鬼切百々とガラパゴシーズ
前回のpv数がドチャクソ伸びているの何でだ?変態淑女のお陰なのは分かるけど、タイトルからじゃ分からんよな?
その配信者を見つけたのは偶々だった。今度訪れる予定の『カオスパレイド大帝国』の事を調べている時に見つけた。
幼女だった。肌は生気を一切感じさせない、病的な白さ。
髪は灰色がかった紫、色彩図鑑を片手に探してみると滅紫という名がついた紫が1番近かった。『めっし』とも『けし』とも読むらしい。
瞳も紫、しかし髪とは違い妖しさを感じる艶やかな色だった。
服は和服、黒一色で裾は虫喰された様にボロボロだ。
靴は腐った草履に、錆びた銀の髪留め。
配信者としては最悪のビジュアルをしていた。
挙句の果てには、動画サイトに並ぶ「塵拾い配信#〇〇」とだけ書かれたサムネ。
これは本人が初回に言っていたのだが、「伸びる気はない。拾った塵をネットの海にポイ捨てしてるだけ。」とのこと。
塵拾いボランティアとしてもどうかと思う発言だ。
なのに、惹かれる。具体的にはパンチラ探しに1時間半の配信を17本、0.25倍速で4周してしまった。彼女の3サイズとパンツの色を聞くコメントを見た瞬間、工房を飛び出して来てしまった。
──だが、
何故あれを初見で切れる、何故剣閃はおろか抜刀も納刀も見えなかった、刀は何処から出した?何故、今日の訪問について知っている。
頭の中をいくつもの疑問を巡るが、考えがまとまらない。呼吸が浅くなる。
レベル差どうこうの話じゃない。鑑定スキルを使いレベルを見ていないのに、勝てないとしか思えない。
そんな疑問は
報告:カオスパレイド大帝国の領主より、レッドネームに加えられました。
「あっ……。」
視界の隅に映った、通知で消し飛んでしまった。
「さて、ゴミ掃除の時間です。」
気付いた時には彼女を腐ったイカ足で突き飛ばし走り出していた。
走る、走る、走る、家を次々と通り過ぎ、何度も公園のベンチを飛び越え、百々の横を走り去──
「ル……ループして…。」
「12周目で気付きますか。早いですね。」
何処から取り出したのか、ベンチに座り欠けた湯呑みで緑茶を飲みながら百々が立ち止まったピーレイに話しかけた。
「あっ、あぁ……。」
ピーレイはすぐに後退るが──
ガンッ!!
2、3歩下がった所で見えない壁に阻まれた。
「さて、事情聴取の時間です。嘘をついたら──
──腐って貰いますからね。」(⌒▽⌒)
錆びた切っ先を首に添え、百々はピーレイに微笑みかけた。
◇◇◇◇◇
「……ケンタウロスのお仲間さんの採寸に時間がかかっていたから、私の配信を観ていたと。」
「……はい。」
「で、私が配信で3サイズとパンツの色を聞かれたので、肉声で聞く為に来たと。」
「……あの、教えていただく事は──」
「死ね。」
ドガアアァァァンッ!!!!
百々のアームハンマー。ピーレイは叩き潰された。
報告:レッドネーム「自手p-lay」はKILLされました。当プレイヤーは法律に則り、『カオスパレイド牢獄』にリスポーン地点が変更されました。
そんな、通知が5人の視界に入った。
「……では、ガラパゴシーズの皆さんとスモモトリさん、何か言う事はありますか。」
塵を纏い巨人サイズまでに肥大化した腕を戻しつつ、クレーターの反対側に居る4人に百々は視線をやった。
そう、今さっきピーレイは仲間の前で公開処刑されたのだ。
ピーレイが眼前で叩き潰され、ハルトとスモモトリ、ケンタウロスである「牛肉男」は引き攣った表情をしていた。
そして、ソニアは処理落ちで強制ログアウトした。
「あれ、お仲間さんが1人消え──」
「無視して大丈夫です。」
「いつもの事。」┐(´д`)┌ヤレヤレ
「だとよ、領主様。」
「そうですか。」
パーティメンバーとスモモトリが言うのだから、問題はないだろう。
「では改めて、何か言う事はありませんか。」
再度質問した百々に、ハルトと牛肉は綺麗な土下座をし
「「本当に申し訳ぁぁああああ!!!!」」
ドシーンッ!!
土下座をした事によって馬の下半身が上がってしまい、バランスを崩した牛肉男が倒れてしまったのだ。その先にハルト居たために、彼は牛肉男の尻に押し潰されたのだ。
その様子を見た百々はプルプルと震え、
「ふふっ、アハハハッ!!な、何をやっテいるのでスか?ちょッハハハ!!」
我慢できずに書斎のカーペットの上に転がり、百々は大笑いを始めた。
「……あー、もう滅茶苦茶だぞ。」
◇◇◇◇◇
「という訳でだ。俺たちはこの国の国民になった。」
「??????意味が分かりませんわッ!?」
時間は百々とガラパゴシーズのふざけた会談から半刻ほど。牢獄の面会室でパーティのリーダーと対面したピーレイは、開口一番でそんな事を言われ困惑を口に出した。
「厳密には、勝手に居住区に入ったお前は国民にならないといけないらしい。」
「つまり、ハルトさんたちは私の為に──」
「ソニアが『ピーレイが居ないと登録者が減っちゃうよ。』と煩くてな。」
「今すぐ締め上げて差し上げますわ!!」
「国民になったのなら出してくださいまし!!」と叫びながら、ピーレイは面会室を壁をイカ足で叩き始めた。
「何で国民にならないといけないんだと、百々さんに聞いたんだが──」
そんな、ピーレイを華麗に無視し話を続ける。
「──どうにも面倒くさい事になってるらしくてな。」
「……面倒くさい事?どういう事ですの?」
「──それについては私から話しましょう。」
面会室の扉が開き、百々──
──の写真が貼っつけられた空飛ぶカセットプレイヤーが部屋に入室してきた。
「何でカセットプレイヤーですの!!」
血涙を流しながらピーレイは呻いた。
「一つ、ピーレイが居るから。」
「妥当だな。」
「キィィィイイーーッ!!!!」
「2つ、私は前任者に言い訳をしに行かないとだから。」
3ヶ月前、リリース直後までに話は遡る。
百々「……気になっていたのですが、何故牛肉さんはケンタウロスを選んだのですか?」
牛肉「ミノタウロスと見間違えた。」(´・ω・`)
百々「……(カワイイ)。」