31.心情と抜け出し
「キョウってエリのことどう思うー?」
唐突だなぁ、
「優しいし、綺麗だし。すごくいい人だと思うけど」
「…………胸の奥がーチクチクしたりしないー?」
「んー、別に…………」
私がそういうと、アイは小声でうわっかわいそっていったけど意味は理解できなかった。
「多分……エリはマル君のこと好きだよね……」
「まあ十中八九そうだろうねー」
「え?!アイ十中八九なんて言葉知ってたの?!」
「バカにしすぎでしょー」
しょーもない、と呟いたアイはもう一度口を開く。
「キョウはー?」
「何が?」
「応援するー?しないー?」
「…………静観、かな?別にどっちでもいいし」
「そっかー、まあいいと思うよー。人それぞれだからねー」
その会話はまた別の話へ移り変わる。
そのまま、雑談を続けていると声がかけられた。
「救世主様!」
キラキラと目を輝かせる少女だ。
腰を屈めて少年と目を合わせる。
「どうかしたの?」
「翠竜さまと白狼さまが呼んでるって!」
「おー、ジンのところかー。」
「教えてくれてありがと。じゃあ行ってみよっか!」
「少年も行くー?」
「……うん!」
少し迷った後に頷いた少年の手をアイがひく。
村の奥の方にあるステージの方へ向かう。
ただでさえ部屋が作れるほどに太い幹を持つ大木がそこら辺に立ってるのに、ステージとなっているものはもっとすごい。
そこらへんの木の二倍はある幹を切り倒した切り株で作られている。
ライトアップされていて豪華だ。
ステージ上には豪華な椅子に座った翠竜とその側で眠るリフェルがいた。
周りに添えられたフルーツや料理がいい匂いだ。
頬杖をついて遠くを見つめていた翠竜に手を振る。
私たちがいることに気づくとこちらへ駆けてきた。
「来たんですね。」
「うん、ジンたちは?」
「別行動になりました。」
「なんか用でもあるのー?」
「はい、アイさんも来ますか?」
「あー……ジンでも探そうかなー」
「え、そっか……楽しんできてね」
「少年も一緒に来るー?」
「んーん!お母さんのところ行く!」
「うーい」
パタパタと手を振ると振りかえされた。
アイと少年が去るのをみとどけると、翠竜の方に向き直った。
「で、翠竜は?」
「簡単な話です。暇なので抜け出しませんか?」
「仮にも村の守護者がそれでいいの?まあ面白そうだから行くけど!」
ニッと笑った翠竜は私の膝の下に腕を入れると軽々持ち上げた。
所謂お姫様抱っこ。
「え、え?!」
「暴れないでください、落ちますよ?」
「重いから!というか声……」
論破というか丸め込まれて悔しげに上を向くと、やっぱり少し大人っぽい翠竜がいた。
しっかりみたらわかる。
百七十五どころじゃない。
しかも……なんでこうイケメンばかりなのか。
顔面偏差値の平均値がおかしい。
「デカ……」
「ジンさんと同じくらいです。行きましょうか。」
地面をゆっくり蹴ると、翠色の光が少し舞った。
背中に小さく生えていた羽が発達し、大きくはためく。
「う、浮いてる……」
「ドラゴンが飛べるんだから人型になっても飛べますよ。」
「確かに。」
納得していると高すぎない場所に飛んだ翠竜が猛スピードで移動を始める。
「どこ向かってるの?」
「よく舌噛みませんね。行ってみたらわかります」
腰からマントがひらひらとする。
鏡がないからわからないけど思ったより似合ってる気がする。
みんな目逸らすからわかんないんだけどね。
翠竜はさっきとほぼ同じ……あ、スカーフ着けてる。
「スカーフつけてる。」
「最初からです。」
「あれ、そうだっけ」
「はい。」
まじかー。気づかんかった。
そんな他愛もない話をしていると、翠竜が地面に足をつけた。
「到着です。」
「えっと?あ、ここは」
魔力の糸で無理やり登った山だ。
その後に勢い余って落ちたところ。
今も少し下がると落ちそう。
「ここは夜になると月が綺麗なんです。」
「ほんとだ、すごい…………」
満点の星空。
標高が高いから空気も澄んでいるし、木も生えていない。
大人翠竜は私を下ろしてからこども翠竜に変身する。
隣に翠竜が座る。私も続いた。
「…………キョウさん、」
「呼び捨てでいいよ?」
「キョウ、貴女には本当に助けられました。」
「んーん、それを超えるくらいにこっちも助けられてるよ。現にマル君が生きてるのは翠竜のおかげだし。」
「ぼくは……何か勘違いをしていたんです。」
俯く翠竜が語り出す。
「母さんのこともそうなのですが、フェンリルのことも……ずっと、ずっと人間の施設にいたのに。人間にバレないように匿ってもらってたのに、気づかないであろうことか忘れていた。」
「…………」
「母さんは、ここにあった人間の基地を滅ぼしたんです。あの板にはいってるでーたをみました。実はその理由は僕が人間の基地に住み着いてしまっていたからだったのです。母さんは僕が人間に捕まったと勘違いして、基地を滅ぼそうとしたときに相打ちでなくなりました。」
「!!」
「考えれば気づけたことだったのに、僕の勝手な思い込みがたくさんの人を傷つけてしまった……!母さんも、人間も、キョウたちのことも!」
「それは!!」
「それはじゃないもん!傷つけたのに、なんで……守護者なんて無理ですよ、また思い込みで……」
ぽろぽろと涙を落とす翠竜の背中を少し躊躇った後に撫でた。
「…………確かに、翠竜のお母さんも、人も私たちも傷ついたかもしれない。だけど…………」
子ども特有の柔らかい頬を両手でむにゅっと挟む。
「少なくとも、グラスビレッジの人たちは翠竜に守られた。私たちが来る前も、この前の火事だって。私たちだって助けられてるよ。」
潤んだ目をこちらに向けた翠竜は驚いた後、ふわっと笑った。
「貴女は、本当に暖かいですね。」




