26.成長と目覚め
体がムクムクと大きくなる。
少し身長が伸びて明らかに変わる。
髪が伸びる。
少しして成長が止まった。
「……すごい、初めてやりましたが……」
「初めてかよ?!」
「すいません、魔力が……」
フラッと傾いた翠竜の肩を支える。
翠竜ちっさ!
元々身長が百五十くらいあったけどそこからさらにのびて私と同じくらいだった翠竜が見下ろせる。
「……キョウデカいー、」
「アイは……うん、まあその、どんまい?」
身長をコンプレックスとするアイは成長しても伸びないようで私よりは小さい。
「まあー、翠竜抜かせたからいっかー」
「むっ、人間に擬態しようとしたら多分ジンさんと同じくらいまでは大きくなれますよ。」
「マジか!結構デカくなったと思ってたんだが……」
「え、ジン?」
「?どうかしたか?」
「そっかー、声変わりねー」
まじびびった。
耳障りがいいバリトンボイス。
イケメンの典型例め、顔も声もいい。
ジンは立ち上がる。
身長測定器がないからわからないけど、目星では百七十五はありそうだ。
ちなみに服はなぜか身長に合わせて大きくなっている。
「たしかにデカい。十八歳のジンは何を食べたんだ……」
「マルトもそんくらいだろ、立たせて確かめたいから回復させようぜ」
「さっきの方法でもう一回やるよ。」
「翠竜はー、休んでてー」
「……そうさせていただきます。」
近場の木に寄りかかって目を閉じた翠竜を見てからマル君に向き直る。
マル君の手を私の手で包み込む。
大人になったマル君の手は綺麗で大きかった。
「じゃあ、次こそ」
「『癒しの軌跡』」
不安定な魔力がゆっくりとまとまり始める。
内包魔力量も操作感も上がっている。
腕を通して魔力をマル君に……
「ッ!」
反発。
思わずマル君の手を離しかける。
そんな手を横から握り込まれた。
新しく乱入した手が私とマル君の手をまとめて包む。
「大丈夫だぜ。キョウならできる。」
パッと二組の手がまた私たちの手を掴まえる。
「力抜いてー、私たちがついてるよー」
「深呼吸してみてください、落ち着いて集中力を高めれば焦りもなくなりますよ」
心強い仲間たち。
一緒に転移したあのときからクラスメイトは特別な存在になっていた。
別れだって体験したし友達に裏切られたりもした。
だけどいいこともあった。
エリさんと出会えたしテイムモンスターもかわいいし。
全ての体験を経て、成長した私は。
最強テイマーとして!仲間を救います!
私の魔力がマル君の魔力に浸透していく。
アイやジンの魔力も少しもらって流し込む。
さあ、蘇って。
待ってるよ、マル君。
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どのくらいの時間そうしていただろうか。
いつのまにか枯れていた魔力に気づかないままただ手を握っていた。
腕が微弱に震える。
焦点が外れてきていた目を無理やりシャキッとさせてマル君を見る。
「ッ、あー、」
瞼がゆっくり持ち上がる。
成長して出てきた喉仏が動く。
声はテノール。ジンよりは高いけどやっぱ違う。
現れたのはおおきなエメラルドグリーンの瞳。
何度か瞬きをしたマル君にギュッと抱きついた。
「よかった、生きててよかった」
「、心配かけてごめんにゃ」
「もー、心配かけないでよー」
「ちょっと三途の川が見えかけたにゃ」
「冗談じゃないぜ、生還おめでと」
「ありがとにゃ」
顔をちょっと赤くしながらも背中をポンポンと叩いてくれたマル君を解放する。
全員立ち上がる。
アイさん?そっぽ向いてても泣いてるのバレバレですよ?鼻がグズグズなってるからね。
「エリさん、ご協力ありがとうございましたにゃ。」
「!い、いえいえ。助けられたよかったです。」
ん、今なにかエリさんの目が……
「!なんとなく恋の予感を感知ー!」
「にゃんだそりゃ、」
温かい笑みに場が包まれる。
村の消火も完了したようで朝露の匂いと冷たい空気が心地いい。
森に囲まれる村に朝日が差し込む。
「ほんとに、よかった。」
徹夜だからか目が霞む。
「……?キョウ?」
マル君が私を覗き込む。
「え、?どうかした?」
遅れてやってきた立ちくらみでマル君の顔がぐにゃっと曲がる。
違う、これ立ちくらみじゃない。
「キョウ、少し休むにゃ。肩貸すにゃ。」
お言葉に甘えてマル君の肩に手を伸ばそうとしたとき、意識の糸が切れた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーsideマルト
なんか、結構長い間寝てた気がするにゃ。
目が覚めると目の前には気になっている人の顔があった。
いっつも元気で第一印象を聞かれたら俺は多分可愛いよりも先に蛮族って言っちゃうと思う。
表情がコロコロ変わるくせに悲しみはそんな表現しない少女が眉をへの字に歪めている。
いつもの笑顔に戻したいなって思う気持ちの反面、彼女は俺を想ってこの表情をしてるのかなって思うと少し嬉しい。
ちょっときもいにゃ。
俺の手を額に当てていたキョウは俺が目を開けたのを認めるとその透き通ったブルートルマリンのような瞳を大きく開く。
眼帯が痛々しいが、さっきみたよりも少し大人びたような気がする美しさがある。
短いその言葉が心に染みる。
ギュッと抱きしめてくれた彼女に心臓が跳ねた。
前々から気になってたけど、ほんとに、ほんとにほんとに、
好きになっちゃったかもしれないにゃ……!
顔が赤くならないように努めた。




