表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/85

27.おはようと死にかけ

――ピィ、ピチチ


 そんな声に誘われて瞼をそっと開く。

 ベッドに寝かされているようだ。

 子供の頃に一度泊まったことがあるコテージに似た天井が見える。

 見える範囲が狭い。

 そういえば片目ないんだった。

 大きく伸びながら身を起こすと肩に痛みが走った。

 肩に穴が空いた状態だったからしゃーない。

 多分戦闘中はアドレナリンが出てたんだろう、全然痛くなかった。

 なくなった目には布が巻かれているっぽいが、触る感じがガーゼに似てる。

 光が差し込んでいる窓の外には木々が広がっている。

 木の落ち着く香りが漂っているのが感じられて生きていることを実感する。

 洋服は着替えさせられている。

 エリさんが着ていたみたいなローブだ。

 揃えて置かれていた靴を履いて、ベッドから降りる。

 前よりも高くなった視界に少しふらつきながら長くなった髪の毛を手櫛で整える。

 木でできたドアを開けようとノブを手にした瞬間、手がひっぱられる。


「え、」

「あ、」


 誰かがドアを開けたのだ。

 ノックもなしに女子が寝てる部屋に入ろうとする不届きものめ!

 転ばないように不届きものの胸に手をつく。

 不届きものも後ろに倒れないように私の背中に手を回す。


「き、キョウ?!」

「マル君……あのねぇ、」


 不届きものはマル君だった。

 慌てて離れようとするマル君の襟首を空いてる片手で掴む。

 

「女子の部屋に入る時はノックして!着替え中だったらもう一回三途の川に逝かせるところだった!」

「ごごごごごめんにゃ!だからその、手を……」


 騒いでいる私たちの声を聞いてかアイが顔を出す。

 アイは髪を切ったのか長かった髪が成長前と同じくらいになってる。


「あ、アイ!アイも言ってやってよ、」

「違うにゃ!誤解にゃ!」

「……寝起きからイチャイチャするのやめてー?」

「え、イチャイチャ?」


 イチャイチャとは男女が仲睦まじく寄り添ったり、肌を触れ合わせたりして愛情を確かめ合う様子を表す言葉であり……

 自分を客観的に見てみる。

 今の状況は世間で、その、ハグと呼ばれる行為であり、他の人からみるとイチャイチャであるのでは……?

 そこまで考えた後、音速でマル君から離れた。


「もー、しょーもないなー。キョウ、おはよー」

「おはよ!」

「おはようにゃ。もう昼だけど、」

「あ、昼なんだ。意外と早く起きれた?」

「…………ジンたちもいるから一回外でよー」


 アイに付いて廊下を歩き、玄関の扉から外に出る。

 窓から見た景色とは全然違う。

 一回来たことがある場所のはずなのに初めての場所に見える。

 大木で形成されたツリーハウスのような家で村の大半ができている。

 木にはヒカリゴケや色がついたキノコが生えており、低木の植え込みも多い。

 近くには大きめの泉があって、蓮の花が浮いている。

 私たちが出てきた建物は宿屋だったようだ。

 釣り看板に『inn』って書いてある。


「すご……」

「私たちが最初に見たのは幻影なんだってー。」

「エリが幻影を解いてくれたにゃ。」


 幻影かー、すっかり騙された。


「光の派生魔法?」

「闇にゃ。アイがちょっと覚えてたにゃ。」

「また今度見せるねー。キョウー、ジンに声かけてー」

「うん、ジン!」


 視界に入っていたジンに大きな声で呼びかけてから手を振る。

 愛用の斧を振るって木を割っていたジンが顔を上げる。

 私の姿を認めると持っていた斧をゴトンと落としてバッと走ってくる。

 そのままタックル。

 ギュッと抱きしめられる。

 グズグズと鼻を鳴らすジンに、私は少し引きながらも抱きよせて頭を撫でる。


「え、どうしたの?」

「……、キョウま、で死ぬと、思ったぜ」

「そんな、マル君よりはひどくないじゃん。」

「だって、」


 顔を上げて上目遣いになったジンに顔を逸らす。

 このイケメンが!直視できないでしょ!


「二日間も死にかけだったじゃん!」

「え?」


 ふ、二日間?

 今日ってマル君が目を覚ました日じゃないの?


「消火が終わったのは二日前だよー。そんな何時間かで村が復活するわけないじゃーん。」

「キョウは心拍がとてつもなく弱くて魔力がほぼ空のまま二日過ごしたのにゃ。」


 自分の中の魔力を感知してみる。

 すっくな。こりゃ死ぬわ。


「心配かけてごめん、」

「もうどこにも行かないでくれよ?」

「頑張る。」

「俺との扱いの差にゃ。」

「マル君も弟みたいに甘えてくれればいいのに。」

「あは、ジンー、弟みたいだってー」


 私から離れたジンが頬を膨らませる。

 何が不満だっていうのだ。

 そんなときにパタパタとかけてくる足音がした。


「キョウ!」

「エリさん!」


 さん付けが外れてる。

 距離が近くなって嬉しい。


「起きたんですね!魔力は回復しきってないですが、生きててよかったです!」

「心配かけてごめん、ありがと!」

「あ、キョウもさん付け外してください!身体年齢は同じくらいのですし、」

「ん、そうだねエリ」


 エリと抱きしめ合う。

 海外の挨拶みたい。

 もしかしたら割れた地球のこの近くは欧米だったのかもしれない。


「んー、キョウも起きたことだしどうするー?」

「翠竜に会いたい!」


 返しきれない恩義が翠竜にはある。

 お礼が言いたい!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ