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32.名前と白ローブ

 その表情は今まで見たどの翠竜よりも柔らかくて、慈愛に満ちていた。

 細められた翠の目は少し赤くなっているけど、もう涙が出そうな感じはしない。


「元気が出ました。本当に貴女には感謝してもしきれませんね。」

「落ち着いたならよかったよ。」

「もう少し、ここにいませんか?」

「うん」


 他愛もない話をしながら星を眺める。

 星は見えるのに日は入り切っておらず、まだ海の方は少し明るい。

 西陽が眩しい。


「キョウ、ぼくにも名前をつけてくれませんか?」

「いいの?テイムされたわけでもないのに」

「気づいていなかったんですね。ぼくはもう貴女にテイムされていますよ」

「まじか、全然気づいてなかった……」


 今まではイヴもヌーンも空の色で決めてきたんだけどね……

 今回はどうしよっかなー。


「キョウ、見てください。陽が完全に落ちますよ。」


 突然、海の方を指差す翠竜。

 その瞬間、水平線が輝いた。

 美しい緑。すぐ消えてしまった。

 翠竜の瞳と全く同じの色。


「グリーンフラッシュ、ぼくも初めて見ました。」

「うん、すごく……綺麗だったよ。ふふ、翠竜の瞳の色と全くおんなじだった、」

「貴女と二人で見れてよかったです。」

「すごく安直なんだけど、翠竜の名前『フラッシュ』でどう?」

「!!ふふ、本当に、安直ですね。そういうところが本当に――――」


 翠り、フラッシュが何かを言った瞬間、どおぉぉんという音がした。

 音がした方――村の方だ――を見ると、空に花が咲いていた。


「!!花火だ!こっち(異世界)にもあるんだ!」

「本当にあるんですね、言おうとしたことが花火にかき消されること。」

「ん、なんて言ってたの?」

「もう一回聞くのは野暮ですよ。」

「もー、フラッシュ教えて!」


 くすくすと笑うばかりで教えてくれないフラッシュにむぅっと頬を膨らませる。

 だけど頭に唐突に疑問が浮かんで問いかけた。

 

「そういえば、エリの基地の周りに張ってあった魔法が使えなくなる結界ってどうやって壊したの?」

「確かに魔法使えてましたね、ですがぼくは干渉してないですよ?」

「え、じゃあどうして……」

「それはねぇ?」


 幼い声が私達にかかる。

 誰も来ないと思っていたから警戒心マックスで振り向く。

 そこにいたのはさっき私とアイを呼びにきた少年。

 さっきまでは黒曜石のようだったクリクリとした瞳は少し紫がかってフォレストグリーンの髪も色素が薄くなってきている。


「私が壊したんだよぉ」

「何者?!」


 パッと首を横に振ると髪の色は白練色に変わり、腰まで伸びる。

 瞳は竜胆色になった。


「げっ」

「黙れ」


 顔を顰めて言葉を発しようとしたフラッシュをギンと開いた目で見つめる少年だった人。

 多分今は少女だ。

 威圧感がすごい。同じ空間にいるだけで胃がビリビリする。

 そして、美しいのだ。

 背景に花火と大きな月が重なり、上手く逆光になっている。

 表情を一変させて油断がない笑みを浮かべた少女。


「私はあなたたちが言う白ローブだよぉ。」

「白ローブ?!」

「翠竜……あぁ、フラッシュになったんだっけ?フラッシュも滑稽だよねぇ、私はずっと同じ洞窟にいたのにねぇ。なんでジンが誘拐されたかわかるぅ?」

「…………」

「私が連れてきたんだよぉ。そして転移したときにハッキングしてぶっ壊した。」


 しれっとした顔で言う白ローブを名乗る少女に絶句する。


「ハッキング?」

「うん、ハッキング。」

「…………ハッキングってなんですか?」

「知らないよね……じゃあ白ローブは、転移者?」

「どうだろうねぇ、じゃ殺すね。」

「「?!」」


 手のひらに魔力を集め始めた白ローブ。

 意味があるかはわからないけど剣を抜いて構える。

 そして飛んできた魔力の塊。

 それを切り裂こうと腕を振るう。

 視界が真っ白になった。


――――みんな今までありがとう、いい人生だった……


 遺言を遺していると、視界が晴れていく。


「え、嘘生きてる?!」

「死んだと思いました、反撃しましょう!」

「…………ふぅん、そういうことねぇ。」


 によぉと不気味な笑みを浮かべた白ローブは身を翻す。


「すっごく面白いことになりそぉだねぇ」


 その言葉を最後にその場から転移した。


「…………嵐みたいなやつだったね」

「そうですね、花火もう少し眺めます?」

「うん。フラッシュ、帰りも乗せていってくれる?」

「もちろんですよ」


 無言で花火を眺める。

 その無言ですら気まずくない。


「あ、そういえばその服似合ってるね。」

「先言われちゃいました。キョウも似合ってますよ。」

「ありがと!だけど、スカーフはなくてよくない?」


 ずっと違和感だったのだ。

 洋服は全部緑系統なのに一つ異色を放つ赤。

 首についているスカーフをするっととる。


「あ、取っちゃいましたね」

「フラッシュの首内出血してる!どうした……あ、」


 蘇るのは敵対している時に脱出手段として使った首への噛みつきだ。

 眉がへの字になる。


「ほ、ほんとごめん。痛いよね。」

「それは全然いいんですけど……あ、これ意味知らないやつですね。」


 少し顔を赤くした後に残念な人を見る目になったフラッシュ。

 意味がわからない。なぜそんな顔をされなければいけないのだ!


「まあいいですよ。帰りましょうか。」

「うん!」


 行きと同じポーズでフラッシュは大人の姿になった。

 そして飛び立つ。


「キョウ、愛してますよ。」

「私も大好きだよ、フラッシュ!」


 少し悲しげな顔をしたフラッシュは一気にスピードを上げた。

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