23.救出とピンチ
「……相当の火事だな。」
『ケルベロスの保存で火の進行と村人の動きを止めている』
「私たちはどうすればいい?」
「人々の救出、消火にゃ。」
「私も何か手伝うー?」
「いや、魔力回復を優先して。また力を貸してもらうかもしれないから」
「ということにゃ、翠竜も大人しくしてるにゃ」
翠竜がいる場所にマル君が睨みを効かせる。
翠竜は今にも飛び出したくてウズウズしていたようだが、マル君の言葉を聞くと苦虫を噛み潰したような顔で下を向いた。
今まで守ってきた村が目の前で燃えているのに何もできないのは確かにウズウズするだろう。
だけど、今動いたら彼は壊れる。
OKを出すわけにはいかない。
「翠竜ー、ここは我慢してー」
「……はい、ですが、貴方達がピンチになったらすぐ行きます。」
「それは……私もだねー。これ以上失いたくないからねー」
同じく待機なアイも私たちがピンチになったら出てくるらしい。
「要するに!気をつければいいってこと?」
「ああ、『いのちだいじに』だな!」
「いいねー、『いのちだいじに』ー!」
口角を上げてこちらを見たアイ。
差し出された手にハイタッチした。
繋がった手が発光する。
「頑張れのお呪いー」
次々とタッチしていくアイにありがとうと伝える。
「じゃ、乗り込もうぜ!」
「うん、全員救うよ」
「にゃ、散!」
ケルベロスが遠吠えをあげる。
保存が解除された。
ベルトについてる小瓶の蓋を全部開ける。
現れたテイムモンスターにも消火を頼んだ。
私にはリフェルと卵蛇がついている。
マル君にはエリとヌーン。
ジンにグリモアとイヴだ。
リフェルに跨って炎の中を進み始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
空が黒煙に覆われて光が入ってこない。
轟々と燃える炎の明るさで人を探す。
「あ、一人いた。リフェル乗っけられる?」
『ああ、任せてくれ。』
視界が悪い。元々二つあった目が減ったから当たり前だが重心の取り方がイマイチわからない。
左手で倒れている女の子を持ち上げる。
リフェルの背に乗せて離れると、私は卵蛇に命令を下した。
「卵蛇!『アイス』!」
顔大の氷が一瞬で溶けて水球になる。
火が出ている場所にぶっかけて消火した。
もう一度燃え上がるのを防ぐためにまだ燃えそうな木材などを集めて燃えなさそうな場所におく。
この作業を繰り返して消火する。
「卵蛇ありがとう。リフェル疲れてない?」
『ああ、まだ一人か二人は乗っけられる。』
「おっけー、じゃあ次に進もう」
赤き炎の中をまた歩き始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーsideジン
こりゃあ中々に酷いぜ、山火事ならぬ森火事。
どれくらいの家が全焼するだろうか。
「なるはやで食い止めねぇとな、」
「はい、イヴはブレス使わないでください。」
コクコクと頷いた紅い小さな竜を肩に乗せる。
「あ、人です。」
「お!お手柄だぜグリモア!イヴ乗っけてくれ。」
グリモアが見つけた男の人は気絶していないようで、火を必死に消そうとしている。
俺は声をかけた。
「おい」
「え、え?誰だよ、」
「助けに来ました。消火は任せて逃げてください。」
「だれがお前らの言うこと聞くか!」
「だけどここは危険だぜ……?」
「は?」
「そこの黒いローブのやつがこの村に方がしたんだろ?」
「は?」
「え、」
「きゅ?」
男がした衝撃発言に思わず声をあげる。
「どう言う意味だよ」
「フードを被ったそのローブ野郎が上空から魔法で方がしたんだよ」
「いや、こいつはずっと俺といたから絶対できねぇ」
「…………ローブ……色合いが違いますが『絶望』もローブを着ています……」
「あの白ローブと見間違えてるのか?」
「僕には全くの覚えがないのでそうとしか言いようがありません。」
「……多分人違いだ。早く逃げねぇと全員燃えるぞ」
「……わかった」
渋々と頷いた男をイヴに乗せる。
「グリモア、よろしく」
「はい、『精霊魔法:水派生氷 アイスリング』」
炎がジューっといって消える。
燃えやすいものを中心に集めると、人を探して次のところに進んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーsideマルト
「なかなか順調にゃ。」
「ヌーンさんがブレスで消火してくれてますからね」
「魔力が切れない限りは大丈夫そうにゃ」
「それでも二人分魔力ストックがありますから」
「にゃ」
会話を打ち切る。
新しく気絶している人を見つけたにゃ。
「これで五人目にゃ」
「村民は確か三十人いるので一人あたり十人で終わりそうですが……」
「まあできるとこまでやるにゃ」
「ヌーンさん、まだ乗せられますか?」
首を横に振ったヌーンを見て、とりあえず決断をくだす。
「一回帰るにゃ」
「了解です。無理は禁物ですからね」
アイがいる方に足を向ける。
直線コースを消火しながら新しく助けられる人を連れる。
まだ燃える村を見ながら姿勢を低くして歩いた。
「あ、また人です。」
「にゃ、少年、避難するにゃ」
「…………」
「「?」」
黙る少年に嫌な予感を覚えた。
間違いないにゃ、隠し切れていないこの濃度の魔力は……
「絶望……エリ、離れるにゃ!」
「?!はい!」
うっかりさん付けがはずれたけど緊急事態だからしょうがないにゃ。
姿を隠すのをやめた白ローブは唯一見えている目を弓形に細める。
今回最大のピンチを感じるにゃ。
現れた初撃を避けながら思った。




