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塵拾い配信#15

 衝動が赴くままに書いた作品なので、読みづらいし失踪するかもです。それでも良ければ、ぜひ読んでください。



「どうも皆さんオハギリ。100オニギリこと、鬼切百々(オニキリモモ)です。今日もゴミ拾い配信をしていきます。」


 気怠げな様子の和服幼女(ロリ)が目の前の丸い球体に話しかける。

 すると、彼女の視界にのみ映る半透明の板に反応(コメント)がゆっくりと流れた。


・オハギリ、モモちゃん

・今日も塵拾いするのね

・がんばれー


 3ヶ月ほどで反応する人が固まってきた過疎配信。しかし主は再生数をあまり気にせず、今日も家と工房が入り混じった町を背景に、せっせと塵拾いを始める。

 

「……最近は噴水の中に煙草が落ちてて困るね。VRだから外で吸っても大丈夫だけど、塵は持ち帰ってほしいね。」


 「ちょっとは景観を良くしよう。」という国民からの提案により造られた、ささやかな噴水を覗き込みながら不安を漏らす。


・だよねー。見栄えも悪くなっちゃうし辞めてほしいよね

・そもそもなんで煙草実装したん?

・煙草で強化(バフ)掛けんの気持ち良すぎるだろ!!


「……現実で禁断症状出るかもだから、ご使用の際はリアル値を下げるように。」


・煙草、辞められない止まらない

寝る(セーブ)前にバフキメるのは常識だよね

・おかしいな、依頼(クエスト)で溜めた金が煙草を買い占めると消えるんだが?

・既に手遅れで草


「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……、」


 そんな雑談を視聴者と交わしつつ、百々は()()()塵を拾い、()()()に仕舞っていく。


・こんにちは、初見です。あまり見たことない景色ですが何処の国ですか?

・初見さん?米するの珍しいね。

・いつも、増えてもコメしないどころか即居なくなるもんな。


「……オハギリ、初見さん。鬼切百々です。ここは中立国のカオスパレイド大帝国だよ。」


・おお!!カオスパレイド所属の配信者は珍しいですね。


 ──ここで百々がプレイしているゲームと"所属国"について簡単な説明をしよう。


 百々が配信しているのは【人魔大戦外伝 Grate War Online 】という作品だ。対戦型国盗りシミュレーションゲーム、【人魔大戦】シリーズの外伝作品であり、シリーズでは初のVRMMOである意欲作だ。

 それ故に、長年のファンとVRMMOプレイヤーから期待されていた作品であり、実際にその完成度の高さから僅か3ヶ月で200万本もの売り上げを叩き出したヒット作だ。


 内容は概ね他のVRMMOと同じだが、国盗りシミュレーションの外伝作である為か、プレイヤーが領主となり(まつりごと)をする事が出来る。


 そして何よりも、このゲームは3ヶ月前に始まったばかりである。

 現在、日本サーバー内は所狭しと国家が乱立しており、熾烈な領地争いが続いていた。


 そんな中、領地争いとは無縁の国があった。それが百々が所属する国、『カオスパレイド大帝国』だ。

 人口は約1500人、面積は1.5平方キロメートルの小国である。

 領主の方針により、物品の取引のみに応じる中立国。国民もNPC、プレイヤー共に生産職に7に割が、残り3割が商人をしている。


 それ故か配信者は百々以外に居ない。また、この国は中心に王城、その周りを居住区と工業区、城壁を跨いで商業区と農業地帯、そして国境沿いには要塞、という造りをしている。

 他国所属の者が入国可能なのは商業区までであり、それより内に入るには国民となる─生産職か商人についている事が条件─か、国民からの招待状が必要不可欠である。

 また検証班─多くが国直属の諜報員─は問答無用で入国を禁止されており、外部にまともな情報が漏れていないのだ。

 分かることと言えば武具の品質はトップクラスであり、神器クラスが週に1個は市場へ流されている事だけだ。


 故に百々の配信は大変貴重な情報源の筈……なのだが──


・塵拾いしかしないのですか?


「国内のモンスターはLv20が上限だし、国境を出るには領主からの許可が要るからね。」


 配信開始から30分、百々はひたすら塵拾いをしていた。


・お金はどうしているのですか?


 何とか初見さん、もとい隣国の諜報員は情報を引き出そうとするが


「これは唯のボランティア、本業は別にある。法律で禁止されているから言えないけど。」


・大雑把な職種でもいいです

・さっきから質問ばっかだな

・なんか怪しくない

・もしかして検証班か?


「……だーめっ。法律で情報漏洩は禁止されてるから無理。塵拾い配信もあくまで塵拾いするだけだから出来てるの。」


・そうですか、すみませんでした。

・素直に謝れて偉い

・そんな君には僕特製の煙草をあげよう

・僕の所属国、禁止されているので要らないです

・草www


「むっ、これは……?」


 噴水から塵を拾う中、百々が取り出したのは


❲武器:錆びた銀製の杖 Ra:佳作❳

 錆びてしまった銀製の杖。魔法を行使する為に使用する。錆びている為に性能は落ちている。磨けばまた使えるだろう。


ATTACK+15、M(マジック)・ATTACK-25、照準ブレ[中]


・何これ?

・杖なのに魔法にマイナス補正ついてるやん

・性能が下がってるって……なんでAが20あがるんだよ

・実質棍棒やんこれ


「しっかり私が供養してあげよう。」


 優しく撫でながら、百々は杖を袖の中に仕舞った。



◇◇◇◇◇



「では今日の配信を終えようと思います。皆さん、バイキリー。」


・バイキリー

・バイキリー、百々ちゃん

・明日の配信も楽しみにしてるよー。


 数人の視聴者へ手を振りながら百々は配信を切った。時間にして1時間半、塵拾い配信は終わったが現実時間はまだ午前8時を指しており、時間はまだまだある。

 なので、百々は仕事をする事にした。


「えーっと確か、この辺だと……。有った有った。」


 百々が見つけたのは公衆トイレ。個室に入り右袖の中を左腕で探す。目的物は掃除道具……なんてことはなく、欠けている手鏡を取り出し──


「霊道転移」


 そう呟くと、個室の中が光に包まれた──


 

◇◇◇◇◇



「さて、どうしたもんか。」


 男は真っ暗な配信画面を眺めながら呟いた。


「カオスパレイドの情報、まともに入らなかったな。」


 男はとある国所属の諜報員だった。近々、カオスパレイド大帝国に第15回目の攻勢を仕掛ける予定であり、その為に情報収集をしていたのだが


「城壁内のマップでも作るか?」


 手が詰まっていた。どういう訳か、カオスパレイド大帝国の情報は一切外部に漏れないのだ。

 無理やり入り込もうにも、国境警備をしている領主の使い魔と考えられる魔物が高度な看破スキルを持っているのか何度も失敗している。


 隠密スキルを使っても足元に威嚇攻撃が飛び、遥か上空から降下をすれば撃ち落とされる。

 入り込んだ事が無いわけではないが、それも前回の攻勢の作戦「全戦力による強行突破」だけであり、諜報もクソもない。


「このままだと、領主暗殺は頓挫。被害度外視の殲滅戦になっちまう。」


 このゲームで領地を盗る方法は2つ。圧倒的な武力で叩き伏せ、国民に領主として認めさせるか。

 或いは全てを焼き払い土地だけ奪うかである。


「確かOBTの時はNPCが領主の国で誰でも入れた筈。リリースから僅か3日で今の拒絶状態になったから、その時期に代わったと考えられる。OBTだとNPCが約1200人。国境沿いに張ってる仲間からの情報だと、プレイヤーは300人か、」


 このゲームは発売3ヶ月である。神器クラスの武具を作ったプレイヤーの話はドワーフの国でも未だに出ていない事を考えると、市場に流れている物は全てがNPC製だと男は考えた。


「NPCは蘇生不可だったよな。せめて、領主様のプレイヤーネームが分かればやりようがあるんだが。ま、できる限りの事やるか。まずは、眷属全員集めるか。」


──昼飯が3時過ぎになるかもな。そんな事を考えながら、男は準備に取り掛かった。

 

 なんか、こう『王』より『領主』の方がしっくりくると作者の感が言っているので、国のトップなのに『領主』呼びになってしまった……。

 気になる人は感想なり、誤字報告なりで指摘してください。

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