エンドNO.12 盗賊が出た!?
「アエリュ~。エサカ~。こんにちはピョン」
「あっ!ダキエ!やっほ~!」
「こんにちは。ダキエ」
今日も今日とてダキエちゃんがやって来たので、3人で先生のところに行こうかなと思ってる。
最近のダキエちゃんは週に2回は来ていて、結構なペースであっているね。
来る理由は勿論この村の買い物。
ただ、買い物も目的ではあるんだけどそれだけではないというのもまた確か。
買い物ならわざわざこんなに週に何度も来る必要はないからね。毎週のように来て買うものなんて、自給自足できる村ならないはずだからね。
ただ、それでも来ているのは他の理由があるということ。
それが、
「はい。2人におすそ分けピョン」
「ありがと~!ダキエのところの牛乳美味しいんだよね~」
「いつもありがとね。後でお土産の野菜とか上げるね」
「喜んでもらえて嬉しいピョン。あと、お土産もありがとうピョン」
おすそ分けという名前で渡されるそれは、ダキエちゃんたちが持って来た物の余り。
この村に、売り物として持ってきた物の予備みたいなものなんだよね。
そう。今この村は、売り物を持ってこれる場所にもなっているんだよ。何せ、商人が集まる場所なんだから。
もちろん商人さんの大半はこの村に売りに来ている人達なんだけど、当然ここで売ったら商品はなくなる。そこで、逆にこの村で仕入れまでしようとする商人さんも多くなってきているというわけなんだよ。
「ここで売れるようになったおかげで、手入れ用のはさみとかたくさん買えるようになったピョン。毛刈りがはかどるピョン」
「おお!毛刈り!楽しそう!」
「毛刈りをしたら服とか布団とかに使うのかな?」
「そうピョン。エサカ、正解ピョン」
仕入れをしたい商人さん達が声をかけてみた結果、買い物に来ていた人たちはモノを売る人にもなった。ダキエちゃんの村だけでなく他の村からも定期的に人が来て、ものが下ろされるようになっているんだよ。
そしてこの村はそのおかげで、人が集まることで宿泊業が盛んになってる!
最近は宿屋が足りなくなりそうっていうことで増築されたり新しい宿屋が立てられたりしてたね。
もちろんそれだけではなく、この村に来る人が多いということはそれだけ食べ物が消費される量も増えるということ!僕の実家も、野菜がたくさん売れて儲かってる様子だよ!
この村は現在非常に好景気になってきてるって感じだね!
「僕たちの村もお金が入ってきたから、農具とか新しい物を結構買ってるみたいだね。後、材料を買って家を建て直したりもしてるっぽい」
「へぇ~。家が新しくなるなんて羨ましいピョン」
こうしてお金が集まると欲を持っち出して争いとかが起きるようなものだという印象があったし警戒していたんだけど、幸いなことに今のところこの村でそういった争いが起きる予兆はない。
良くも悪くも田舎の村という意識がまだ残っているからか、村を1つの集合体としてい捉えている分個人でお金を抱え込もうっていう人が少ない、というかほとんどいないんだよ。
だからみんなでお金を出し合って、村全体を良くしていくことができる。
古くなった家を建て替えたり農具を新しく買ったり、それこそ今は高価な魔道具を買って村の人間が水の出る魔道具を買えるようにしようなんて話も出てきているみたいだね。
そうしてある程度生活水準を上げたら、今度は商人さん達がさらに来やすいように、そして過ごしやすいように設備を整えるんだとか。
ただ、こうなってくると少し心配なのが先生だよね。
王都とかいう賑やかなところから離れようと思ってこの田舎の村に来たわけだし、この村が発展して人が増えることは嫌がるかと思ったんだけど、
「このくらいの規模感は悪くないな。不便さがなくなったし、ある程度仕事の数も増えてきた。のんびりできる時間もあるし、バランスがとれいている」
「ほぇ。良い感じってことですか?」
「うむ。そうだな。理想形に近いかもしれない」
問題ないみたい。それどころか、前よりも生き生きしてるね。
どうやら先生にとってはこのくらいの規模感はまだまだ騒がしいうちには入らないようで、田舎の範疇みたい。どれだけ王都ってすごいんだろうね?
前世の都会と比べるとどっちが凄いのかな?
そして、賑やかじゃないだけでなく人が多くなってきたことで仕事も増えたらしい。
その中でも特に先生のお気に入りが、
「まだまだ小規模な盗賊しか出ないからな。間抜けばかりで助かる。盗賊に逃げられずに済むというのは、なんと気持ちのいい事か」
「ひぇっ」
思わず僕が悲鳴をこぼしちゃう程凶悪な笑みを浮かべるくらい先生が好きなことは、盗賊狩り。
あまり喜ばしくないことにこの辺りに商人さんが増えたことで盗賊もぽつぽつと現れ始めたらしいんだけど、それを積極的に先生は狙っているらしい。
普通に人○しの話とか出てきて最初はビビっちゃったけど、この世界の感覚だとこれが普通なんだろうね?
王都で相手をしていたらしい大規模で凶悪な盗賊と違って、先生にとってみればこの辺りに出てくる盗賊はカモでしかないんだとか。実力も計画性もないせいで先生に出会うと逃げることもできず、簡単に首を切ることができてしまうらしい。
ちなみにそうした盗賊を討伐するとギルドからそれなりの報酬が払われるだけでなく持ち物なんかはだいたいすべて討伐した人のモノにできるから、先生は結構稼げたらしい。
もちろん、その結構というのは僕たちの感覚での話であって、先生にとってみればなくても同じ程度でしかないらしいけど。
「くくくっ。次は人達で10人の首をはねる練習にでも使ってみるか」
「ひぇぇぇ」
盗賊を切ることが楽しくてしょうがない様子の先生。もしかしたらこれが悪化したら人きりに落ちるんじゃないかという不安があるんだけど、こうなってしまっているんだから、
《イベント『盗賊頭と大決戦』『村の秘宝を取り戻せ』及びエンディング『盗賊王』が消滅しました》
色々と消えるのも仕方ない話ではあるよね。
先生が張り切っちゃったんだから、僕が将来活躍するはずだった部分がなくなっちゃうことも仕方がない。
イベントの名前を聞く限り何か盗まれたりするみたいだから、将来それが起きなくなったと考えれば儲けものでしょ。
とはいえ、僕の成長の機会が失われたうえにまた着実にエンディングが消えてしまったことも確かなんだけどね。
『盗賊王』なんて絶対にならない未来だと思うから無くなっても構わないと言えば構わないんだけど、それでも消えてしまったと言われると焦る気持ちもあるよ。
後、得られたはずの経験が消えてしまったことも。
とりあえず少しでもそれを取り返すために、
「先生!強かった盗賊とかいませんでした?」
「む?いないわけではなかったが」
「じゃあ、その人の戦い方とか教えてもらえませんか?参考にしたいので」
「構わないが…………それならば今回戦った連中よりも、私が王都で戦ってきた盗賊の話の方がよほど参考になる部分は多いとと思うぞ。あっちの方が戦い方も洗練されていたしな。私としては厄介な話だったが」
「あっ、はい」
イベントで僕が倒す予定だっただろう人のことを聞こうとしたんだけど、先生はそれより強かったらしい人達の事を教えてくれた。これはイベントが消えたことよりもいい事なのか悪い事なのか…………いろんな意味でとっても参考になる部分は多かったから、強化には間違いなくつながっているよ。
こうして原作とは色々変わっちゃってるだろうけど、いいこともたくさん起きているこの状況。
僕は少しだけ達成感を感じ泣ていたんだけど、そんなある日の夕食の時。
「そういえば、またタスミが言い寄られてたのよねぇ」
「ああ。タスミももしかしたら再婚か?」
…………はぁ?
タスミさんが、再婚?




