8.ジョブチェンと開戦前
私はとりあえずみんなにさっそくジョブチェンをしてもらうことにした。
私は後回しだ。
魔導書には職業の呪文があるらしい。
魔導書のページが増えている気がするのは気のせいだろうか。
みんなが魔導書の呪文を唱えている中、私は困っていた。
おばあさんにこう言われたのだ。
『おぬしにだけ天啓が下らなかった。おぬし前の世界で神を冒涜するようなことでもしたのか?まあよい。おぬしは好きなものを選ぶがよい。』
「むずいな・・・」
「キョウ?どうかした?」
「ジョブつけないのー?」
マル君とアイだ。
二人とも真っ先にジョブチェンを終えている。
アイは実験台兼だ。
アイは軽そうな漆黒のメイルを身に着け、シンプルな赤いミニスカートを履いていた。
マる君はボタン付きのローブを羽織り、その下に元から着ていたシャツとズボンをはいていた。
見回すとみんなジョブチェンが終わったようで洋服の変わりようを見て驚いたり嬉しそうに褒めあったりしている。
「ねぇもしさ、これを自分で選ぶとしたら何にする?」
「あはは冗談はやめよー!天啓に従ってやったら確実だと思うよー!なんか神様を慕うような気持ちがすごく湧き上がってるー!それに、アサヒにめっちゃ切りかかりたい気分ー。」
「やっちゃだめだよ?!」
「わかってるよー。」
頭に天啓?が落ちてきた。
もしかしたら、だけど、ファンタジーならあり得るはず!
「えいっ」
私が選んだ職業は
「テイマー・・・かな?」
誰かが呟いた。
元の世界の薄い水色のシャツにネクタイがついて下は黒いミニスカート、上にケープを付けている。
黒いロングソックスに黒いブーツ。
動きやすい服装だ。
そして最大の特徴は腰についているベルトに下がる小瓶。
色は透明で、丸の中にはわかりにくい『無』と書いてある。
小瓶の反対にはポーチがついていて、中身は空だ。
装備の確認が終わると、皆のことを見る余裕も出てくる。
(イメージ的に、アイは黒が多くて謎の紋章がついてるから暗黒騎士で、マル君はローブ?を着ているから魔法使いで、ジンさんが普通の鎧だから軽戦士?アサヒさんは白多めで聖騎士・・・うん、そうだったらアイが切りかかりたくなったのも納得がいく。ユズさんが白ローブだからヒーラーでナシさんが、水色が多めのマル君と同じローブで、シロはなんか智慧がある蛮族みたいな、我ながらひどい感想だなぁ。そして、私がテイマー。)
そして、一番変わったように感じるのがなんというか?皆の雰囲気だ。
(あったかくなった・・・違うなぁ、ナシさんの視線は冷たいし。)
なにか、感じるというか、アイに聞いてみよう。
「アイ、なんか見えない?みんなの全身を駆け巡るような、感じるみたいな」
「・・・キョウ、少し休んだ方がいいと思うよー」
「とうとうそういうものが見えるようになっちゃったんだね、可哀そうに」
「アイに言われるのは慣れてるけど、マル君は怒られたいのかな?」
ボロボロの悪し様に言われているのを笑顔で怒るとアイはえへっと笑う。
似合わないからやめろ。
そんな他愛もない雑談をしているとジンさんが話しかけてきた。
「その魔導書の力、すげーな。スライムを倒した時や鬼を倒したのもその魔導書でやったんだろ?」
「だけど、そのことを言ってくれなかったのは、ダメだったね。何で言ってくれなかったの。」
仁さんは感心して、後からやってきたナシさんはムスッとしていた。
私はツツツと目をそらす。
そしてヘルプを求めるようにマル君とアイに視線を送る。
アイも順応するように目をそらすが、そのとき何かに気づいたように叫んだ。
「あれ、村の人じゃないー?」
「?おっ、ほんとだな。」
「やっと普通っぽい人ね。」
ナシさんの視線が外れた瞬間に愛の近くまで移動する。
そして周囲を見回してみる。
「あちゃー、もしかして囲まれてるー?」
「どっからどう見てもそうでしょっ」
能天気に観測するアイに警戒姿勢のナシさんが叫ぶ。
周りから追い詰められているように武器を持った人が近づいてくる。
じりじりと後ろに下がりみんなと背中を合わせる。
「お前ら何者じゃ!」
おじいさんが叫んだ。
一人だけ年齢層が明らかに違うから多分代表的な人だろう。
「外部からの襲撃者か?!そうだと答えるのなら排除させてもらう!」
それぞれの獲物を村の人たちが構える。
その瞬間村の高台の鐘がけたたましく鳴り響いた。
『侵入者!襲撃者!隣村の傭兵が襲撃に来ました!戦える者は前線で戦い、他の人はシェルターで身を守ってください!』
そういうアナウンスが流れ、村の人たちは獲物を構えたまま入口の方に飛び出していった。
「助けるぞ!」
「見捨てましょう。」
ジンさんとナシさんの声が重なった。
「・・・道徳を忘れたのかよナシ。」
「みんなの安全のほうが大事でしょ・・・はあ、多数決で決めましょう。」
結局戦うことになった。
ジンさんに5票、ナシさんに3票。
「こんな丸腰で・・・どうなっても知らないわよ。」
私たちは素手のまま傭兵がいる場所へと散った。
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