4.メイドと執事
「…………え、執事?」
「すごいにゃ!メイド服ってほんとに存在したんだにゃ!」
コスプレ特有の服の質ではなく、ちゃんとした服だ。
これは私がメイド服でマル君が執事かな?
「メイド服二枚目ありましたぁ!」
「二枚目……よかった私がメイド服だよね……」
「えぇ?逆じゃないんですかぁ?」
………………?
硬直した私を他所にジンが渡されたメイド服を置くと素晴らしい速度で去っていった。
「俺は逃げるぜぇぇぇぇぇ」
「よし、キョウは俺と服交換にゃ」
「ジンの卑怯者ー!」
まあジンの骨格でメイド服着たらちょっと似合わないか。
マル君の方が華奢だからね。
女の子は不満げに頬を膨らませたが、私を別の部屋に連れていった。
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やばい、着替えたけど気づいてしまった。
もしかして、私って可愛いのでは?!
家には鏡がないからあんまりわからないけど、銀髪碧眼だよ!
結構前からそうだったけど!
今までの人生は茶髪で茶眼だったから、自分が変わったっていう自覚がそんなになかった。
眼帯が厨二心を引き立てる。
黒いワンピースは動きやすさが重視してあり、袖はふんわりとした三分丈だ。
上からかかっている白いエプロンはフリルがたくさんでかわいい。
クルリと回ってみると、裾がひらりと広がる。
髪の毛は純人間期間と同じのポニーテールだ。
そういえば切るの忘れてた。
「キョウさん、カチューシャ忘れてますよぉ」
「あ、ありがとう!」
カチューシャをつけながらマル君がいる部屋に向かう。
「マル君!入るよー」
「どうぞにゃー」
ドアを開けると、執事服に着替えたマル君がいた。
後ろ丈が長い黒のコートの下には灰色のベストに白のブラウス。
碧の蝶ネクタイをしている。
髪の毛は珍しく前髪が下りている。
だけど、髪の毛は全体的に濡れていた。
「オールバックできなかったにゃ……」
「やり方を説明するのでぇ」
女の子は私の手に謎のクリームを持たせると、マル君の横に行った。
「私は助手やるの?」
「いえ、キョウさんがやるんですよぉ」
………………?(本日二回目)
え?
「じゃあまずは……」
喋り出した女の子の声に従い、とりあえずドレッサーに置いてあるドライヤーみたいな機械を手に取る。
「これはですねぇ、魔力を入れると暖かかったり冷たかったりする風が出る魔道具なんですよぉ」
やっぱりドライヤーだわー。
魔力を少し注いでボタンを押してみる。
冷たい風が出てきた。
ゆっくりマル君の髪の毛を後ろに流しながら風を当てる。
お湯で濡らしたのか、髪の毛が暖かい。
ちょっと硬い感じの髪を撫でる。
マル君が大きく欠伸をした。
「…………まあ、いいですよぉ」
結構な時間乾かしてた気がする。
だけど髪の毛が半乾きだからそんなに時間は経ってないんだろうなー。
マル君は、すっかり寝息を立てている。
この呑気なやつめ!
次にさっき渡されたクリームをマル君の髪の毛につけて、完成!
多分あっちの世界だともっと手順が必要なんだろうけど、こっちにはまだ道具があまりないらしい。
「おー、結構様になってる。」
「いいですねぇ、私がサポートできるのはここまでですからぁ、玄関までお送りいたしますねぇ」
マル君のことも起こして準備完了!
黒光りする靴を鳴らしながら廊下を歩く。
一つ一つの店がこんなにデカいのかー、掃除が大変そう。
「着きましたよぉ、それではご武運をお祈りしますぅ」
店の入り口まで案内してくれると、カーテシーを披露してから店の中へ帰っていった。
「よし、私たちも行こうか。ジンをボコしに!」
「物騒にゃ!」
ドアを開けようとドアノブを掴むと同時に、マル君が私の手首を掴んだ。
「?どうかしたの?」
「…………キョウ、すごく似合ってるにゃ!」
「ありがと!マル君も似合ってるよ!」
「正直なところ、俺以外の誰にも見せたくないにゃ」
「そんな愛が重い系の彼氏みたいな」
「……もし、本当にそうなりたいって言ったらどうするにゃ?」
「あのねマル君。私のこと蛮族とか戦闘民族とか言う人はそういうこと思わないから。大丈夫!」
思いっきり皮肉を言った。
いつも揶揄ってくるんだからこいつもそれ相応の罰を受けるべき!
マル君のことは気にせず次こそドアノブを捻った。
「お!キョウ、マルト!」
「どうも逃げ上手のジン君にゃ!」
「こちらこそどうも日頃の行いマルト君!」
おこりだしたマル君を宥めるジンを横目で見ながらアイとロイライを探す。
「アイとライロイは?」
「一回戻るって言ってたぜ」
「なるほど?」
「『グリモア借りて行くねー、五日後ぐらいにイヴをこっちに寄越してほしいなー』だとよ」
「裏声が思ったより似てて草」
理解理解。
まあ工具普通に重いからね。
じゃあアイがいない間にこの街を制圧すればいいってことか!
「おーけーおーけー理解した。」
「何がにゃ?」
「いや、|マル君のオールバックが崩れる前に《今日中に》カチコミに行こうと思って」
「なるほどにゃ!」
「俺は屋敷外の街を制圧するぜ!」
「おっけ!じゃあ私たちはとりあえず潜入するか!」
ということで、散!




