1.職人と奪還
コンコンコン
「あ、私出てくるよ」
「よろしくにゃー」
「怠けマルトも行ってきなよー」
「んにゃ、」
西の住処から帰って数日。
それぞれが休暇を取る中、家の扉がノックされた。
私が伸びをしながら立ち上がると、隣にいたアイがマル君の頭をはたいて私に着いて来させた。
いやいや重い腰をあげようとするマル君の襟首を引っ張り上げて、玄関に向かう。
十中八九職人さんだ。
西の住処から態々歩いてきてくれた。
ガチャ
「来てくれてあり……?!どうしたんですか!?」
「ボロボロにゃ!とりあえず中に入るにゃ!」
体に大量に着いた切り傷と痣。
身包み剥がれた。
その言葉がピッタリ合うほどに何も持っていない。
息も絶え絶えの様子の職人さんを家の中に入れた。
「どうかしたのー?」
「?!何があったんだ?!」
部屋から出てきたアイとジンをもう一回部屋に押し込み、全員が床に座った。
「ジン、治療できるものなかったっけ」
「ないな、この世界では回復魔法が主流だからな」
「エリにないか聞いてこようかー?」
「お願いにゃ!」
バタバタと出ていくアイを見送った。
「癒しの軌跡しとく?」
「最終手段にゃ」
「キョウ、しばらく魔力の使用を控えてくれないか?」
「なんで?」
「一回魔力不足で倒れただろ?心配なんだよ。」
「んぐっ、そう言われると反論できないけど……」
というか心配……なんか少し嬉しいかも。
職人さんは全部で三人。
一番怪我が酷いのは老年の紳士。
怯えるように震えて抱き合う推定15歳の男女。
全員顔が似てる…………気がする。
家族なのかな、
「えっと、大丈夫にゃ?」
「だ、大丈夫じゃないッス。」
男の子の方が答える。
声変わりはまだしておらず、フォレストグリーンのショートヘアに向日葵色の瞳をしている。
「あ、お風呂にする?手当にする?それとも、私?」
裏声で言ったジンにガチめにドン引く。
声がアレだから……気色悪いというかね。
「あ、僕らはそんな怪我してないから事情聴取からで大丈夫。」
「お、僕っ娘?」
「あ、ちが」
「そうなんッス!俺の妹なんスけど、超カワイイッス!」
「へぇー!」
「「「…………」」」
オロオロっとしているのはフォレストグリーンの髪を一つに束ねた向日葵色の瞳の女の子だ。
年齢は私たちよりも上なはずだけど、身体が成長してから自分より小さい子は妹や弟に感じる。
というか、元気そうでよかった、手当が必要なのはおじいちゃんだけだね。
「名前も教えて欲しいにゃ」
「ライラッス!」
「ロイロだよ。」
「で、この人はロイラ爺ッス」
「ライラさん、ロイロく……さん。ロイラ爺さんだな。」
「双子ッスよー。爺は生粋のエルフなんスけど親父はドワーフでお袋がエルフッス。」
「多分、みなさん会ったことあるよ。ほら、エリお嬢の乳母の…………」
「え、あの人の?!」
「そうなんスよー」
衝撃の事実!
あの人の子供にしてはしっかりしてる(失礼)。
「ちなみに何があったんだ?」
「荷物を盗られたよ」
「oh〜」
「にゃお!ちなみに誰かわかるにゃ?」
「んー、スラムの人ってことしかわからないッス」
「工具箱の中身は武器になるからだよ」
「物騒な話だにゃ」
「取り返さないと一回西の住処まで工具を取りに行かないとッス!」
「めんどくさいな」
「あの、もしよろしければ取り返してきてくれないッス?」
「んー、あー。まあ、あの街は更生が必要だとは思うけどね。」
「だけどちょっとにゃー、」
「お、おねがいだよ!」
「たっだいまー!」
「あ、お邪魔しまーす」
エリとアイが帰って来た。
エリは救急箱もどきを持っている。
そういえば、エリは占い婆さんとつつがない生活を遅れているらしい。
だけどまだ核心には踏み込めてないと言っていた。
おじいちゃんの隣に正座したエリが素早く治療を始める。
その間にアイに事情と提案を話した。
「おー、まあいいんじゃねー?」
「ちなみに理由を聞いてもいいにゃ?」
「ナシが今南東の街を取ってるでしょー?私たちも街単位で取っといたらいいんじゃないかなーって」
「アイ、そこまで考えられるなんて。成長したな。」
「ジンはアイのお父さんなの?」
まあアイがいいならいいんじゃないかな。
ジンもマル君も思ったより乗り気だし。
「……まあ、アイがいいならいいと思う。」
「キョウはなんでそこまで乗り気じゃないんだ?」
「スラムで戦いになったらつまり、対人戦でしょ?最初は力のコントロールが上手くいかなくて一人…………死んじゃったけど。」
四人で顔を曇らせる。
最初のテイマー村。
あれは本当にヤバかった。
魔物にも知恵はあるけど、やっぱり人間とは違う。
人間を殺すのは倫理観を捨てたってこととほぼおんなじなんじゃないかな。
もう罪を犯すのはいやだ。辛い。
私はまだ殺ってないけど、アイもジンもマル君も。そう思って欲しい。
「人殺しって、嫌じゃん?帰ってだれも知らなくてもさ。折角楽しい思い出になる予定なのに。」
「…………そう、だな。」
「やだー、じゃあ殺さないようにーやればいいよねー?」
「うん、難しいかもしれないけど!」
「大丈夫にゃ!成し遂げてみせるにゃ!」
「うんっ、じゃあ明日出発しよう!」
「ライロイも着いて来てくれよな!」
勢いよく全員が頷き、その日は休むことにした。
順番締め切りました!
しばらく間章です、




