今年もGが死んだ
G…
世において、人に忌み嫌われる者…
僕が(おもに“蚊”以外の)生き物を意図的に殺さなくなって、今年もGが家にやって来ていた。
夜になると台所に、一匹か、二匹。遭遇頻度は高かったが、おそらく一匹だったのではないかと思っている。
『一匹見たら三十匹はいると思え』『巣を作って増えるぞ。根絶やしにしろ』
幼い頃にはそう聞いたものだが、僕は現在では、Gにもナワバリのようなものがあるのではないか、と感じている。
家にお馴染みの一匹が住み着くと、他のGは来なくなるのだ。
…しばらくすると、「これは、(Gの)子供かな?」という小さいコオロギみたいなのが家の居間をウロつくが(大人のゴキと違い、どこに現れると殺されやすいのか、どこに現れると許される?(逃げやすい?)のか、まだ理解していない)、しばらくすると、まったく見かけなくなる。
生き物を殺さなくなって何年になるか、その間Gが現れたのは、一年につき数匹(オスメス?)だけである。
殺せば間違いなく増えるーーというか、別のゴキがどんどん入ってくる気がする。
しかし、今年住み着いたと思われるGを何度も夜に見かけたが、放っておいても、やはり増える形跡は見られなかった。
たぶん薬剤の対策等で(仕事で)、実験などをしているとどんどん増えてしまうんだろうが、自然な毎日で共生に寛容でいると、それほどではないのではないだろうか。…いや、ぜんぜんその言に責任はとれないのだけれど。
とにかくまあ、増えたように思えた“子供”Gはいつの間にか見なくなり、残った親Gは、きょう洗面所の端でひっくり返っていた。
しかも、その前日に奇妙な行動をとっていたのである。
「あらっ!? 居間にまで来やがったのか?」
それは密かに恐れていた事態だった。
水場をウロチョロしてるだけならいいが、お客さん(孤独に暮らしているが、たまに来客がある)もいる時がある部屋にGが出られては、都合が悪い。
…もしかして、薬剤を置かなくては(一族郎党全滅させねば)ならない状態に、なってしまったのだろうか…
とても心配になった夜だったのである。
しかし、そのあくる日、ほんとにビックリした。
「お前…!!」
洗面所でひっくり返って、ピクピクしている。
死ぬ直前、どうやらたった一度だけ、居間に現れたようなのであった。
そこで、基本的には善人である(爆)久賀は思った。
まさか、あのGは、軒下で育ったツバメのように、お礼のつもりで、旅立つ前に姿を現したのではないかと。
…僕はいつだったか、人に「ツバメは旅立つ前に、家族そろって玄関近くの電線に並んで、その家人を待ってたりするのよ。軒先で安全に子育てさせてくれたお礼みたいにね」と聞いたことがあった。
そして、実際にある日、玄関を出た際に「おお…雛だった数匹と、親鳥がみんな並んでる…!」
その直後、ツバメは姿を消し、「その聞いた話は本当なのかもな」という事態を、何度か経験した。
だから、居間に現れた翌日、Gが洗面所で死を迎えている(何しろしぶといからなかなか死なないが)、ひっくり返って弱っていってるのを発見した後、「アイツは、家で追い回したりされずに、快適に住まわせてもらったお礼がしたくて、一度だけ、居間に姿を現したのではないだろうか」と思ってしまったのである。
…こちらは、くつろいでいた所を“ギョッ”とさせられただけなのだが…
ともあれ、それからしばらく経つが、一度だけ番いのメス(オス?)らしき姿を一度見たあと、もうGの姿はない。
やはり今年も、一家族だけ、ウチで育っていったのかもしれない…し、まったくそれは僕の見当違いなのかもしれない。
とりあえずまあ、やはり特に害はない生き物は、殺さなくてはいいのでないか、と感じたGの死であった…
いや、「そのいなくなった子供が、ウチに来るのよ!!」とか言う意見もあると思うよ!?
いつか同じようなことを言われたし。
でもねえ…殺しても、どうせ僕の実感としては増える(どんどん入ってくる)わけだから、「なるべくこの家から出て行ってね。できれば、僕以外のお客さんとかの前には出てこないでね」とか声かけながら放っておく方が、あれこれドタバタしないですむんですよ。
そしてそういった行為は、べつに犯罪にならないし…
Gを見た目で嫌わずに、寛容になれるか、自然の一つとして受け入れられるか、というのも、人間としての修行ではないか、と久賀は感じたりしていますw
まあ、ゲジゲジみたいに気持ち悪くても、家中の小虫を掃除してくれる『益虫』としての評価があるように、Gで見た目以外のショッキングな実害を受けたことがない僕は、そこにいるのを「許してやっても」いいんじゃないかな、と思えます。
もちろん、気持ち悪いぐらい増えたり、彼女ができてその女性がダメというなら、処分するしかないですが…
死ぬ直前だけ、居間に現れてお礼をするように死んでいったG…
今年は彼(彼女?)を見て、ますます「まあ、害がなければ家にいてもいいんじゃないの? でもできるだけ、見えないとこにいてね」という結論に至ったのでありました…