9.死と『卵蛇』
「おりゃー!はっはっ、敵が多すぎるでしょー。」
私はシロと背中合わせで戦っていた。
キョウがテイマー村ということはとかつぶやきながら並走している間にいつの間にか超乱戦になっていたから、途中合流したシロと一緒に戦闘している。
「なあアイ、あの剣とかよくないか?」
シロが言いながら敵をぶん殴る。
ぶん殴った敵が持っていた剣を掲げもち、上段から敵をバッサリと斬る。
そう、私とシロは絶賛武器選び中である。
「あれに決めた!シロ、あそこの細い奴!暗黒騎士っぽくてかっこいい!」
「あいよ!」
シロが敵をなぎ倒したところをターゲットに向け走る。
ターゲットの攻撃が当たりそうになってもキョウがずるいという体の柔らかさでしなやかに避ける。
精一杯武器をふるったのかターゲットが反動で動けなくなっているところを素手でぶん殴る。
手の皮が剝けた気がしたけど気にせずにターゲットの手から武器をぶんどった。
元ターゲットに剣を突き刺し、シロのもとに戻ろうと姿を探す。
その時、小さな声を感じ取った。
「あ、アイ・・・」
かすれた小さな声はまるで死を感じるような声で・・・
「シロー!どこー?!」
必死に叫ぶ私のもとで、小さく剣が持ち上がった。
周りの敵を突き刺しながらそこへ向かうと白が倒れていた。
「見つけたーって大丈夫なのー?!」
シロの背中には大きな飼い主がいなくなった獣がかみついていた。
「ぜ、全然大丈夫じゃねぇ・・・」
シロのもとに座り込み、深々と突き刺さった牙を抜こうとするが、抜ける気がしないので諦める。
「ユズちゃんのもとに行けば、癒してもらえるかもー」
返事もしないシロに肩を貸して引きずりながら歩く。
敵を斬り倒して、剣も洋服も返り血で真っ赤だ。
「ユズちゃんシロを助けてあげてー!」
「ひっ」
(ああ考えなしだったー!獣を背中から離さないとー!)
「ささささっさ殺人鬼・・・!」
「えっ?!」
(私の事?!確かに相手のことを剣で刺したりしちゃったけど・・・)
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょー!シロが死んじゃう!」
「グハっ」
いきなりシロが吐血する。
そちらを見ると、後ろから敵が近づいていて、獣ごとシロの心臓を貫通していた。
「シロー!」
「ア、イも、う無、理だ・・・」
涙を瞳からボロボロと流したシロはそのまま首を前に倒す。
前髪でその顔は隠れたが、徐々に抜けていく体温によってこと切れたことが分かった。
「白のバカー!もうちょっとがんばってよ!」
私も涙をボロボロとこぼしてシロを地面に置く。
(私が・・・死なせた。)
ぎりっと歯を食いしばると私はユズちゃんを見る。
「ごっごめんなさい!まだ、魔法が使えなくて、」
「・・・大丈夫。私別の場所行くけどがんばってねー」
私は歯を食いしばり、キョウと別れた場所に駆け出した。
★☆★☆
「おー!やっぱり!」
私は思わず声を上げた。
そこには飼い主が亡くなったモンスターが暴れていた。
「・・・モンスターパラダイス!」
顔を上気させた私はこの職業について大きな勘違いに気づいていなかった。
そう『一度テイムされた魔物はテイムできない』という規則に。
まあこの勘違いに気づくのはまた随分後の話だ。
私は戦闘に慣れていないのにその場に飛び込んだ。
(あっ考えなしだった・・・)
そんなこと今更思っても後の祭りだ。
元の飼い主が使っていたであろう私の筋力でも持てる剣を探し、持つ。
目指すはあそこにいる大蛇だ!
私は突きを目の前のクマ型モンスターにぶっさし、抜く。
クマは苦手だから遠慮なく行けた。
肉を突き刺す感覚が気持ちいゴホンゴホン、気持ち悪かった。
剣を抜かずに別のところに走り、新たな剣を持つ。
それを繰り返しながら、大蛇に近づいた。
その大蛇は赤い瞳に白い巨躯。
なんとなく、苦しんでいるように感じた。
そんなところに勢いをつけて、大蛇が私に噛みつこうとする!という見せかけのしっぽの薙ぎ払いだ。
(不意打ち!避けられないよ!)
「キョウ!避けて!」
「無理言わないでってあづうゥ」
肌からジューっとおいしそうな音がしてひりッとした痛みも来る。
(おおおっ!魔法!)
私にはかすっただけのようで、大蛇のしっぽに火の玉が当たる。
「キョウ!テイムしたいのなら今だよ!」
私はマル君が言うように素早く大蛇に飛び乗る。
何度か感じたことがある魔力が抜ける感覚。
それを自主的に行う。
意外と難しい作業だ。
そして、大蛇の動きが止まった時に名前を・・・
集ってる!
魔物が下にいる。
「キョウ!もたもたしてると・・・」
「わああああああっ『卵蛇』ああああああ!マル君のところまでぐしゅっ」
「キョウ?!」
何が起きたのか簡単に一言で表すと
大蛇が卵サイズの『卵蛇』になった。
名前を付けた瞬間肩のりサイズまで縮んだ卵蛇に乗っていた私は勿論落ちる。
ああ、運が悪い。
私を受け止めようとスライムが大きく広がる。
(やばいやばいやばいやばい!)
恐怖ですくんだ体ではもう動くこともできなかった。
マル君の声が聞こえたのと同時に私の意識は途絶えた。
ストックがある限りは毎週金曜日に更新予定なので、見てくれると嬉しいです。
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