ユリ(の花)的な直感
台風が来る直前だった。
「…なんでいま咲くんだよ…!」
ウチの周りでは、夏ごろになると、野ユリのような植物がぽつぽつと花開く。
コンクリートの隙間や、庭の適当な場所から。
葉が雑草と違い、いくらか区別がつくので、引き抜かずにとっておくと、「何もこんな暑い時期に咲かなくとも…」という頃に綺麗な姿を見せてくれる。
そして先日、遅れ気味な一本が花開いた。
まだ蕾があるのかと、他の花びらを落としたものと時期の違いに驚いていたが、よりにもよって台風直撃の前日。
雨天の朝だった。
「バカだろ…!」
即日散るのは確定だった。
ここまでねばって蕾を大きくふくらませ、他の仲間より遅れに遅れて、「いざ、咲かん」
台風の朝に。
虫も、花粉を取りに来まい。
…しかし、植物(自然生命)の勘というものは、すごいものである。
何と台風はかなり逸れたあげく、3日間は降り続く予報だった雨は、初日のみで終わり。
2日目の午後にはチラホラと晴れ間も見え、風の影響は(花に)ほぼナシ。
いま、見事な晴天の下で、すっと背を伸ばし、花は鮮やかな白に輝いている。
ユリ(揺り)の語源となったごとく、ゆるやかな後風に流され、優美な姿で踊っている。
…しかし、結局のところ筆者が無知のため、この花が本当にユリの仲間かどうかは、分からない。
だが鷺を見て、「コウノトリだ…!」
と驚けるのもまた幸せなのである。
何せ、世界に誇れる文化遺産、姫路城は“白鷺城”であって、『幸の鳥城』ではない。
まったく意味の分からないオチだが、まあ花は美しい、ということ、そして人の本当の美しさ、記憶に残る感動は、人の心から発せられるものであると記して、未来の子供たちに期待したいと筆を置くことにする。
…べつに、誰に宛てた手紙でもないのだが。