題ないでしょ。…………たぶん。
「あの子がパパで、あの奥の人がママ?」
「あの子、子どもかと思ったけどエルフだったりするのかしら?」
「見た目の割にしっかりしているし、もしかしたらエルフとかドワーフとかで若く見えているだけなのかも…………いやでも、それにしては種族の特徴が出てないよね」
どちらかと言えば、タスミさんより僕が変って話に合っているかな?喋り方とかも相まって、そう見えているのかもしれないね。タスミさんが変に言われないなら僕としては問題ないかな。
…………ないよね?これの正でゲーム本編に影響が出たりしないよね?大丈夫だよね?
なんかちょっと不安になってってきたけど、いまさら何をやっても遅い気がするし気にしないことにしておこう。
そうして不安にならないことはないけど、これでもうタスミさんの事はずっと守っていける。
完璧だね。
…………なんてわけもなく。
「パパ~!先生のところ行くよ!ママ!行ってきます!」
「はい。ちょっと待ってね…………それじゃあタスミさん。行ってきます」
「いってらっしゃい。フェスキさんによろしく言っておいてね」
いつまでも接客をしていられるほど僕も時間に余裕があるわけではない。
先生との訓練の時間になると、アエリュちゃんに引きづられながら(精神的には)、泣く泣くレストランから離れることになるのだった。
ぐぬぬぬぬぅぅぅ!!!
この間にタスミさんが口説かれてないか心配だよぉ!僕の存在をアピールしてタスミさんをガードしなければぁぁぁ!!!!
「今日は随分とやる気があるな。とはいえ、やる気に頭が追い付いていないようだが」
「おぉ~。パパやる気だねぇ。私も頑張る!」
この後、結構やる気を出したアエリュちゃんが強くて危うく負けるところだったよ。普通にビビったね。
子供と天才って怖い。
なんて思ったけど、その子供の怖さを出せるのは僕も同じ。
中身が大人だからって見た目がそうなら予想を裏切ったりはできるわけで、
「なぁなぁ。坊主ってあの人の弟子なんだよな?ちょっと模擬戦とかやらね?」
それを発揮するときはすぐにやって来た。
ある日冒険者ギルドへ行ってみたところ、最初にギルドに来た時に絡んできた酔っ払いの人ことダイリキさんが戦いを挑んできたの。
「模擬戦ですか?弟子とは言っても、まだ習い始めてから1年たってないんですけど」
「ダイジョウブダイジョウ。ちゃんと手加減はするからな。単純に、あの人に教わってどんだけ強くなれるのか気になっただけだ」
「そうなんですか?」
どう考えても大丈夫の言い方が怪しかったけど、これは今まで学んできたことを活かせる良い機会。
ということで、それを受けてみて僕は武器を構えるわけだけど、
「あ、あのぉ。武器はどうすればいいですか?普段は木の棒とか使ってるんですけど」
「ああ。それもそうか…………よし!そういうことなら、俺が昔使ってた木剣を譲ってやろう!ありがたく思え!」
「わっ!良いんですか!?ありがとうございます!大切に使いますね!」
普段の訓練ならともかく本職の人を相手にした模擬戦で木の棒を使うことはどうかと思って尋ねてみたら、なんとついに木製だけど剣の形をしたものをもらえたよ!これで訓練の雰囲気も大幅に変わるかも!?
…………と思ったけど、こんなのを僕だけが持って訓練してたらアエリュちゃんが絶対自分も欲しいって言って騒ぎ出すに決まってるんだよね。正直僕もそう思う気持ちはわかるから、訓練の時には使わないか2人で分け合うかしないといけないかな?
なんて思いつつ木剣を手に取って今度こそ向かい合い、
「えいっ!」
「おっ!?思ったより速い!?」
攻撃を仕掛ける。
ここで僕の速度にまず向こうは驚くわけだけど、個人的な考えを言わせてもらうとこの人に勝てる可能性は0ではないと思ってるんだよね。さすがに高い確率でとまでは言う自信がないけど、
「えい!とぉ!」
「う、嘘だろ!?こんな動けるのかよ!しかも、身長差がやりづれぇ」
数回攻撃を仕掛けたけど、感触は悪くない。全部防がれたり避けられたりはしているけど、結構ギリギリな状態まで追い込めてるんだよね。
そして、ここまでくれば僕はさらに手札を切れる。
ここまでは先生の使う剣術と同じものを見せてきたけど、一瞬のスキをついて、
「っ!?消えた!?」




